競馬で1,300万円当たった34歳夫のもとへ「税務調査」がやってきて…「多額の追徴課税」に妻、激怒【税理士が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月2日 11時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
競馬はネットでも馬券を購入できる、身近なギャンブルのひとつです。趣味として楽しむ人も多いでしょう。しかし、払戻金に対する税金について、正しい知識を持っていなければ後々後悔することも……。本記事では、競馬の税務申告について木戸真智子税理士が解説します。
競馬で儲けた分の税金
少し前に、競馬で大当たりしたお笑い芸人が数千万円の追徴課税をされていたことがニュースになっていました。競馬の払戻金については、過去にも裁判で争われており、その際にも話題になりました。
競馬で得た利益については、原則としては、「一時所得」として扱われます。一時所得の計算には特別控除額として50万円控除できることになっているので、50万円を超えた部分については税金の対象になってきます。この一時所得にはほかに、競馬の払戻金だけに限らず、懸賞金や保険金など多岐にわたります。ふるさと納税で受け取る特産品も実は一時所得になるのです。
そのため、もし、それぞれが50万円以下であったとしても合計すると50万円を超えてくると、税金が課税される対象になってくるということになりますので、確定申告の際には気を付けたいポイントになります。
さて、競馬の払戻金のお話に戻りますが、一時所得ではなく、雑所得に該当するという判断がされたことも過去にあります。
この違いはなにかというと、たまたま当たったというようなケースではなく、競馬予想ソフトなどを利用して、年間を通して、ほぼすべてのレースで馬券を購入しつづけるなど継続性がある取引をしているかどうかが判断の基準になっています。このようなケースに該当しなければ、一時所得という位置付けになります。
それでは事例をもとに確認をしていきます。
妻に内緒で競馬を楽しんでいた30代・会社員
34歳のAさんは、結婚して5年目。妻と2人暮らしをしていました。Aさんは結婚前から競馬ファンで、時間があるときはよく競馬を楽しんでいました。Aさん夫婦は共働き、休日が合わないこともあり、結婚をしてからも、Aさんは一人の時間ができると競馬を楽しんでいました。
Aさんの妻は、Aさんが競馬ファンであることは知っていましたが、自分自身は興味がなかったので、あまりいいイメージを持っていませんでした。そんな事情もあり、Aさんは一人の時間にこっそり楽しむようになっていたのでした。
そんなある日、Aさんがなんと競馬で大当たりしたのです! あまりに嬉しくて、自慢したくてたまらず、思わず、友人にすぐに連絡をしました。
妻にも言いたいところでしたが、「また競馬してたの?」と言われるかもしれないな……と、その日は友人にごちそうをして、楽しく帰ってきました。
思わず、大金を手にしたAさんは、「そういえば、もうすぐ結婚記念日だな」と、妻にサプライズで豪華な旅行をプレゼントすることにしました。妻もとても喜んでくれて、夫婦円満で過ごしていた数年度。
税務調査がやってきました。
はずれ馬券もあるから実際儲けてはいないのに…
Aさんは、調査官にとんでもない追徴課税を言い渡されます。
いきなり、ドンと入ってきた競馬の利益。嬉しくていろいろな使い道を考えては、使ってしまってきたので、大金はAさんの手元には残っていませんでした。
Aさんの主張は以下。
確かにそのときは大当たりしたけれど、Aさんは競馬ファンで時間があれば競馬を楽しんでいたため、馬券もそのたびに購入していました。ですから、はずれ馬券も合計すると、大当たりした金額とほぼ変わらないくらいの馬券の購入金額になっていました。以前にニュースではずれ馬券も経費になるという話を聞いたこともあったので、その分も経費として申告をしていたのです。
具体的に計算にしてみると、
Aさんの当初の申告
年間の競馬の払戻金 1,300万円
当たり馬券の購入金額 40万円
はずれ馬券の購入金額 1,400万円
となり、Aさんの計算では税金はかからないという考えでした。
しかし、正しい計算は以下になります。
(競馬の払戻金1,300万円-当たり馬券の購入金額40万円-特別控除額50万円)×1/2=605万円なんと605万円が課税対象となります。追徴課税は約200万円にもなってしまいました。
はずれ馬券を経費にできるのは、よほど稀な事例で、熱狂的な競馬ファンであるAさんにも当てはまらないほどに日々大量に馬券をソフトを使って購入するなどの普通では該当しないようなケースになります。
そのようなケースに当てはまるときは雑所得として取り扱われ、はずれ馬券も経費として認められるという判例もあります。この雑所得とは、所得税の分類がいくつかあるなかで、そのいずれにも当てはまらないものが雑所得になるという位置づけです。
よくある例としては年金や副業の収入が該当します。あくまでも営利目的で継続的に行っているかどうかというところがポイントになるので、これが認められるのはなかなか難しいので、普通は一時所得になるという認識になります。
妻にもバレて…
Aさんは妻にこっそり隠れて競馬をしていたこともあり、税務調査でついにバレてしまい、さらに、夫婦で貯めてきた住宅の購入資金から工面することとなり、妻には激怒されてしまいました。
せっかくのサプライズ旅行も、後味の悪い結果になってしまい、涙するAさんでした。
繰り返しになりますが、競馬で出た利益は原則、一時所得です。ときどきであればあまり問題になりませんが、頻繁に競馬をする方はAさんのようなにならないためにも一度お近くの税理士に相談してみてはいかがでしょうか。
木戸 真智子
税理士事務所エールパートナー
税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー
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