1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

70代の父、突然の病で危篤に。元気な母には「認知症」の兆候が…長男と二男で「遺産分割」を進めることは可能か?【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 11時15分

70代の父、突然の病で危篤に。元気な母には「認知症」の兆候が…長男と二男で「遺産分割」を進めることは可能か?【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

ある日突然、病に倒れて危篤状態になった高齢の父親。近い未来、遺産相続が予想されますが、相続人となる母親に認知症の症状があることを、子どもたちは懸念しています。対処法はあるのでしょうか。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

高齢の父が突然倒れたが…母は認知症、相続はどうなる!?

70代の父親が突然の病気に倒れ、危篤状態になってしまいました。とてもつらいですが、近い未来、相続が発生すると思われます。

うちの家族構成は、50代の長男である私と、40代の二男である弟、そして70代の母親の4人です。

実は、父親の病状以外にも心配事があります。母親は体は元気ですが、以前より認知症の兆候が見られるのです。相続が発生した場合、法律上、どのような懸念点が考えられるのでしょうか。

(50代会社員)

高齢化の進展に伴い、認知症を患う方が増えている日本では、今回の相談のような状況に置かれ、悩む方が増えています。相続人に認知症の方がいた場合、主に4つの懸念点が上げられます。

①遺産分割協議ができない

②認知症の相続人が相続し、銀行口座に入金しても凍結されてしまう

③不動産などの高額な財産を相続しても、その後の売買契約の当事者になれない

④不動産を相続した場合、管理が難しくなる

これらについて、くわしく見ていきましょう。

①遺産分割協議ができない

遺産分割協議は、必ず相続人全員で行わなければならないと規定されています。

しかし、認知症を患っている方は、認知症の症状の重さにもよりますが、遺産分割協議に参加しても、その協議は法律上有効と認められない可能性が高くなります。

また、認知症を患っている方を抜きにして、残った相続人だけで遺産分割協議を行っても、その協議は法律上無効とされてしまいます。

②認知症の相続人が相続し、銀行口座に入金しても凍結されてしまう

判断能力が著しく低下していると判断された方の場合、金融機関から口座を凍結され、お金を引き出せなくなってしまう場合があります。

口座が凍結されると、本人のための医療費や、老人ホームの入居費用だけでなく、日々の生活に必要なお金まで引き出せなくなってしまいます。

そうなると、一時的に家族が負担しなければなりません。先ほどの相談内容でいうと、長男・二男の2人になります。

③不動産などの高額な財産を相続しても、その後売買契約の当事者になれない

認知症は民法上〈意思能力のない人〉として扱われるため、不動産の新規売買契約はもちろん、遺産分割協議に参加しても、法律上有効と認められない可能性が高くなります。

財産管理(不動産や預貯金などの管理、遺産分割協議などの相続手続き)や、身上保護(介護福祉サービスの利用契約・施設入所入院の契約締結)などの法律行為を1人で行うのは難しくなります。

④不動産を相続した場合、管理が難しくなる

認知症になると、預貯金はもちろん、不動産などの管理行為もできなくなります。

成年後見人制度の「落とし穴」

認知症となり、口座を凍結されて預貯金も引き出せず、不動産等の管理もできず、遺産分割協議にも参加できないとなれば、「成年後見制度」を利用して、成年後見人を交えて解決していくしかありません。

しかし、成年後見制度の利用については、デメリットも多く存在します。

そもそも成年後見制度とは、意思能力のない方の財産を管理する「成年後見人」を家庭裁判所に選任してもらうのですが、専門家が就任するケースが非常に多くあります。

その場合、専門家に月々1万円程度の報酬を支払わなければいけません。

仮に親族が選任された場合でも、成年後見人を監督する「監督人」が付くケースも多くあります。監督人に報酬を支払うという点では、利用のデメリットは変わりません。

「成年後見制度=財産を守るための制度」なので、相続財産を自由に使うことは難しくなります。

また、この制度は一度利用すると変更や取り消しは事実上で不可能となります。

認知症の方が意思能力を回復すれば、この制度の取り消しは可能です。しかし、現実的に認知症になってから回復して成年後見制度を辞める事例は極端に少ないので、なかなか難かしいといえます。

成年後見制度の詳細については、記事『夫の年金で暮らす妻、法定後見人のひと言に思わず「どうやって生きていけばいいの!」…トラブルが絶えない〈法定後見制度〉の実態【司法書士の助言】』で解説しています。あわせてご確認ください。

成年後見制度の利用を回避する方法

相続において「認知症の人がいることで財産を自由に使えなくなる」といった事態を回避するには、どうすればいいのでしょうか? また、成年後見制度を利用せずに相続をするために、事前にできる対策はあるのでしょうか?

成年後見制度をの利用を回避して相続をする方法としては、

①家族信託の利用

②遺言書の作成

③生前贈与の活用

が挙げられます。

①家族信託の利用

家族の資産について、管理・処分だけでなく、運用についても委任することができるので、積極的に相続財産を運用していくこともできます。相続財産のすべてではなく、不動産だけを任せる、などの指定もできるため、非常に有効な相続対策になります。

②遺言書の作成

公平な遺言を残すことで、遺言書の通りに相続することができれば、遺産分割協議を行わずに相続手続を終えることができます。

③生前贈与の活用

没後の相続分となる財産を、前もって贈与することが可能です。ただ、相続開始前の3年前までのものは相続税が課されるので注意が必要です。専門家のアドバイスをもとに相続対策を講じていただければと思います。

日頃から家族で「相続」について話し合うことが大切

共同相続人の1人に認知症の方がいる場合、遺産協議ができなくなる・口座が凍結されるといった事態になる前に、家族信託・遺言書の作成・生前贈与の活用をすることが大切です。

しかし、これらの方法は被相続人が元気なうちでなければ利用できません。

「信託」「贈与」の活用は、親子関係が良好でなければむずかしいという点を考えると、「遺言書の作成」が、いちばん手頃で有効な相続対策だと思います。本人の意思が尊重できるうえ、公平な遺言書を作成して残すことで遺産分割協議をなくすこともできるからです。

日頃から家族とはしっかりコミュニケーションをとり、相続を含めた将来のことを腹を割って話し合っておきましょう。ときには専門家のサポートを受けながら相続に備えることをおすすめします。

加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください