坂本九さんは正しかった!「上を向いて歩く」と気分が晴れることが最新研究で明らかに【有名脳神経外科医の研究を齋藤孝がわかりやすく解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月28日 8時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
昨今はSNSの普及により「人との適当な距離の取り方がわからない」という人が増えているようです。他者の目を意識するあまり、ストレスが大きくなることも。明治大学文学部教授の齋藤孝氏は「他者との心地よい関係も、強くてしなやかな自我も、築くには身体感覚が重要」「精神の問題には、身体の問題が大きく影響している」と言います。脳神経外科医の松井孝嘉氏は著書『自立神経が整う 上を向くだけ健康法』(朝日新聞出版)にて、意識的に上を向く時間や回数を増やすだけで、気持ちも晴れ、健康になると提唱しており、精神と身体の繋がりを指摘しています。坂本九さんの代表曲『上を向いて歩こう』の医学的根拠が見つかったといえます。本記事では齋藤孝氏の著書『上手に距離を取る技術』(KADOKAWA)から一部抜粋し、いつでも心地よく他者と交流できるエネルギーの保ち方を解説します。
江戸時代、現代よりも高水準で行われていた寺子屋教育
江戸時代までの子どもの教育は、剣術と素読を中心としたシンプルなものでしたが、声に出して暗唱し、体を使うなど、身体性という点では優れた面がありました。
勝海舟の父親・勝小吉の自叙伝『夢酔独言』には、剣術と素読が男の子の教育の中心だと書かれています。論語を暗唱しながら、寺子屋から家に向かうのですが、こんな小学生は今では考えられません。
寺子屋のテキストであった『実語教』や『童子教』を見ると、漢文です。国語教育に限って言えば、当時のほうが今よりも水準は高かったと言わざるを得ません。
質の高い文章を音読し、暗唱して体にしみこませ、剣術によって腰と肚感覚を養う。身体感覚を重視した教育が、強くてしなやかな自我を作り、人間関係の良い距離感、間を身に付けることにつながったのです。
明治時代、学校の急速な普及により失われたもの
明治時代に入ると、初代文部大臣となった森有礼を中心にして学校制度が整備され、わずか2、3年の間に、日本全国に1万校から2万校もの学校ができ、近代的なカリキュラムにあっという間に移行しました。
日本人の恐ろしいまでの学校に対する適応力が発揮され、国民全体の学力が底上げされたことで、その後日本の国力が上がり、経済や生活状況は改善されていきます。
それ自体は良いことでしたが、そこで生じた弊害の最たるものは、身体性あるいは身体感覚が失われていったことです。他者との心地よい関係も、強くてしなやかな自我も、身体感覚の支えがあってこそ成り立つものです。身体感覚を取り戻すために、簡単にできることを探っていきましょう。
技術の進歩により、エネルギー縮小のスパイラルに陥っている現代人
エネルギーレベルは、生命体にとって大変に重要なファクターですが、人間のエネルギーレベルは歴史的に下がり続けています。
江戸時代には、築地から新宿まで天秤棒をかついでシジミを売り歩くという、今では考えられない運動量を、市井の人々がこなしていました。江戸から大阪、四国までも徒歩で行ったわけですから、運動量、運動能力が今の時代に比べ相当高いレベルだったことがうかがえます。
莫大なエネルギーをふつうに発散していた時代から、乗り物が普及し歩かなくてもいい時代、パソコンやスマホばかりいじり少ないエネルギーで生きていける時代になり、うつむき加減の姿勢で生活をしていると、首が前のめりになり、呼吸も浅く、エネルギーも衰え、健康も害しやすくなります。
医師の松井孝嘉先生は、スマホ首の対策として『自立神経が整う 上を向くだけ健康法』(朝日新聞出版)を提唱しています。松井先生によると、健康になるには首を上に上げるだけでいい、意識的に上を向く時間や回数を増やすだけで、気持ちも晴れ、健康になると提唱しているのです。
とてもシンプルですが、人間の本質をついていると思います。新型コロナウイルス下の自粛生活によって、私たちのエネルギーは縮小再生産状態になり、低下傾向が加速しました。万人が抱える精神の問題には、身体の問題が大きく影響しています。
身体をケアすることで、いつでも心地よく交流できるエネルギーが保てる
たとえば、温泉につかってふっと息を吐いたときは、だいたい機嫌が良くなるもので、緊張感や不機嫌を保つことのほうが難しいでしょう。適度に運動をし、身体感覚を持ち、お風呂でリラックスし、上機嫌を保てるような状態を心掛け、いつでも心地よく他者と交流できる身体状態を目指せば、エネルギーレベルは一定程度保つことができます。
生きるエネルギー、気のエネルギーは、私たちの内側から湧き出てくるものですが、他の人と交流したり、外に出て外の世界に触れたりすることで、さらに循環、発散が可能となります。
相手の人や外界から気のエネルギーを受け取り、それが刺激になって、また内側からエネルギーが湧き出てくるのです。私は仕事柄、人前で話をする機会がありますが、同じ内容でも何百人も前に講演する時の気の出方は、特別です。ステージに立てば、家にいるときよりもはるかに大きなエネルギーを放出します。
ライブ会場でエネルギーを発散しているミュージシャンやその観客の姿を思い浮かべると、理解できると思います。まさに気炎が上がり、何百何千、あるいは武道館やドーム球場のライブのように1万人単位の熱気が感じられ、場に、自然と気のエネルギーが充満するのです。
齋藤 孝 明治大学文学部教授
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