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年収1,000万円から360万円に大激減で夜も眠れぬ61歳元部長…〈収入補填の給付金〉を受け取るも、まさかの金額に思わず「足りるわけないだろ」【FPの助言】<br />

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月11日 7時45分

年収1,000万円から360万円に大激減で夜も眠れぬ61歳元部長…〈収入補填の給付金〉を受け取るも、まさかの金額に思わず「足りるわけないだろ」【FPの助言】&lt;br /&gt;

(※写真はイメージです/PIXTA)

今回の主人公、会社員Aさんは、定年後も継続雇用で働き続けています。しかし、役職定年・会社の経営不振・定年という3つのタイミングで大幅な収入減を経験。一時は1,000万円あった年収が、今は若手社員なみの360万円まで下がっています。Aさんのように、定年退職を迎えた後も同じ会社で働く人は増加傾向にありますが、継続雇用後の給与は定年時より低く設定されることが多いのが実情です。今回はそんな定年後の減収に対処するための給付金制度について、FPの南真理氏が解説します。

ピーク時から年収が「4割以下」まで減った61歳会社員

地方都市の小さな会社の営業企画部に勤めるAさん(61歳・男性)は、定年退職を迎えた後も引き続き同じ会社で継続雇用で働いています。仕事の実力はまだまだ年下の同僚に負けているとは思っていませんが、切ない現実がAさんを追い詰めつつありました。

Aさんは20代から今の会社で働きはじめ、順調に昇進しました。50歳のときには部長職となり、年収は1,000万円に到達。忙しいながらもやりがいを感じ、待遇にも満足していたといいます。

ところが、Aさんを避けては通れない試練が待ち構えていました。それが「役職定年」です。55歳になると役職定年になるのが会社の通例で、部長職を外され実質的な降格と共に収入ダウンのお達しを受けたのです。提示された年収は2割減の800万円でした。

Aさんの家族は同い年の妻と子ども1人ですが、子どもは当時25歳で独立済み。教育費など家計負担が大きいピークの時期は過ぎていました。年収が200万円も下がったことに不満はあったものの、自分の先輩も同じように役職定年を受け入れていたのを以前から見てきたAさん。妻と2人であれば800万円でも十分生活できる範囲だと自分に言い聞かせて、その後も手を抜くことなく仕事を続けていたのでした。

しかし、Aさんが58歳になったときに2回目の試練が訪れました。会社の業績不振によってボーナス支給はゼロに。大幅な賃金カットを余儀なくされ、年収は800万円から540万円に大幅ダウンとなりました。それでも長年勤めた会社への恩義と年齢的なことを考え、Aさんはこのまま今の会社で働く選択をしました。

そして60歳で定年退職を迎え、継続雇用を選択。しかし継続雇用後は年収が下がるのが一般的です。Aさんも例外ではなく、提示された年収は360万円でした。つまり、現役時代に最も給料をもらっていた54歳の年収1,000万円から、今は年収360万円まで落ち込んでしまったのです。

頼みの綱の退職金はというと、Aさんの会社には退職金規定がなく、業績不振の影響で金額は1,000万円程度と想定よりも少ない金額に。住宅ローンの残債に充てると手元にはほとんど残らないという状態でした。

さすがに老後の生活が不安になったAさんは、古くからの知り合いのファイナンシャルプランナー(以下、FP)に相談することにしました。

「役職定年、経営不振、継続雇用と3段階でこんなに給料が下がるとは思いませんでした。年金をもらえる65歳までは生活のために働かざるを得ないけれど、若手社員と変わらない給料で働くのは正直モチベーションを保つのに苦労していますし、長い老後を考えると夜もあまり眠れません」とのこと。

Aさんの相談を聞いたFPは「まずは社会保険制度の一つである『高年齢雇用継続給付金』の受給ができるか確認しましょう」と、伝えました。

定年後、賃金が下がった人がもらえる「高年齢雇用継続給付金」とは?

高年齢雇用安定法によって、60歳で定年後も従業員の希望があれば、会社側は65歳まで雇用を継続することが義務付けられています。

しかし、先ほども触れたとおり、継続雇用後の賃金は定年前より下がるのが一般的です。賃金が下がることによる従業員の不安解消と雇用の継続を支援するために給付されるのが「高年齢雇用継続給付金」です。

高年齢雇用継続給付金は公的保険の雇用保険から支給されます。また、高年齢雇用継続給付金には60歳以降も同じ会社で働く場合に支給される「高年齢雇用継続基本給付金」と、一度離職し、基本手当を受給した後、60歳以降に別会社に再就職した場合に支給される「高年齢再就職給付金」の2種類があります。

このうち、継続雇用を選択したAさんが受け取れる可能性があるのが、「高年齢雇用継続基本給付金」の方です。高年齢雇用継続基本給付金の支給要件は、60歳以上65歳未満で、5年以上雇用保険に加入していること、定年前と比べて賃金が75%未満となっていることです。

Aさんが受給できる高齢者雇用継続給付金の金額は?

では、Aさんは給付金をいくら受給できるのでしょうか。その前に、まずは定年退職前と比較して賃金が75%未満に低下しているかを確認する必要があります。なお、比較するのは現役時代の最高年収ではなく、定年退職前の年収という点には注意しましょう。

Aさんの定年退職前の賃金は月額45万円(年収540万円)で、定年退職後の賃金は月額30万円(年収360万円)です。30万円(支給対象月に支払われた月額賃金)÷45万円(60歳到達時の月額賃金)×100=67%(低下率)となるので、支給要件は十分に満たしているとFPはAさんに告げました。

また、低下率ごとに支給率が定められており、低下率67%の支給率は7.8%です。よって、30万円(受給対象月の月額賃金)×7.8%(支給率)=2万3,400円が、Aさんが月々受け取れる金額になります。

申請は原則、会社を通して行います。申請していないと受け取ることができないため、会社が制度を知らない場合には申請が漏れてしまうので注意しなくてはなりません。対象にもかかわらず申請をしていなかった場合には、2年間のみ遡ることができます。

FPに助言をもらったAさんは高年齢雇用継続給付金の申請をし、これまで受け取れていなかった期間の給付金も含め受給できることとなりました。

Aさんの今後のライフプランとは?老後の不安を一転させた妻の一言

その後、Aさんは改めてFPのところに今後のライフプランを相談しに行きました。

「給付金をもらえるって聞いて一瞬大喜びしたけれど、月2万円ちょっとじゃ定年前から減った分をカバーするのに足りるわけないんですよね。もちろん無いよりは全然いいのですが……。

それで、今更ですが妻と今後のことを話し合いました。そうしたら、びっくりなことに私に内緒で妻の実家から贈与を受けていたみたいで。その貯えが2,000万円ほどあると打ち明けられましたよ。私はあったらあった分使ってしまうから、内緒にしていたそうなんです。

さらに、結婚当初から毎月個人年金保険に積立をしていて、70歳から20年間、月5万円を受け取れることが分かりました。会社が傾きそうになった時も妻はドンッと構えていたし、本当に頭が上がりませんよ」とのこと。

Aさんは65歳の継続雇用満了までは働き続けることにし、コンパクトな住まいへの住み替えも検討しています。改めてライフプランを立て、今ある貯えや年金等を含めて試算した結果、老後の生活も工夫次第で不安なく過ごせることがわかりました。

ここまで解説したとおり、高年齢雇用継続給付金は、定年退職後の賃金が75%未満に低下した場合に国が賃金を補助してくれる制度です。しかし、申請をしなければ受け取ることはできません。会社任せにせず、自分が制度の対象となるのかを確認し、申請漏れのないようにすることが大切です。

また、Aさんの場合、そもそも「役職定年」で給与が下がるとわかっていたならば、お金の使い方をもっと慎重に考えるべきだったといえます。会社の経営不振もAさん個人のせいではありませんが、働いていたら予兆を感じることもあったのではないでしょうか。その段階で、夫婦で家計について話し合うべきでした。

Aさんにはしっかり者の妻がいて幸いでしたが、そうでなければ金銭的に不安を抱えながら老後を過ごすことになっていたかもしれません。「もしも」の事を考えて、早い段階から家計を守るための計画を立てておくことが大切です。

さらに、高年齢雇用継続給付金については、2025年4月から給付率が15%から10%へ縮小されます(※)。これから定年退職を迎える方は、制度の見直しについても情報収集をしておくようにしましょう。

※参考:厚生労働省「高年齢雇用継続給付の見直し」

南 真理 ファイナンシャルプランナー

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