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アメリカの若者に聞いた「親しい友だちの数」の答えをミシェル・オバマ氏が心配【アメリカの成人へのアンケート結果を齋藤孝が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月25日 8時0分

アメリカの若者に聞いた「親しい友だちの数」の答えをミシェル・オバマ氏が心配【アメリカの成人へのアンケート結果を齋藤孝が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今はSNSの普及により「他人との適当な距離の取り方がわからない」という人が増えているようです。人間関係をうまく構築しようと意識するあまり、ストレスが大きくなることも。本記事では明治大学文学部教授の齋藤孝氏が、心地よい人間関係を構築するコツを解説します。

時代と共に変化している人間の距離感

元アメリカ大統領夫人のミシェル・オバマさんは、黒人で初めてホワイトハウスに入り、その飾り気のない人柄で大人気を博しました。

しかし、ホワイトハウスという特殊な環境の中で、友人と適切な距離を保つのは大変難しい挑戦です。著書、『心に、光を。不確実な時代を生き抜く』(KADOKAWA)の中で、友情について、「わたしは友情を軽く考える人間ではない。真剣に友だちをつくるし、さらに真剣に関係をつづける」と書いています。

友人はミシェルさんにとって命綱であり、友人関係のためにほかの事案を後回しにすることもあるほどなのです。彼女にとって重要なのは、「参加する」こと。

ストレスの多いホワイトハウスの生活の中で、自分の心をリセットするために、日常から自分を切り離すために行う、二泊三日の友人とのキャンプが気分転換となります。

アメリカの若者の「親しい友だちの数」アンケート結果が衝撃

そんな彼女も、「若い人たちと話すと、新しい友人関係をはじめる瞬間への不安やためらいをよく耳にする」と書いているのです。日本よりはるかにコミュニケーションスキルが高いはずのアメリカでさえ、変わり目に差し掛かっていることを示す一文で、私も大変驚きました。

「リスクを冒すのを恐れて、拒まれることを心配している」というのです。同著では、2021年の調査によるとアメリカの成人の3分の1が、親しい友人は3人未満しかいないと答えているといいます。アメリカでも、若い人はリスクを冒したくないと言って友達が増えないのです。

ミシェルさんは人と本当のつながりをつくると、すべてがやわらぐので、一歩を踏み出すことが必要だと、一対一の現実世界での関係を通じ現実の人生に触れることを勧めています。

また、ソーシャルコンボイ=社会的な護衛艦隊という心理学用語にも触れており、友達に囲まれていることによってあらゆることから守られる、社会から防御してもらえる ということも提示しています。

実際、友人というのは、話すだけでも気が楽になる存在です。友人というほどの存在でなくとも、周囲の人との日常のちょっとした交流があるだけでも、心の健康度は高まるのです。

さらに言えば、言葉を交わさずとも、いい感じに黙っている時間があることで心が溶けていくような存在が、よい友人です。

お手本にしたい…大谷翔平選手と栗山英樹監督の距離感

2023年の春、2023 WORLD BASEBALL CLASSICで、侍ジャパンすなわち日本チームは、決勝でアメリカを3対2で下し、優勝を勝ち取りました。

この決勝戦でひと際目立った活躍をした投手・大谷翔平選手と、チームを率いた栗山英樹監督との間には、わかりやすいやりとりはありませんでした。

大谷選手の天邪鬼な性質を見抜いていた栗山監督

九回のマウンドに大谷選手が上がる意思があるか、所属している球団ロサンゼルス・エンゼルスと登板の話ができているかどうか、栗山監督は通訳を介して、状況を確認しています。

大谷選手自身からは、決勝で投げるという言葉はありません。二人の間には、親しい中にも距離がありますが、しかしこのシナリオは一分たらずで決まりました。後に、栗山監督はこう語っています。

「オレは翔平を決勝で行かせようとずっと思っていた。でもアイツは天邪鬼だから、オレが先に『投げろ』と言ったら絶対に投げないんだよね。だから翔平のほうから投げたいと言い出すのを待っていたわけ」

本人が勝ちたくなってスイッチが入ったら自分から行く性格だと、栗山監督は大谷選手の性質を見抜いていました。

「『身体の状態次第』ってことは投げるってことでしょ」

二人のやりとりは簡単ですが、気持ちが高まってきたところでポンと背中を押すという、あっさりとした関係性が窺えます。監督からの要求もずけずけしたものでなく、優勝が決まったあとに写真を一緒に撮った時にも、こう話しかけているだけです。

「翔平、ありがとな」 「これがオレの最後のユニフォームだよ」ちょっと感傷的になるシーンのはずですが、その時も大谷選手は「何、言っちゃってんすか。3年後、やればいいじゃないですか」と軽く応じます。言葉数は少なく、押しつけのない会話ですが、二人が強い信頼関係で結ばれていることが伝わるエピソードです。

現代の若者は無駄な干渉をすると力を発揮できない

唯一無二の天才相手とはいえ、力を持っているが干渉されたくないタイプの人が力を発揮するのに「自分の気持ちの高まりを大事にする」ことを、指導者の側がよく把握している例かと思います。

私も大学生と接していて感じることですが、現代の若者は無駄な干渉をすると力を発揮できないのです。栗山監督は、大谷翔平という大選手と距離をうまく取りながら細やかに信頼を伝え続けて、その結果、チームが一つにまとまったのです。

不調の村上宗隆選手に「最後はおまえで勝つ 」と伝え続けた栗山監督

栗山監督は、サヨナラヒットを打った村上宗隆選手に対しても、上手に距離を取っていました。四番の村上選手でしたが、準決勝のメキシコ戦では不調のために五番になりました。その村上選手に、栗山監督は「最後はおまえで勝つんだ 」という言葉を投げかけます。

その結果、村上選手は不調を脱しサヨナラ二塁打を打ち、チームを勝利に導くのです。バントの線もあった状況で、「お前に任せた。思い切っていってこい」とコーチを通じて伝言、村上選手は打つしかないなと思ったといいます。

多くの言葉は必要ありません。不振やミスは織り込み済みだ、という信頼のメッセージを伝えたのです。このように、現代に求められるリーダー像も、一昔前から変わりました。

相手を伸ばすためだからと、厳しく接するのではなく、選手が気持ちよくプレイできる環境を整え、ソフトな対応を心がけ、距離も詰めすぎないのが良いことがわかります。あたたかな雰囲気を持ち適度な距離感を維持することが、一般的に好まれる接し方なのです。

私自身、あまりにも厳しく接すると、学生が授業を辞めていってしまうと気づいてからは、常に微笑みをたたえるようにしています。微笑みをたたえていると、相手に安心感を与えられるのです。

指導の際に怒ったり怒鳴ったりすることは、少なくとも現代の日本社会では必要なく、適切な距離を取るには穏やかに接するだけでうまくいく、というのが私の実感です。熱すぎたり厳しすぎたりすると若い人は引いてしまうので、適温で接することが大事なのです。

齋藤 孝

明治大学文学部教授

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