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「低価格」がウリの中小企業…自社の強みをもっと魅力的に表現する方法【中小企業診断士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月21日 7時15分

「低価格」がウリの中小企業…自社の強みをもっと魅力的に表現する方法【中小企業診断士が解説】

中小企業が新規事業を開発する際「自社の価値」を改めて定義することは重要です。しかし実際、改めて定義しようとすると意外と難しいでしょう。そこで活用されるのがCFTチャートです。本記事では、中野正也氏の著書『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)より一部を抜粋・再編集し、新規事業開発のためのCFTチャート活用法について解説します。

金属部品メーカーA社のケース

下記図表は、自動車や建設機械などのミッション(変速機)の一部となる金属部品、つまり変速機部品を製造している中小企業A社のCFTチャートです。

※顧客・機能・技術の3点を頂点とした三角形型のチャートのこと。新規事業開発の担当者が議論を重ね、自社ならではの他社とは一味違う新規事業を考えるためのキャンバスとなる。

C(顧客)は、いうまでもなく自動車メーカーや建設機械メーカーに変速機を納入する、「変速機メーカー」です。

F(顧客に提供する機能)は、何でしょうか。顧客から見た場合、金属加工をおこなっている中小企業は多くあります。F(機能)は、それらの多くの競合企業のなかで、「自社が選ばれて受注できているのはなぜか」「自社はどのような点で、競合他社に比べて評価されているのか」を端的に示すものです。A社の場合は、F(機能)として「ミクロンレベルの加工精度」といった価値を顧客に提供しています。競合企業のなかでミクロンレベルの加工をできる企業がなく、これができるために他社ではなく自社が受注できているからです。

F(機能)を実現するための技術を示しているのが、CFTチャートの最後の要素であるT(技術)です。A社の場合のT(技術)は、「金属精密加工技術」としました。高度な機械を保有し、それを用いて精密加工がおこなえるノウハウや技術者を保有していることを、まとめてこのようにあらわしました。

自社のCFTチャートを作るコツ

実際に自社の事業のCFTチャートをつくろうとすると、意外にむずかしいものです。とくにF(機能)とT(技術)がむずかしいのではないでしょうか?

C(顧客)、F(機能)、T(技術)は、究極的にこれと思われるものを、簡潔かつ端的に表現することが必要です。A社の例では、顧客に提供し、それによって顧客が自社を選んでいる機能として、「ミクロンレベルの加工精度」としました。

実際にはそれだけでなく、納期を守っている、受注単価を抑えている、などといったこともあるでしょう。ほかにも、設計など早期の段階から顧客と情報共有し、顧客と一緒に加工方法についてきめ細かく打ち合わせをする、などと顧客に密着した対応もしているかもしれません。それらのなかから、自社の事業の場合には、何が発注先の究極的な決定要因となっているのかについて、じっくり考えることが重要です。

F(機能)は、「付き合い」でも「低価格」でもない?

F(機能)の補足として、「顧客に提供する機能」との言い方は、自社側の視点から見た場合の表現です。顧客側の視点から考えて、「顧客から見た価値」と言い換えて考えてみてもいいと思います。

企業の担当者に、「貴社の特定の事業のF(機能)を考えてください」とお願いすると、「長い付き合い」とか「低価格」といったものが挙がることがあります。

しかし顧客は、本当に、「長い付き合い」で発注しているのでしょうか? 多くの競合企業があり、それぞれの企業が営業の努力をしているなかで、「長い付き合い」ゆえに、自社に発注してもらえることはいつまで続くでしょうか? また、「長い付き合い」で発注先を決めていたら、発注元の企業の競争力にも支障が生じるのではないでしょうか?

F(機能)として「低価格」を挙げる場合も、本当にそうなのか十分に吟味する必要があります。一時的に低価格で受注できたとしても、いつまでも続けて事業を継続していくことは可能でしょうか?

自社事業のF(機能)として「低価格」を掲げることがダメというわけではありません。しかし、「低価格」をF(機能)とすることは、他社と同等の商品を、他社よりも常に低価格で提供し、顧客に提供し続ける、ということです。F(機能)として設定することは、かなり難易度の高いことだと思います。

これを可能とするT(技術)は何でしょうか? 低コスト化のための、他社を圧倒する仕入れのネットワークや生産技術など、相当なノウハウや技術が必要になるのではないでしょうか。

同じような金属部品加工をおこなっている企業であっても、企業ごとにCFTは異なるはずです。これまでの歴史・経験・人材・設備・立地など、すべてが同一の企業はあり得ないからです。自社の提供する機能・価値・強みといったものを、顧客の立場に立ってじっくり考え、自社の事業を定義してみることは、新規事業開発の第1歩となります。

中野 正也

株式会社グローバル事業開発研究所

代表取締役

※本記事は『成功率を高める新規事業のつくり方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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