リクルートも採用している、全社員対象の“提案制度”…「新規事業に結びつく企業」と「単なるイベントで終わる企業」の決定的な差【経営コンサルが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 7時15分
![リクルートも採用している、全社員対象の“提案制度”…「新規事業に結びつく企業」と「単なるイベントで終わる企業」の決定的な差【経営コンサルが解説】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61633_0-small.jpg)
新規事業開発はどのように進めればよいのでしょうか。新規事業開発の進め方は、会社によって大きく3タイプにわけられるそうで……。本記事では、中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、自社に合った新規事業開発の進め方を紐解いていきます。
新規事業開発の3つのタイプ
新規事業開発には、決まった方法があるわけではありません。経営や企業は生きものです。それぞれに個性があり、1つとして同じものはありません。何よりも社員が異なります。そのため、仮に製品・顧客・企業規模などで似通った企業があったとしても、新規事業開発に取り組むと、新規事業としてまったく同一の事業が選ばれることはまずありません。
新規事業開発は、それに取り組む企業の特性や個性を反映するものです。そのため、誰でも簡単に新規事業テーマが選定して事業を進められるような、簡便な方法があるわけではありません。
それぞれの企業のメンバーが、自社の歴史や強み、その時々の事業環境のなかで、「脳みそに汗をかき、多くの関係者と知恵を出し合っておこなう活動」といえるでしょう。
とはいえ、自社にとって適切であり、自社ならではの新規事業テーマの選定をするために、それをガイドし支援してくれる考え方やツールには、さまざまなものがあります。それらについて順に紹介していきます。
「自社ならでは」の新規事業開発とは、「他社と差別化できる」とか「他社の事業とはひと味違う」といった意味合いです。「差別化」は事業が成功するための必須条件ともいえます。
また、新規事業開発は結果がすべてです。選定された新規事業テーマが事業として成功しなければ意味がありません。ぜひ、自社ならではの新規事業を開発し、事業として成功することを目指していただきたいと思います。
新規事業開発の進め方には、大きく3タイプあります。
1.経営者が率先して進める 2.全社員参加により社員が提案・推進する 3.新規事業開発の部署や担当者が中心になって進める企業の特性によって、1~3のどれかが中心になって進められていることが多いように思います。いくつかの進め方が複合しておこなわれることもあります。1および2は、個人があたまのなかで考える比率が高い進め方です。3は、数名程度の担当者がほかの社員のアイデアも聞きながら連携して進める部分が多いといえます。
それぞれの進め方について簡単に解説していきましょう。
1.「経営者が率先して進める」タイプ
まずは「経営者が率先して進める」タイプの新規事業です。従業員数が数10名程度以下の小規模な企業がおこなう新規事業は、ほとんどがこのタイプに該当するといってもいいと思います。なぜなら、経営の機能が経営者に集中しているからです。まれに大きい規模の企業でも、経営者の思い入れなどから取り組むことも見られます。
この場合の新規事業テーマは、業界誌や講演会、知人との会話などのなかから、経営者のアンテナにひっかかった事業や、同業他社が手掛けてうまくいっている事業などをヒントにして、経営者の思い入れにより選ばれることがあります。
思い入れとはいえ、経営者はあたまのなかでは常に次の事業機会を探しているものです。そのことからすれば、日ごろから新規事業のテーマについて考え、さまざまな候補のなかから確度の高いテーマを選定するプロセスを、あたまのなかでおこなっているのかもしれません。
小規模な企業では、企業の経営の安定や規模拡大のために、新規事業は有効です。もちろん、失敗するとダメージが大きい、といったリスクがあります。そのため確度の高い事業を求める傾向が高いといえます。
このタイプで取り組まれる新規事業は、比較的シンプルで取り組みやすい事業や、既存事業の活動と重なる部分がある事業です。具体的にはさまざまなものがあり、一例として次のようなものが挙げられます。
・コンビニの経営者が隣接する敷地を利用して、コインランドリーを運営する。 ・居酒屋が同じ店舗を使い、テイクアウトの弁当販売をする。 ・レストランが移動販売車を使い、イベント会場やオフィス街で自慢の料理を販売する。 ・ラーメン店が店舗で評判の餃子を冷凍用にして、冷凍自販機で販売する。 ・旅館が食堂を活用し、観光客向けにランチの営業をはじめる。 ・農業事業者や食品加工事業者などが従来の農協や卸売事業者を通じた販売だけでなく、直売やネット販売などにより消費者へ直接販売する。 ・魚の卸売事業者が煮魚などの加工食品の製造販売をはじめる。 ・貸しビル業を経営する事業者が一部の空きスペースを活用し、リモートワークスペースを提供する。 ・金属部品加工事業者が顧客の引合いに対応して、新たな金属部品の加工や、組み立て部品の製造に事業を広げる。2.「全社員参加により社員が提案・推進する」タイプ
次に、「全社員参加により社員が提案・推進する」タイプの新規事業です。
先述したリクルート社の提案制度※がこれにあたります。全社員を対象として、新規事業の提案制度やアイデアコンテストなどを実施する会社は多いかもしれません。しかし、それらの制度の多くは、イベント化していたり、主目的が社内の活性化に置かれたりしていて、提案されたアイデアが新規事業の立ち上げにつながらないことも多いように思われます。社員から集まった提案のなかから優秀なアイデアが選定され、表彰され、社内報などで発表されるものの、部分的な取り組みにとどまっているのです。
※リクルートグループの全従業員を対象にした「Ring」という新規事業の提案制度があり、ここから 『カーセンサー』『ゼクシィ』『ホットペッパー』『スタディサプリ』 などが誕生したのです。Ringに集まったアイデアのうち、事業化フェーズに進むのは2%。そのうち黒字化に到達するのは15%ともいわれています。2%×15%=0.3%で、成功確率はまさに千三つです。このようなことが続くと、新規事業の提案を考える場合、表面的な新規性や革新性に重きが置かれ、実際に事業化する場合にどのようなことが生じるのか、それにはどのようにして対応できるのか、などについての考慮が十分ではなくなる懸念も出てくるでしょう。
これに対して、企業の業態そのものの特性から新規事業を次々と立ち上げることで発展してきている企業もあります。このような企業では、新規事業を生み出したり、育てたりすることに、意識や関心をもった社員が多く、会社全体が常に新規事業を考え議論しており、新規事業を立ち上げる経験知を多くもっているのです。
このような企業は、一部のITサービス企業やR&Dを事業の基盤とする企業に見られます。これらの企業の場合には、事業特性や企業文化などを反映した独自の新規事業開発のプロセスを有しているようです。
3.「新規事業開発の部署や担当者が中心になって進める」タイプ
最後に、「新規事業開発の部署や担当者が中心になって進める」タイプの新規事業です。
このタイプの新規事業は、中堅企業以上の比較的規模の大きい会社で見られます。数名以上のメンバーで構成され、新規事業開発を担当する専門部署が新規事業開発推進の中心になるものです。
専門部署のメンバーが、場合によっては外部の専門家の協力を得ながら独自に新規事業テーマを検討し、新規事業開発を進める場合もありますし、社員からアイデアを広く募る場合もあります。
この場合、2のタイプとは異なり、社員からの提案はボランティアベースであることが多いようです。3のタイプで重要なことは、「経営トップのコミットメント」と「新規事業開発部署の担当者の人選」です。
規模の大きい会社であれば安定した既存事業があり、新規事業開発の緊急度は高くないかもしれません。そのようななかで、自社の中長期の発展を見据え新規事業開発を進めるためには、トップが新規事業の必要性を折に触れて伝えることが必要です。
また、新規事業開発の担当者として、チャレンジ精神に富む担当者を充てるとともに、トップがその活動を支援することも必要です。トップの言動や関心を周囲のメンバーは見ています。トップがこのように動くことで、社内で新規事業開発に協力しようという動きが高まってくるのではないでしょうか。
自社独自の新規事業開発を
以上、新規事業開発の3つのタイプについて説明してきました。次回以降では、新規事業テーマを選定するためのフローと、そこで使われるツールや活用方法などについて紹介します。これらの方法は、3のタイプの新規事業開発に直接活用できるものです。
①②のタイプにおいても、どのような新規事業テーマに取り組んだらいいかを考える際に、ここで紹介する考え方やツールなどは、大いに参考にできるものと思います。
ぜひ、それらを活用しながら、自社独自の新規事業開発を推進していただきたいと思います。
中野 正也
株式会社グローバル事業開発研究所
代表取締役
※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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