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年金月13万円75歳・再雇用の夫、担ぎ込まれた病院のベッドで定年直前に加入の「死亡保険」を大後悔したワケ 【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 11時30分

年金月13万円75歳・再雇用の夫、担ぎ込まれた病院のベッドで定年直前に加入の「死亡保険」を大後悔したワケ 【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

定年後に向けて保険の見直しを行う人は少なくありません。定年後も働き続ける人が増えているものの、現役時代と同等の収入をキープできるケースばかりではないでしょう。そのようななか、「保険料が安くなるから」といった理由だけで見直しを行うと、後々後悔することになるかもしれません。本記事ではAさんの事例とともに、定年前に保険を見直す際の注意点について、CFPの伊藤貴徳氏が解説します。

定年後に向けて保険を見直し

妻と二人暮らしのAさんは現在75歳。65歳で定年を迎え、その後も同じ会社に再雇用されて働き続けています。 定年を控えた65歳より少し前のある日、Aさんは今後の家計について気になります。 

「息子2人もちょうど独り立ちをするし、このタイミングで保険を見直したらどうだろうか?」 

というのも、Aさんは毎月支払っている保険料が気にかかっていました。この保険に加入したのは40歳のとき。新入社員のときからずっと加入していた保険が何度目かの更新となり、保険料が大きく上がってしまうことになり仰天。さらにこのまま続けていくとさらに保険料は上がり続けるということを知ったため、現在の保険に見直したという経緯がありました。 

〈現在加入中の生命保険〉

保険種類:終身保険 

死亡保障:1,500万円

保険料:およそ2万3,000円、終身払い 

65歳以降も働くうえ、公的年金も月に13万円程度受け取れるとはいえ、現役並みの給料とはいかない状況で、これまでと同じ保険料を支払い続けていけるか不安でした。それに、こんなに保障がなくてもいいんじゃないか?と気になっていたのです。 

Aさんは保険の見直しについて、加入中の保険会社へ連絡し相談してみることにしたのでした。 

保険会社からの提案 

「Aさんは終身保険にご加入されていますね。この保険はどういった経緯で入られたんですか?」 

そう口を開くのは、保険営業パーソンのBさん。青色のスーツに身を包んだ爽やかな男性です。 

Aさん「当時加入していた保険が更新で保険料が上がるということでこの保険にしたんです。この保険は一生涯続いて、更新も満期もないのでそっちのほうがいいんじゃないかなと」 

Bさん「そうだったんですね。確かに一生涯保障が続いて、しかも保険料は積立型になっていますね。保険料はこれからも同じ金額が続いていきますが、ご継続のほうは大丈夫そうですか?」 

Aさん「そう、それを聞きたかったんです。定年を控えて、今後も働くとはいえ保険料を支払い続けられるのかなと思っています。子供は巣立ちましたが、もし自分になにかあったら妻には保険を残しておきたいんですが……保険料と保障をどうしたものか困っています」 

Bさん「でしたら、保障額をAさんの思う必要額にメンテナンスしてみましょう。たとえば葬儀代やその他整理費で500万円くらいの保障が必要とすれば、500万円の定期保険に変えてあげることで保険料は3分の1くらいにすることができますよ。また、終身保険は積立型ですので、全額とはいきませんが解約をすることによりお金が戻ってきます」 

必要分の保障額に見直しすることによる効果 

現在加入中の保険と提案された保険…内容の変化

■保障内容

終身保険1,500万円→定期保険500万円(80歳満期) 

■保険料

約2万3,000円→約8,500円 

■解約したことによる返戻金

約500万円 

■保険の目的 

子供の教育費や生活費を目的とした保障額から、死後の整理費へと目的を変えることで必要保障額を変更 

終身保険を80歳満期の定期保険に切り替え

「これまでは、お子様の教育費やご家族の生活費のための保険としてご加入をされていたと思います。ご定年を控え、お子様も独り立ちされたいま、保障の目的を万が一の葬儀費用や、身の回りの整理費用に移されてはいかがでしょうか。そうすることで保険料もお安くでき、保険料の心配も減るように思います」 保険営業パーソンのBさんは真剣な表情です。 

「保険料が3分の1に減るのは嬉しい。それに保障期間も80歳まで。80歳ならもうすぐお迎えがくるころだし、十分だろう」とAさんは笑いました。

保険料が安くなるとのことで大喜び。それに、必要な保障を自分で決めることができたことで一安心しました。 Aさんは終身保険から、提案のあった定期保険に見直しをすることにしました。 

月日は流れ、見直しから10年ほど経った75歳のある日のことです。Aさんは体調を崩し、勤務中に倒れてしまいます。気づいたときには病院のベッドの上でした。 幸いなことに命に病状はありませんでしたが、入院をきっかけに加入中の保険が気になりはじめます。 

「そういえば、いま入っている生命保険は何歳まで保障があるんだっけ?」 

Aさんの誤算

「80歳満期って、あと5年じゃないか……」 

定期保険の保険証券には、保険期間80歳までと記載されていました。 

「そういえば、保険を見直したんだった……」保障は80歳まであれば十分だろうと思った、あのときの記憶が蘇ります。 

Aさんはいまから一生涯保障のある保険に変えられないだろうかと思い、終身保険のパンフレットを取り寄せ、見直しを考えますが、その保険料に驚きます。 

「保険料は3万4,000円!? いまから見直すとそんなに上がるのか! こんなことなら、65歳のときにもっと考えて見直しておけばよかった……」 

終身保険と定期保険

どちらも生命保険の一種ですが、仕組みに違いがあります。 

終身保険 

保険料は積立型(解約すると一定額返ってくる) で保障は一生涯。しかし、保険料は比較的高い。

定期保険 

保険料は掛け捨て型(解約しても返ってこない)で保障は一定期間で終了するが、保険料は比較的安い。 

一生涯保障の終身保険と満期のある定期保険。どちらにも特徴があり、これが正しいという絶対的な正解はありません。 Aさんの場合、今後の保険料負担を考え定期保険に見直しをした結果、あと5年で保険契約が終了してしまうという状態となってしまいました。 

その後、75歳で終身保険への見直しを考えましたが、75歳時点での保険料はこれまでの年齢と比べると高いものとなってしまったのです。 

保険の見直しの際に考えておくべきポイント 

もちろん、満期の短い保険が悪い、というわけではありません。 

たとえば、「向こう10年間は定期保険で保険料を抑えながら保障を得て、そのあいだに働きながら貯蓄をすることで保険期間が満了したあとは保険に頼らなくても大丈夫といった状態にしておく」という考え方のもとであれば上記の保険は有効でしょう。 

しかし「とりあえずキリよく10年間」や、「なんとなく80歳まで」といった保険の掛け方には注意が必要です。保険を掛ける理由や根拠をイメージしておくことが大切です。

見直しも大事だが…既存の保険を活用する方法も 

Aさんは65歳のときに終身保険を解約し、定期保険へ見直しをしていますが、終身保険を減額することで対応できたかもしれません。 減額とは、保障額を減らすことで保険料を下げる方法です。 

仮に終身保険の保障1,500万円を3分の1に減らすことで、保険料も3分の1となれば、定期保険とほぼ同じ保険料で一生涯の保障が続いた可能性もあります(減額の対応や保険料の下がる割合は、保険会社により変わるため確認が必要です)。

保険を新しくする際は見直しが一般的ですが、既存の保険を残しつつ有効活用する方法もあります。専門家の意見も聞きながらいろいろな選択肢を探すことも必要です。 

保険会社によって契約内容は異なる 

Aさんの定期保険の満期は80歳まででしたが、保険会社によっては80歳以降の満期を設定できる会社もあります。保障額に対する保険料や保険期間、付加できる特約などは保険会社によってさまざまなため、比較検討することが大切です。 

Aさんは悩んだ結果、満期の長い会社の定期保険に見直しを検討することにしました。現在は退院をしたてで加入が難しい状態のため、時間をおいて満期の長い定期保険への検討を行うとのことです。 

「保険を見直したときは、80歳の自分が想像できなかったけど、いざ時期が近づいてわかりました。先のことをもう少し考えて見直せばよかったと思っています」 そうAさんはそう話し、手術痕の傷口をさすりながら仕事へと向かって行きました。

もう1点注意すべきことも。死亡の保障であれば問題ない可能性も高いですが、直近で入院歴や手術歴、医師によってなんらかの診断を受けている場合、加入前の審査で保障になんらかの条件がついたり、希望の保障をつけられない可能性もあるため、注意が必要です。保険に加入するときには、加入する理由と根拠を明確に。加入の前には保障内容の希望がいつでも通るわけではないことを知っておきましょう。

伊藤貴徳 伊藤FPオフィス 代表

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