「話せなくても行けば何とかなるでしょ?」→海外生活はそんなに甘くない…日本人の〈英語力のなさ〉が想像以上のハンデになるワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月19日 8時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
義務教育で英語を勉強しているにもかかわらず、日常会話を難なくこなせるほどの英語力を身に付けている日本人はそう多くはありません。それでも、数日の観光を楽しむ程度であればそれほど問題はないでしょう。しかし“ワーホリ”をするとなると、話は別。ある程度英語で会話ができなければ、仕事を見つけることも難しいというのが現状だといいます。本記事では『安いニッポンからワーホリ!最低時給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(上阪徹著:東洋経済新報社)より一部抜粋・再編集し、ワーホリ採用の現実と語学学校に行くメリットについてご紹介します。
英語ができなければ、仕事は見つけにくい
「海外で暮らすクオリティオブライフを大きく左右するのは、間違いなく英語力」
多くのワーホリ関係者に取材して、改めて強烈に実感したのが、これだ。もちろんそんなことはあらかじめ想像がついていたことだったが、実際に話を聞いてみると、それは想像以上だった。
まずは数多くのワーホリ経験者と接してきた「ワールドアベニュー」留学カウンセラーの武政あやかさんが語るのは、英語ができないことによって、仕事が見つけにくくなることだ。
「英語力がないから、聞き取れない。だから、指示をしようにも、できない。これでは、採用することは難しい。こんな声を、やはり現地では耳にしますね」
そもそもワーホリは世界中から次々に、若者がやって来るのだ。もちろん中には、英語ができる若者もいる。世界の共通言語である英語ができない、というだけで、大きなハンディキャップになる。
また、学生ビザで働く若者たちも強力なライバルになる。オーストラリアのワーホリは同じ雇用主のもとでは6か月しか働くことができない。長期の雇用ができないのだ。しかし、彼らはそうではない。ここにもすでにハンディキャップがあることを忘れてはならない。
オーストラリアの日本食レストランのマネージャー・Sさんは、現地のリアルについて率直にこう語る。
「日本にいるときに自分で勉強して、ある程度の英語レベルにしておくことは大切です。オーストラリアに来てしまえばなんとかなると思って来る人も多いんですが、それではちょっと厳しい」
とりわけシドニーなどの観光地は、英語ができない人に優しい。それこそ何かを買いたいとき、“this”と指し示せば買える。ある程度の英単語で、生活ができてしまえるのだ。
「ただ仕事をするとなると、単語で話すのではなく、やはりある程度、ちゃんとした文章で話せるくらいまでのレベルになっていないと難しいです」
日本人は大学受験などもあり、読み書きはそれなりにできるのだという。ところが、話すことに慣れていない。
「だから、何かを質問されても、パッと言葉が出てこないことが多い。言われたことを頭の中で一度、日本語に訳して、そこから答えようとする。返答に時間がけっこうかかってしまう」
そうすると、仮に何を聞かれているのかがわかっていたとしても、「この日本人は理解できているのか」と思われてしまうのだという。
「ですから、質問に対する返事がさっと出てくるような英会話の訓練を、しっかりしておいたほうがいいんです」
もちろん、オーストラリアでも学ぶことはできるが、日本でできる準備もしておいたほうがいいということだ。現地の取材では、こんな声も聞こえてきた。
「送られてきた履歴書で英語が少しでもおかしいと、この人は仕事ができないかも、と思われます。そうすると、はじかれてしまう可能性が高まる。かかってきた電話でも、英語レベルはチェックされます。英語ができないだけで、評価は低くなってしまうんです」
英語だけで判断されてしまうこともあるというのである。
経験者が「語学学校は行ったほうがいい」と言う理由
こうした現実に気づくことになるからだろう。日本にいるときから英語を勉強しておいたほうがいい、という声は多かった。加えて、現地で英語を学べる語学学校には行ったほうがいい、という声だ。
オーストラリアのワーホリでは、最長4か月間、現地の語学学校で学ぶことができる。自身の英語のスキルや現地の希望スケジュールによって、短くしたり、長くしたりすることがあるようだが、取材では実際に通っていた人ばかりだった。
そして、「語学学校に行ったほうがいい」とアドバイスするのは、語学学校に行かなかったり、語学学校を短い期間で終えてしまう人も少なくないからだ。
ワーホリは自由なので、語学学校にまったく行かないという選択肢もある。そうすれば、語学学校に通う費用もなくせる。語学学校の費用は、おおよそ月に15万~18万円ほど。4か月通うとなると60万~70万円ほどになる。
それなりの費用だが、よほど英語に自信があるというケースを除けば、もったいないと考えず、行ったほうがいいというのである。
その一人、シドニーでバリスタで働くワーホリ中の古河さんはこう語る。
「ワーホリに行こうとしていたら新型コロナがやってきてしまい、2年待ったんですが、このとき、英語を勉強しておいてよかったと思いました。モチベーションの上がり下がりはありましたが、上がっているときはけっこう勉強していましたので。まだ行けるかどうかがわからなくて、モチベーションが下がってしまったときには、英会話教室に行ったりもしていました」
それでもオーストラリアにやって来ると、会話はほとんどできなかったという。大きく伸ばすことができたのは、語学学校だ。
「最近も海外の人とトークできるアプリを使って勉強したりもしていますけど、語学学校に通っていた4か月に比べれば、成長は遅いですね」
能力別のクラスになっていたが、古河さんが入ったのは、下から2番目のレベルのクラス。それでも一気に伸びた。
「習ったことは日本の中学生レベルです。それほど高度なことではない。日本人はもともと英文法のレベルは他の国の人より高いんです。そこに、日常的な単語が加わってくると、一気に話せるようになった。あとは英語力というよりも、英語を話すことの怖さのようなものがなくなったのが、一番大きいと思います」
先にも触れているが、古河さんがオーストラリアに来たタイミングは、まだ日本人がほとんどいなかった。強制的に英語しか使えなかったという状況も良かった。
「休憩時間も英語、学校のクラスも英語、授業中も英語、家に帰ってもホームステイ先で英語と、ずっと英語漬けでした」
毎日、出た宿題に取り組み、ホームステイ先でも自室に籠もらないよう、意識した。
「間違っちゃいけない意識が、日本人は強すぎるんですよね。でも、間違ってもまったく恥ずかしくないんです。これでいいんだ、ということにすぐに気づけました」
上阪 徹
ブックライター
※本記事は『安いニッポンからワーホリ!最低自給2000円の国で夢を見つけた若者たち』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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