「新規事業」のアイデアに悩んだら…「戦略経営の父」が提言する、3つの可能性に分けた考え方【経営コンサルが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月14日 7時15分
![「新規事業」のアイデアに悩んだら…「戦略経営の父」が提言する、3つの可能性に分けた考え方【経営コンサルが解説】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61638_0-small.jpg)
新規事業テーマがなかなか思いつかない、とあたまを抱える企業は多いでしょう。そのようなときには、「成長マトリクス」による分類法が役に立つかもしれません。本記事では、中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、成長マトリクスを用いた新規事業開発について解説します。
新規事業テーマのアイデア出しの方法
新規事業テーマのアイデア出しは、社会・顧客のニーズの動向、競合企業の動向、など環境動向の分析を踏まえたうえでおこなうものです。このツールを使えば「自動的に適切な新規事業テーマが見つかる」とか、「誰から見ても有望なテーマが見つかり安心できる」などといったうまい方法はありません。
誰から見ても有望と思えるような新規事業テーマが見つかるということは、競合他社も同じように参入してくるおそれがあり、かえって不適切かもしれません。
新規事業テーマのアイデア出しは、やりがいがあり楽しい作業である反面、常にあたまを悩ませ苦労しながら、自社ならではの成功しそうな事業を探していく、孤独で疲れる作業であるともいえます。
しかし、新規事業テーマを発想するためのツールがまったくないわけではありません。それは、著名な経営学者で「戦略経営の父」といわれるアンゾフ氏が1957年に発表した「成長マトリクス」です。このチャートを下記図表に示します。
「成長マトリクス」から見る新規事業開発
成長マトリクスは、事業を「市場/顧客」と「製品/技術」の2つの軸のなかで位置づけて考えるものです。もともとの成長マトリクスでは、2つの軸は「市場」と「製品」とされていますが、ここでは新規事業テーマを発想しやすくするために少し拡張して記載しました。
![](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/a/8/800m/img_a8893112d8d3af331c7af7d03e0489de242524.png)
それぞれの軸は、「既存」と「新規」に分けられ、全体で4つに区分されています。図の左下Aの部分は、既存市場に既存製品を提供する事業であり、既存事業を意味しています。この領域は、既存事業をこれまで以上に顧客に浸透させ、売上やシェアを拡大すべき領域です。
これに対してB~Dの領域は新規事業になります。
Bの領域は、既存の市場・顧客に対し、新製品を提供していくタイプの新規事業です。「製品」と表現していますが、サービスもここに含めて考えてください。すでにニーズ・状況がわかっている既存顧客に対する新たな事業展開ですので、図中では「土地勘のある市場への展開」と記載しました。
Cの領域は、既存の製品・技術を活用し、新規で未知の顧客を開拓するものです。新規顧客ですので、既存製品といってもそのまま通用することはまれです。新規顧客に向けて、既存製品を改良する必要があるかもしれません。しかし、基盤とする技術は共通していますので、知見のある技術を活用しながら、新規顧客のニーズに対応する製品を提供していくタイプの新規事業といえます。
Dの領域は、未知の市場に対し、これまた未知の技術を活用して事業展開するものです。技術面でも顧客面でも、手がかりのない分野への展開であり、落下傘で単騎、未知の土地に降りていくような事業になります。そこには先住民族ともいえる競合企業が待ち構えているものです。やみくもに展開しても成功確率は高くないでしょう。一般的に、Dの領域に直接取り組む新規事業開発は、あまりおススメできません。
ただしDの領域であっても、「明確にニーズがあるのに、それに応える製品を誰も提供していない」とか、「フランチャイズビジネスのように、資本や労力を提供すれば、製品やノウハウは提供され、集客が見込める」といった状況があるなどで、有望な新規事業の展開につながる場合もありますので、一概にダメとはいえません。
また、Dに直接展開するのではなく、BやCを経由して、BやCの領域の事業で得られた知見を手がかりとしてDに展開する、といった考え方であれば十分に可能性があります。アンゾフ氏はDの領域への新規事業展開を「多角化」と名付けています。
成長マトリクスを使いこなし、新規事業テーマを考えよう
このように、マトリクスを発想のヒントとして活用することで、新規事業アイデアが考えられます。
たとえば、AからBへの展開について、「既存事業の顧客を想定し、まだ自社が対応していないニーズで、新たに対応できる製品はないか?」と考えることです。AからCへの展開について、「現在自社が提供している製品や、保有している技術が活用でき、ニーズに応えられる新しい業界はないか?」と考えることです。
成長マトリクスは、市場と製品を分けて、それぞれの視点から、自社が保有しているリソースや知見を活用し、言わばアメーバー型に隣接する分野に新規事業展開する発想を提供してくれるものです。
また、多角化についての可能性も包含しています。成長マトリクスを使いこなせば、既存事業をベースとして、新規事業テーマを考える際の大きなヒントを提供してくれることでしょう。
中野 正也
株式会社グローバル事業開発研究所
代表取締役
※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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