「みなし相続財産」とは?…「相続財産」との違いと、非課税枠を“最大限活用する方法”
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月4日 11時45分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
相続財産は知っているものの、「みなし相続財産」についてはよく知らないという人も多いでしょう。みなし相続財産とは、相続および遺贈に関連する民法上の相続財産ではなく、被相続人の死亡により受け取ることになる相続税法上の財産のことです。本稿では、みなし相続財産に該当する財産の種類や非課税枠の活用方法、その他留意点などについて解説します。
相続財産と何が違う?
みなし相続財産とは民法上の相続財産(例:不動産、預貯金、株式等)ではないものの、相続税を計算する際、相続財産とみなして課税する相続税法上の財産を指します。
被相続人が以前から所有していた財産ではなく、相続発生後に相続人が受け取る「死亡保険金」「死亡退職金」等がみなし相続財産に該当します。相続税の計算の際は、これらの財産も含めなければなりません。
みなし相続財産が相続税の課税対象となる理由は、課税の公平を図るためです。
例えば、被相続人が以前から生命保険会社と保険契約を締結し、死亡後、受取人(相続人)に渡る死亡保険金は民法上の相続財産の対象外です。しかし、それを理由に課税しないと「相続人の相続税負担を回避するため、全財産を死亡保険金にかえてしまおう」と考え、実行する人達が出てくる可能性もあります。
それでは課税の公平性は保てません。そのため、相続・遺贈と同様の経済効果をもたらす財産は、相続財産とみなして相続税を課税するのです。
みなし相続財産の種類
それではどんな財産がみなし相続財産になるのか、具体的に見ていきましょう。
・死亡保険金(生命保険金):被相続人が死亡保険(生命保険)を契約し、死亡の際に受取人へ下りる保険金
・定期金:被相続人が掛金を払い、受取人が相続人としている個人年金等
・死亡退職金:会社等に長年勤務してきた被相続人へ支給されるはずの退職金を、遺族等が受け取る制度
・弔慰金:基本的に非課税だが、その金額が業務上での死亡なら普通給与の3年分を超えた分、業務外での死亡なら普通給与の半年分を超えた分が、死亡退職金とみなされ課税対象
・一定期間の生前贈与(暦年贈与):被相続人が死亡前3年以内(2024年1月1日以降の暦年贈与は7年)の贈与
・債務の免除:遺言で免除された債務
・低額の譲受:遺言で相続人が本来の時価より、大幅に低い価格で取得した財産
その他、公共法人等から受ける利益や、信託銀行に遺産を預け管理・運用する信託受益権も、みなし相続財産となる可能性があります。
みなし相続財産の「非課税枠の範囲」と計算式
死亡保険金(生命保険金)が支払われたり、死亡退職金が支給されたりした場合、そのまま被相続人の遺産総額に加えられるわけではありません。
死亡保険金(生命保険金)・死亡退職金には「非課税枠」が用意され、この非課税枠から控除された金額だけが相続税の対象です。非課税枠は「500万円×法定相続人の数」で算定します。
例えば、死亡保険金1,600万円で法定相続人に配偶者と子1人がいるケースだと
500万円×法定相続人2人=非課税枠1,000万円
死亡退職金1,600万円-非課税枠1,000万円=600万円
こちらのケースでは、支払われた死亡保険金は600万円のみ相続財産に含まれます。
ただし、死亡保険金(生命保険金)の場合、相続人または受遺者(遺言で財産を受け取る人)以外が保険金を得ると、非課税枠の対象外になります。
みなし相続財産がある場合の相続税の“具体的な計算例”
ここでは、相続開始時にみなし相続財産があった場合、どのように相続税を算定するのか、具体例をあげて説明します。
みなし相続財産を含めた遺産、相続人
被相続人が2023年12月15日に死亡し、法定相続人には配偶者A、子B・Cの3人がいます。
被相続人には民法上の相続財産として不動産5,000万円、預金2,000万円があり、借金は無く、葬儀費用は200万円かかりました。
また、次のようなみなし財産が判明しています。
・死亡保険金(生命保険金):1,700万円(受取人は配偶者)
・被相続人の死亡前3年以内の生前贈与(暦年贈与):300万円
こちらの例を踏まえ、相続税課税対象額を計算していきます。
死亡保険金(生命保険金)の算定
まず死亡保険金(生命保険金)から非課税枠を控除します。
法定相続人は配偶者A、子B・Cの3人なので非課税枠は、
500万円×法定相続人3人=1,500万円
死亡保険金(生命保険金)1,700万円-非課税枠1,500万円=200万円
200万円と被相続人の死亡前3年以内の生前贈与分300万円を合わせ、民法上の相談財産に加算します。
民法上の相談財産に加算し計算
民法上の相談財産として不動産5,000万円および預金2,000万円があるので、
みなし相続財産500万円+不動産5,000万円+預金2,000万円=7,500万円
合算した7,500万円から葬儀費用200万円を控除します。
7,500万円-葬儀費用200万円=7,300万円
課税価格の合計額は7,300万円となりますが、更に相続税の基礎控除が利用できます。
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。
法定相続人は3人いるので、
3,000万円+600万円×法定相続人3人=4,800万円
7,300万円-基礎控除4,800万円=2,500万円
相続税課税対象額は2,500万円となります。
みなし相続財産の非課税枠を“最大限活用する方法”
非課税枠は法定相続人が多いほど有利
死亡保険金(生命保険金)・死亡退職金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」なので、法定相続人が多ければ、それだけ控除される金額は増えます。
ケースによっては、実際の保険金額や死亡退職金額より非課税枠が大きくなる可能性もあるでしょう。
例えば、死亡保険金1,600万円で法定相続人に配偶者と子3人がいるケースだと
500万円×法定相続人4人=非課税枠2,000万円
死亡保険金1,600万円-非課税枠2,000万円=-400万円
こちらのケースでは、死亡保険金を受け取っても非課税枠から差し引けば0円なので、民法上の相談財産に加算されません。
法定相続人を増やす方法がある
法定相続人が多くいればみなし相続財産の非課税枠や、相続税の基礎控除も大きくなります。
ただし、各ご家庭によっては法定相続人が1人ないし2人しかいないという場合もあります。このようなケースで法定相続人を増やしたいならば、養子縁組の活用を検討してみましょう。
被相続人が養子縁組をすれば、法定相続人はその分増加します。ただし、次のような制約もあります。
・被相続人に実子がいる→養子のうち1人まで法定相続人に含められる
・被相続人に実子がいない→養子のうち2人まで法定相続人に含められる
また、税務署から「相続税の減税のみを目的に養子縁組をした」とみなされた場合、法定相続人にカウントできない可能性もあるので注意しましょう。
みなし相続財産を扱う際の注意点
みなし相続財産は民法上の相続財産に含まれないため、遺産分割の対象外です。そのため、死亡保険金(生命保険金)の場合、受け取ってもらいたい相続人を受取人に指定すれば、受取人の固有の財産となります。
一方、その扱いについて他の相続人が不公平感を抱き、相続トラブルへ発展するリスクに注意しましょう。
また、みなし相続財産を取得する人が、たとえ相続を放棄したとしても当該財産は受け取れます。ただし、相続放棄した本人は法定相続人から外れるので、非課税枠の利用ができません。なお、相続放棄しなかった他の相続人であれば非課税枠を利用でき、法定相続人の人数に相続放棄をした人も含め計算します。
どんな財産がみなし相続財産となるかわからない、みなし相続財産を含めた相続税の計算で疑問点がある、という場合は、一度相続診断士や税理士、行政書士などに相談してみましょう。
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