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労働力確保、GDP・人口維持を目的とした「移民受け入れ」…狙い通りの効果は得られるか【経済評論家が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年6月29日 9時15分

労働力確保、GDP・人口維持を目的とした「移民受け入れ」…狙い通りの効果は得られるか【経済評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

人類の歴史上、類を見ない速度で少子高齢化が進展する日本。そのようななか、労働力確保・GDP維持・人口維持を目的に、移民の受け入れを検討する向きもありますが、果たして狙い通りの効果は得られるのでしょうか? 経済評論家の塚崎公義氏が解説します。

少子高齢化で「労働力希少」の時代に

日本経済は、少子高齢化によって本格的な「労働力希少」の時代を迎えつつあります。世の中では労働力不足と呼ぶ人が多いですが、「不足」というのは否定的な語感があるので、筆者は「希少」と呼ぶことにしています。後述のように、労働力は不足しているほうが、余っているよりはるかに好ましいからです。

少子高齢化で労働力が希少になる理由の第一は、当然ですが、現役世代の人数が減って高齢者の人数が増えることです。加えて理由の第二は、高齢者の需要が医療や介護といった労働集約的で労働生産性が向上しにくいものに偏っていることです。

少子高齢化が今後も進展することは確実なので、外国人労働者を受け入れなければ、労働力は一層希少となるでしょう。

そもそも「労働力が不足している」ということ自体が不思議だ、という考え方もあります。需要と供給が一致するところに価格が決まるのであれば、その価格では供給不足は生じないはずです。

「適正な時給」で労働者を募集すれば応募はあるはずで、応募がないのは、適正な時給より安い時給で募集して「応募がない」と嘆いているだけだといえます。つまり、労働力不足ではなく「賃上げ不足」なのです。

「ダイヤモンドを1円で買いたい」と宣伝しても、だれも売ってはくれないでしょうが、それを「ダイヤモンドが不足している」と考える人はいないでしょう。労働力も同じことです。

労働力希少は望ましいこと

労働力希少は、企業経営者にとっては困ったことだと思われますが、労働者や日本経済にとっては望ましいので、筆者はこれを肯定的に捉えています。

労働者は、失業しても容易に次の仕事を見つけることができます。正社員の賃金も少しは上がるでしょうが、それ以上にパートやバイトといった非正規労働者の時給が上がるでしょう。彼らは時給を上げないとすぐに引き抜かれてしまうからです。正社員より時給が低い人々の時給が上がることは望ましいでしょう。

ブラック企業もホワイト化を迫られるはずです。労働力が余っている経済では、ブラック企業の労働者は「辞めたら失業者だよ」という脅しに屈してガマンしていますが、労働力希少の経済では社員が次々と辞めて別の仕事に就くでしょうから、ブラック企業は社員をつなぎとめるためにホワイト化せざるをえないのです。

労働力が希少になれば、アルバイトに皿を洗わせていた飲食店が自動食器洗い機を購入するかもしれません。そうなれば、日本の飲食業界が効率的になります。

高い時給が払えない非効率な店から、払える効率的な店にアルバイトが移っていくことも、日本経済にとって好ましいでしょう。アルバイトが減っていく店の経営者はかわいそうですが、だれかがガマンしなければならないのですから、高い時給の払える効率的な店よりも、払えない非効率な店にガマンしてもらうほうがよいはずです。

労働力希少を緩和してしまう「外国人労働者受け入れ」

「労働者が足りないから外国人労働者を受け入れよう」という動きがありますが、それは上記のような労働力希少の好ましい影響を打ち消してしまうでしょう。労働力が希少でなくなれば、失業者の仕事探しは困難になりますし、非正規労働者の時給も上がりにくくなりますし、ブラック企業はホワイト化しないでしょう。「全国の労働者よ、反対せよ!」です(笑)。

コンビニの外国人店員がいなくなったら、日本人の非正規労働者が高い時給で雇ってもらえるようになるでしょう。そのコストは売値に転嫁されるでしょうから、私たちの買い物は値上がりするでしょうが、正社員よりも待遇が恵まれない人たちの時給が上がるのですから、正社員はガマンして払いましょう。

介護士が足りないなら、介護士の待遇を改善しましょう。そのためには介護保険料の値上げが必要でしょうが、それは喜んで払いましょう。「介護保険料の値上げは嫌だ。介護は人の役に立つ仕事でやりがいがあるのだから、安い給料でもが我慢して働け」というのは「やりがい搾取」ですから、正論とは言いがたいでしょう。

工場が労働力不足だったら、外国人を雇うのではなく、工場を外国に移しましょう。外国人にとって、異国の地で働くより、自国の輸出工場で働くほうが快適でしょう。「輸入が増えたら円安になってしまう」という可能性もありますが、円安にはよい面もありますし、そもそも円安の主因は輸入ではなく、日本人が海外の資産を買っていることですから、輸入を減らすために外国人を受け入れるというのは筋が通りません。

GDP維持・人口維持が目的の移民受け入れは理解しがたい

「人口が減少するとGDPが維持できないから、外国人に来てもらおう」という人がいますが、重要なのはGDPではなく1人あたりGDPです。人口が半分になりGDPが半分になれば、1人あたりGDPは維持できるので、いまの生活水準が保てます。

「人口1億人を維持するために外国人を受け入れる」という意見も、筆者には理解困難です。日本人の人口が1,000万人に減るとして、9,000万人の外国人を受け入れると、私たちが望む日本列島の姿になるのでしょうか。

それよりも、狭い国土を少ない人口で広々と使い、ウサギ小屋から解放されるほうが将来の日本人は幸せだろう、と筆者は考える次第です。

今回は、以上です。なお、本稿はわかりやすさを重視しているため、細部が厳密ではない場合があります。ご了承いただければ幸いです。

筆者への取材、講演、原稿等のご相談は「ゴールドオンライン事務局」までお願いします。「THE GOLD ONLINE」トップページの下にある「お問い合わせ」からご連絡ください。

塚崎 公義 経済評論家

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