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タイ政府が計画する「年金宝くじ制度」はポピュリズム的ギャンブルか?…高齢化が進むタイの驚くべき「貯蓄事情」

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月3日 8時30分

タイ政府が計画する「年金宝くじ制度」はポピュリズム的ギャンブルか?…高齢化が進むタイの驚くべき「貯蓄事情」

Thai PBS Worldより

日本と同じく高齢化が進むタイでは、「年金宝くじ制度」の設立が議論されている。タイの公共放送局『Thai Public Broadcasting Service』(Thai PBS)が運営する英語ニュース・サイト『Thai PBS World』から翻訳・編集してお伝えする。

31.3%が老後のための貯蓄なし

タイの60歳以上の高齢者の数は1300万人に達し、総人口の約20%を占めている。高齢化社会は経済にとって福祉コストの増加を伴っている。

タイ証券取引所が以前行った調査では、高齢者層の31.3%が老後のための貯蓄をしておらず、53%が20万バーツ(約87万円)以下の貯蓄しかしていないという驚くべき結果が出ている。 

財務省は、この危機的状況を認識し、年金宝くじ制度を立ち上げることによって、労働者、特に非正規部門の労働者を支援するための資金を調達する計画を立てた。 

年金宝くじとは何か?

パオプーム・ロジャナサクン副財務大臣は、年金宝くじ制度は多くの地方労働者の注目を集める最良のツールであると説明した。

タイ人は公営宝くじと私営宝くじの両方にはまる人が多い。

国家貯蓄基金(NSF)は、非正規部門の労働者のための退職貯蓄手段として、1枚50バーツ(約219円)のデジタル宝くじを発行する。抽選は毎週金曜日の午後5時に行われ、主な賞品には1等賞の100万バーツ(約438万円)が5本、2等賞の1,000バーツ(約4,000円)が1万本がある。

「賞金は政府予算で賄われ、その費用は週に1,500万バーツ(約342万円)、年間7億バーツ(約1億5,967万円)と見積もられており、現在の年金基金の費用4,000億バーツ(約912億6,069万円)から5,000億バーツ(約1,140億3,394万円)に比べれば非常に小さな金額です」とパオプーム氏は語った。

チケットの賞金が当たらなかった人も、投資したお金は貯蓄に回されるので、そのお金を失うことはない。貯蓄はNSFによって管理される。会員は60歳になったとき、積み立てた資金を引き出すことができる。

年金基金の宝くじを購入できるのは、NSF会員、社会保障法第40条の被保険者、その他の非正規労働者である。個人で購入できるチケットは月3,000バーツ(約1万3,000円)分までとなっている。

パオプーム氏によると、この制度は1,600万人から1,700万人を対象とすると予想されている。財務省は基金の設立に6~12ヵ月を要するため、制度の詳細は後に変更される可能性がある。

タイにおける財政赤字の実態

パオプーム氏は「政府はNFSの運営に関連する法律や規制を変更する必要があります」と述べた。

政府のアプローチは、多くの経済学者による提言とは異なっている。地元の経済学者や世界銀行の経済学者の多くは、以前から税制改革を求めてきた。例えば、付加価値税を7%から10%に引き上げる、土地や不動産、相続に対する税率を引き上げるなどである。

しかし、増税は国民に不評であり、政権を担う政治家たちは、この不評な措置によって次の選挙で政権を失うことにつながるのではないかと心配している。タイはここ数年財政赤字が続いており、税収は国内総生産(GDP)の15~16%程度にとどまる一方、社会福祉のコストは増加している。国は税収を増やす方法を早急に見つける必要がある。 

現在、同国は消費から得られる税収に頼っており、富裕層に対する税収ははるかに低い。例えば、付加価値税の税収は9,157億バーツ(約4兆150億8,000万円)と見積もられているのに対し、相続税の税収は2024年度で約8億バーツ(約35億円)である。

さらに、個人所得税を毎年支払っている人はほとんどおらず、その税収額は2024年度で4,148億バーツ(約1兆8,191億円)と見積もられている。

ギャンブルの助長?

公営宝くじは税金として検討されているが、多くの人々は、この新しいスキームがギャンブルを助長するのではないかと、社会的影響を懸念している。

パオプーム氏はこの制度を擁護し、ギャンブルを助長するのではないかという懸念を否定した。「この制度は、リスクを取るのが好きなタイ人の典型的な行動に合っています」と同氏は話した。 

失敗する可能性

批評家たちはこの年金宝くじ制度に懐疑的だ。   

タイ商工会議所大学デジタル経済・投資・貿易研究センターのアヌソーン・タマジャイ所長は、「タイの家計負債は非常に高く、この計画が成功する可能性は低い」と述べた。 

現在の家計負債はGDPの91%だ。 ほとんどの人々、特に非正規部門で働く人たちは借金で生活しているため、老後のための貯蓄に十分な収入がない。

アヌソーン氏は政府に対し、ポピュリズム的な政策に頼るのではなく、経済と社会福祉制度を改革するよう求めた。同氏は、社会福祉制度をあらゆる年齢層に適したものにすることが重要だと述べた。「強制貯蓄は政府の財政方針に沿ったものであるべきです。政府は社会保障法第40条に基づく労働者保険の加入者層の拡大に努めるべきです」(アヌソーン氏)。

「政府は、すべての人々の幸福を保障するベーシックインカム制度を開発する必要があります。労働者は社会保障制度に参加する権利を持ち、労働組合を組織する権利を持つべきです。また、人々が平等に天然資源にアクセスできるようにすべきです」と同氏は付け加えた。

文=Thai PBS World ビジネスデスク

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