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『秘密のケンミンSHOW』で圧倒的に登場回数が多い都道府県は?北海道でも、沖縄県でもない、納得のワケ【齋藤孝が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月27日 8時0分

『秘密のケンミンSHOW』で圧倒的に登場回数が多い都道府県は?北海道でも、沖縄県でもない、納得のワケ【齋藤孝が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

昨今はSNSの普及により「他人との適当な距離の取り方がわからない」という人が増えているようです。人間関係をうまく構築しようと意識するあまり、ストレスが大きくなることも。本記事では明治大学文学部教授の齋藤孝氏が、心地よい人間関係を構築するコツを解説します。

「笑い」を意識して生き続ける大阪人

大阪は、お笑いの水準の高さで知られています。『秘密のケンミンSHOW』(日本テレビ系列)というご当地紹介番組で、圧倒的に登場回数が多い都道府県が大阪です。大阪の人は生まれてから大人になるまでの間に、自分がボケなのかツッコミなのかを決めるそうです。

「自分は最近までツッコミだと思っていたんだけれども、実はボケのほうが合っているということに気がついた」という出演者がいましたが、年齢がなんと70歳。生まれてから70年、自分はボケなのかツッコミなのかを意識しながら生き続けている、というのが大阪人なのです。

NHK Eテレの『天才テレビくんhello,』という子ども向け番組で、漫才コンビのかまいたちと私が、小学生にツッコミを教えるという企画がありました。

子どもたちには、見たままをつっこむという基本的なツッコミから、何か自分なりのツッコミどころを見つけてつっこむ、というやや高度なツッコミ、自分でボケておいて自分でつっこむノリツッコミ、つっこみそうでつっこまない、「ノリつっこまない」まで、様々なお笑いの技術、基本姿勢を踏まえて練習、成果を披露してもらいました。

大事なポイントとして強調したのは、相手や周囲の人を嫌な気持ちにさせないよう配慮することです。周囲を笑わせても、誰かを傷つけてしまう笑いはいけません。

大学の授業に「お笑い」を取り入れ、学生の「メタ認知力」がアップ

この経験によって、笑いの技術を学ぶことで、誰も傷つけずに人を笑わせ、嫌なことを言われても上手にツッコミを返し場を明るくできるようになることがわかりました

大学の授業の中でも「芸人になる」回を設け、世界史などの各教科に基づいて、学生にネタ作りをしてお笑い芸人になり切ってもらい、皆の前で全力で笑いを取りに行くという授業を行っています。

笑いを取りに行くことは勇気がいるため、全員メンタルが強くなり、学生たちも「就職活動もあれよりはぜんぜん辛くない」「度胸が付きました」と言ってくれます。ショートコント『論語』やショートコント『源氏物語』という課題は大変充実しました。笑いのネタを探すという視点で物事を見ることは、「嫌な状況を客観視して乗り越える」効果をもたらします。

大学の授業で、お笑いのネタを披露した学生は、アルバイト先でクレーマーにもやもやしていたそうですが、コント化することで、気分が晴れるという効果がありました。嫌なことに巻き込まれている状態を、演劇でも見るように客観視することで、ストレスは軽減しむしろ面白さを感じ、第三者的視点を持つことで、冷静に対応できるようにもなります。

自分の置かれている状況を客観視するもうひとりの自分の視点を持つことを、メタ認知といいます。こうした笑いには毒の要素も、少し必要です。毒が必要というと「誰も傷つけない笑い」と矛盾するように感じられるかもしれません。しかし毒は上手に使うと、マイナスの要素をプラスに変える効果をもたらすものです。

『ちびまる子ちゃん』の永沢君に学ぶ「心地よい毒」とは

毒の盛り方がピリピリと効いていて心地よいのは、『ちびまる子ちゃん』(集英社)で知られる漫画家のさくらももこさんの作品です。

『ちびまる子ちゃん』の永沢君がその象徴ですが、癖がある皮肉屋で、独特の世界観を持ったキャラクターとして人気で、スピンオフ作品も出ているほどです。風変わりでブラック、癖が強く、しかし全体としては温かい、なんともいえない魅力があり、さくらさんは『サザエさん』に匹敵する、日本の漫画文化の一翼を担いました。

さくらさんのユーモアに触れると、人間の品というものには、上品さやお行儀のよさよりももっと高い次元があるのだと思わされます。

幼い頃に難聴を患った演出家が辿り着いた、コミュニケーションの真髄

劇団や演出家の人が主催する一般向けのワークショップ(体験型の講座)も、他者との間の取り方や身体感覚について考えるのに、とても有意義です。

演出家の竹内敏晴さんによる「竹内レッスン」は、間の取り方やコミュニケーションの仕方について、気づきが得られる体験でした。

竹内さんは幼い時に難聴を患い、それが原因で言葉がなかなか習得できず、他者とのコミュニケーションに苦しみ、さまざまに模索する中で、言葉は体と切り離せず、体を含めてコミュニケーションを考えるべきだと気づきます。そして徐々に、他者とコミュニケーションする言葉と体を獲得していきます。

そうした自身の経験から独特なレッスンを考案した経緯が、著書『ことばが劈かれるとき』(ちくま文庫)に書かれています。

「劈く」という言葉は通常、「さく」とか「つんざく」と読みますが、竹内さんは「開く」でも「拓く」でもなく、「劈く」と書いて「ひらく」と読ませています。言葉が体の内側から湧き起こり、自分の殻をつんざくようにして相手に届くようになり、自分の心や体が他者に開かれるようになってきた竹内さんの体験から、そのような言葉の使い方をしているのです。

よいコミュニケーションを取るには「無意識」が重要

著書の中に「からだとの出会い」という章があり、竹内レッスンに大きな影響を与えた野口三千三さん(野口整体の野口晴哉さんとは、また別の野口さんです)の「野口体操」についての記述があり、竹内レッスンの基本をなす考え方について述べられています。

野口体操では、自分を流動体として感じ、体の外も内もともに動きながら、動きが変わると意識も変わる、と考えます。『原初生命体としての人間―野口体操の理論』(岩波現代文庫)に、野口体操の本質が書かれています。体も心も丸ごと一つという考え方です。頭が体をコントロールするという考え方とは異なるものです。

この「流動体としての私」が、竹内さんの体についての考え方の基本です。竹内さんは、無意識を重要視します。無意識は、意識と体を結びつけるもの。心と体を分けて考えるのではなく、無意識が動き始めるのを待つというのです。

他者とのコミュニケーションも、単に頭だけで働きかけようとしてもダメで、体の内側、つまり無意識のレベルから、その人に働きかけたいという欲求が生じ、声を発した時に、よいコミュニケーションが取れるのです。意識でコントロールせず、まず体の内なる変化を感じる。そして、空っぽな体として相手に向かえ、といいます。

齋藤 孝

明治大学文学部教授

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