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尊敬する父の「65歳の誕生日&定年退職」を祝うため帰省した31歳長男…父の「退職金2,500万円」の使い道に愕然「父さん、目を覚まして」【CFPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月19日 11時15分

尊敬する父の「65歳の誕生日&定年退職」を祝うため帰省した31歳長男…父の「退職金2,500万円」の使い道に愕然「父さん、目を覚まして」【CFPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」(中央労働委員会)によると、令和4年度の定年退職者への平均退職金支給額は約1,878万円でした。退職金はまとまった金額が手元に入るタイミングですが、使い道を誤った結果、老後破産の危機に陥るケースも少なくありません。65歳で定年退職を迎えた父親とその息子の事例をもとに、詳しくみていきましょう。牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。

預貯金、住宅ローン、投資…退職金の使い道は人それぞれ

中央労働委員会の「令和5年退職金、年金及び定年制事情調査」によると、令和4年度の定年退職者への平均退職金支給額は、1,878万3,000円でした。また、男性の定年退職者の平均退職金支給額については、大卒は2,139万6,000円、高卒は2,019万9,000円となっています。

この退職金の使い道については、筆者のもとへ相談にくる人や、筆者の知り合いなどと話すと、おおむね下記に大別できます。

〈退職金の使い道について〉

50%~60%……預貯金

10%~20%ずつ……住宅・マイカーローン等の返済、自宅のリフォーム、投資、旅行や趣味、生活費 など

もっとも多い使い道は「預貯金」です。続いて住宅ローンの返済や自宅のリフォーム等。そして、まとまった資金が手に入ることから、退職金で投資をはじめる人も少なくありません。

ただし、現役時代に投資経験がないままいきなり退職金の多くを投資にあてた結果、老後の生活を台無しにしてしまうという悲劇が現実に起きているのです。

父の退職祝いのため数年ぶりに帰省した拓也さん

31歳の拓也さん(仮名)は、都内でひとり暮らしをする、年収600万円のサラリーマンです。先月、父親が「65歳の誕生日&定年退職」を迎えたため、遅ればせながら祝おうと数年ぶりに帰省しました。

拓也さんの父親は現在65歳、母親は63歳。2人の生活費は、これまでは父の給与と特別支給の老齢厚生年金(月43万5,000円)で賄ってきました。

この度父が定年退職したことにより、今後は夫婦で306万円(月25万5,000円)の年金が主な収入となります。2年後に母親が65歳を迎えると、347万円(月28万9,000円)に増える見込みですが、いずれにしても、定年退職後の収入は約5分の3に減少します。

もっとも、拓也さんの父親は約2,500万円の退職金を受け取っており、定年退職の時点での貯蓄は約3,000万円ほど。貯蓄を取り崩しながら生活する分にはなんの不自由もなさそうです。しかし……。

なんで突然…拓也さんが唖然とした父親の「告白」

拓也さんが帰省し、久しぶりに3人でささやかなパーティを楽しんでいました。

拓也さんはこれまで家族のために朝早くから夜遅くまで仕事を頑張ってくれていた父親を尊敬していました。そんな父親には老後ゆっくりしてほしいという思いから、なにげなく「定年後はどうするの? 母さんと旅行でも行くの?」と聞いてみました。すると、なぜか父親は言葉を濁します。

不審に思った拓也さんが「ん? どうしたの? なんか浮かない顔してるけど」と突っ込んで聞いてみても、父は黙ったきりです。

しかし夕食後、父は拓也さんと2人きりになったタイミングで、ぼそぼそとこう言いました。

「あのな……、退職金のことなんだけど。実は、投資にな……」

聞けば、退職金2,500万円のうち2,000万円を、たった1ヵ月間で投資に回したというのです

拓也さんは、上司や知り合いから話を聞き、新卒3年目のころからNISA(少額投資非課税制度)を使い、毎月株式や投資信託に投資を行ってきました。投資を始めて5年ほど経ち、「ようやく自分なりの資産形成の方法がわかってきたな」と感じていたところです。

一方で父は、投資の「と」の字も知らないはず。いきなり2,000万円もの大金を投資に回したことを知り、拓也さんは愕然。「ちょ、ちょっと待って、なんで突然……」と、絞り出すように言うことしかできませんでした。

プライドが邪魔をして…「約5%の評価損」が許せず、追加で1,000万円投資

投資を始めた理由を、父は次のように話しました。

退職する数ヵ月前から、証券会社の営業マンAさんが実家を訪問するようになったそうです。Aさんは拓也さんと年が近く、親近感が沸いた父は、退職金が入ったタイミングで投資を始めることにしたとのこと。

最初はAさんおすすめの個別株と投資信託、外国債を計1,000万円購入。しかしタイミングが悪く、たった数日で約5%の評価損となってしまいます。父親はその負けを取り戻すため、追加で投資。複雑な金融商品にも手を出しました。

真面目でプライドの高い父親は、息子と同世代の営業マンの説明に対して「よくわからない」とは言えなかったとのこと。あげく「損をしている」という状況が許せず、ムキになっているようです。

「父さん、目を覚ましてくれよ……」拓也さんは懇願します。

両親の今後の生活が心配になった拓也さんは、なんとか父親を説得。以前からの知り合いであるFPのもとへ、親子で相談に訪れました。

「無知×プライド」が引き起こした“悲劇”

父親が手を出した「投資内容」

筆者は、2人から一連の話を聞いたあと、父親が投資している金融商品のリストを見せてもらいました。

最初は約1,000万円を国内の大企業や新興企業の株式投資にあてていたほか、外国の株式や債券に連動する投資信託にも分散投資していたようです。

しかし、評価損が出たあとは、100万円単位で次々にさまざまな金融商品に手を出していきます。米ドル建て仕組債や、信託報酬が年率2.0%と高額な投資信託、素人はまず手を出さない商品にも……。「元本割れを補えるまでは」と買い増した結果、さらに約1,000万円を追加で投資費用にあてていたのでした。  

※ 信託報酬……投資信託を管理・運用するための費用。投資信託を保有しているあいだ、日割り計算した信託報酬が、投資信託の純資産額から毎日差し引かれている。

「投資はこりごり」の父親だったが…

その後も話を聞いていくと、拓也さんの両親は、これまで家計の支出額を詳細に把握していないとのこと。そこで、FPが簡易的に試算してみると、退職金のうち少なくとも1,000万円は、生活費として必要であったことが判明しました。

筆者が正直にそう伝えると、父親は「もう投資はこりごりだ」と1つの商品を除いて、すべて売却することを決断しました。

父親が投資した商品のなかには収益が出ていたものもありましたが、結果的には買付価格から手数料や信託報酬、為替差損などを除き、通算して約80万円の損失でした。

「投資信託」については、息子が生前贈与してもらうことに

“1つの商品を除いて”と書きましたが、残る1つの商品とは「投資信託」です。2000年初頭から運用が始まり、リーマンショックやコロナ禍の低迷期を耐えてきた、今後も成長が期待できると、FPと拓也さんが見込む商品です。

この投資信託について、拓也さんは父親から「相続時精算課税」を利用して、生前贈与してもらうことにしました。

相続時精算課税で贈与した場合、この投資信託の評価額は、贈与を受けたタイミングでの時価(約100万円)です。また、今後の分配金は拓也さんに支給されます。

“聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥”

今回のケースのように、初めての投資にもかかわらず、投資の仕組みや商品の内容を勉強せずに、営業マンの言うことを鵜呑みにして運用を始める人は意外と多いです。そのような人は、運用の初期段階で評価損が出ると、慌てて追加投資をしてしまう傾向にあります。

投資について学び、自身のリスク許容度について自覚できれば、多少相場が上下したところで戦略に大きな影響を与えるイベントが起きない限り、過度に慌てることはありません。

「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」です。自らの大切な資産を運用するため、まずは調べる、そして投資を始める“前”に専門家に話を聞くほうが安心ではないでしょうか。それが嫌なのであれば、わからないことには手を出さないことです。。

父親は「この歳になって、ものすごく高い授業料を払った気持ちです。完全に勉強不足でした」と反省した様子。

一方、拓也さんは「父親から生前贈与を受けた投資信託を含めて、今後も積立投資を続けます。父の“授業料”は僕が少しずつ取り戻したいです」と笑いながら話してくれました。

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

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