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父が亡くなり「年金月7万円」で生活する75歳母、1年で骨と皮に…年収490万円、51歳長男がくだした「決死の決断」【FPの助言】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 8時15分

父が亡くなり「年金月7万円」で生活する75歳母、1年で骨と皮に…年収490万円、51歳長男がくだした「決死の決断」【FPの助言】

(※写真はイメージです/PIXTA)

現代人にとって「何歳まで働き続けるか?」は人生を左右する重大な問題です。特に、60歳以降の生活水準やライフスタイルに大きな影響を及ぼします。近年は年金が目減り傾向にあるなか、定年退職の原則年齢である60歳以降も働き続けるシニアが増加しています。仕事は賃金のみならず、達成感や社会と繋がる幸福感……多くのメリットをもたらしますが、それは働ける健康な身体や環境があってこそ。働くことができず、老後資金が底をついてしまった人はどうすればいいのでしょうか? 本記事では、波多FP事務所の代表ファイナンシャルプランナーである波多勇気氏が、老後お金に困らないための対応策と生活が苦しくなった際に利用できる制度について、自営業の夫を亡くした「おひとり様高齢者」の75歳女性を例えに、シミュレーションして解説します。

夫を亡くし「おひとり様高齢者」となった、75歳女性のハルコさん

今年75歳(1949年生まれ)を迎えるハルコさんは高校を卒業後、実家が家族経営する「はんこ屋さん」の手伝いをしていました。ハルコさんの父親は印鑑職人で受注制作を担当。ハルコさんは店頭に立って品出しをしたり、会計をしたり、帳簿をつけたりする販売や経理業務などが担当です。

その後21歳を迎え、商店街で「洋食屋さん」を営む5歳年上の料理人・ナツヲさんと結婚します。結婚と同時にハルコさんも「洋食屋さん」のお店に立ち、注文をとったり、会計をしたりなど、お店の運営に携わるように。

「はんこ屋さん」では主にレジの前に座ってましたが「洋食屋さん」では常に店内を動き回って料理を運んだり、絶えず声を上げてお客さんに挨拶をしたり、厨房にオーダーを通したりするため、結婚当初は毎日クタクタに。ですがすぐに慣れ、24歳のときに生まれた長男、27歳のときに生まれた次男の2人を、お店に立ち続けながら見事に育てあげました。

2人の子どもたちは大学を卒業後に独立し、ハルコさん夫婦は再び2人暮らしに。さらに時は流れ、ナツヲさんは65歳となり、年金受給が始まります。会社勤めの同級生たちは続々と仕事を引退していきますが、お客さんの笑顔を見るのが大好きなナツヲさんは「この腕が動く限りは、店を続けたい……」と、その後もフライパンを振りつづけます。

年金受給から9年。ナツヲ74歳、ハルコ69歳ついに洋食屋を閉業

時は流れ、ナツヲさん74歳、ハルコさん69歳を迎えたときーーついに高齢化を理由に店を畳むことを決意します。世帯収入は年金のみになりました。

自営業のナツヲさんとハルコさんがもらえるのは国民年金のみです。2人合わせて、13万5,616円で暮らし始めます。

国民年金満額 67,808円 × 2 = 13万5,616円

(令和6年4月分からの年金額、昭和31年・1956年4月1日以前生まれの方の金額を参考に計算)

※参考:令和6年4月分からの年金額等について|日本年金機構 

ところが1年前、ナツヲさんは胃がんを患い他界。79歳の生涯に幕を閉じました。遺族年金の受給者に該当しないハルコさんは自身の年金約6万5,000円と100万円の貯金で暮らすこととなります。

※参考:遺族年金|日本年金機構

持ち家があるとはいえ、ハルコさんは生活費の少なさに愕然とします。年金以外の収入を得るために仕事を探し始めますが、長年立ち仕事に従事してきたハルコさんは膝が弱く、料理を運び続けた腕の関節は痛み、アルバイトの面接に行くだけでクタクタです。

「気づいたら私ももう74歳、来年は立派な後期高齢者……。前みたいに働くことはもうできないわ……」と悟ります。

準備0のセカンドライフ…「現役時代に、資産形成をしていれば」

これまで真面目に仕事をして社会に価値を生み出し、2人の子どもを育てあげ、順風満帆な人生を送ってきたハルコさん。なぜ夫を亡くした後、窮地に立たされてしまったのでしょうか? ハルコさんが見落としていた点について解説します。

ハルコさんが見落としていた点をFPが解説

厚生年金に加入できない個人事業主世帯は、現役時代から計画的に老後資金の形成を行わないままセカンドライフに突入すると、苦しむケースが往々にしてあります。

個人事業主と配偶者は各種公的制度が制限されるうえ、受給できる年金は原則、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人がすべて加入する国民年金のみです。退職金についても自ら準備をしておかない限りはないので、注意が必要です。

(国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度を利用することで、退職・廃業時に共済金を受け取ることは可能です。)

会社員の人からすれば「現役時代に厚生年金をもらうための保険料を支払っていないのだから、当たり前じゃないか」と思う人もいるかもしれません。ですがハルコさんは、自分たちの親世代が年金だけで悠々自適に暮らす姿を見てきた世代でもあります。

「老後資金として年金とは別に、1人約2,000万円必要」というモデルケースを政府が発表し、世間を騒がせたのは2019年です。そのときハルコさんはすでに70歳、原則年金受給がすでに始まっている年齢です。

老後の資産形成に備えるという知識や概念のないハルコさん夫妻が、目先のお店の繁盛と2人の子どもたちの成長だけに目を向けて、エネルギーを注ぐのは至極当然です。

それではハルコさん夫妻は、どのような対策をするべきだったのでしょうか? たとえば投資信託を利用して積み立てた場合をシミュレーションしてみましょう。

【シミュレーション】ハルコさん夫妻がもし毎月3万円、積み立て投資信託をしていたら

厚生年金を支払っていない分、収入から毎月3万円を投資信託に回したとします。月3万円を30年間投資信託で積み立て、もし年利4%の利益を得られたとすると、2,063万円の資産をもって老後を迎えることができる計算になります。

※FV=将来価値

このとき元本は1,080万円です。

元本(月3万円 × 12ヵ月 × 30年間 = 1,080万円)

元本1,080万円を運用し、2,063万円になったので、980万円の運用利益を手にすることができます。もちろん投資にリスクはつきものですが、ここ10年間の日経平均株価に連動するインデックス投資信託の利回りについては9%を超えています。年利4%は堅実な見通しといえるのではないでしょうか。

「老後に備えて資産形成する」という意識や知識がなければ、そんな選択肢があることも知らず、無情にも月日は流れて行ってしまいます。利益を出せる投資は時間を味方にすることができます。

長男・アキヲが夏休みに帰省。そこには変わり果てた母の姿が…

ナツヲさんが亡くなって1年後、長男のアキヲさんがようやくとれた夏休みに実家へ帰省すると、そこには変わり果てた母の姿が……。1年前の面影はどこへやら、げっそりとやせこけ、骨と皮の状態に。

ハルコさんからは電話で「気楽におひとり様生活を満喫している」と聞いていたアキヲさん。母のすっかりこけてしまった頬と、腕時計が緩くなったか細い腕に、やりきれない気持ちでいっぱいです。

アキヲさんは帰宅すると家族に「この家で母と一緒に暮らせないか」と家族に相談します。東京の中小企業に勤めるアキヲさんの年収は490万円。住宅ローンを抱え、子ども2人を私立大学に通わせているアキヲさんファミリーがハルコさんを養っていくことは難しいように思います。

また、ハルコさんにそれとなく「俺たちと一緒に暮らすのはどうかな?」と電話で聞いてみたところ「気持ちはうれしいけど、昔なじみの友だちが近所にいる地元を離れたくない」と言います。悩んだ末にアキヲさんは生活保護を申請することにしました。

生活保護は、受給するためにはさまざまな要件があります。ハルコさんは持ち家という不動産資産を所有しているうえ、2人の息子は正規雇用で働いています。「無一文」とはいえないハルコさんは、生活保護を受給することができるのでしょうか。

ハルコさんは生活保護を受けられることに

アキヲさんが母の住む地域の福祉事務所に足を運び相談したところ、ハルコさんは生活保護を受給できることになりました。

生活保護制度とは

生活保護という制度は、日本国憲法第25条「すべての国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」に基づいてつくられた制度です。

「要件が厳しい」「資産はすべて手放すことが求められるのでは?」など、イメージが先行し、実践的なものとして認識されにくい傾向があります。ですが制度の基本を理解し、生活に困った際に福祉事務所に相談するのは有効です。

【生活保護】子どもが正規雇用で働いていても受給できる?

申請者が子と生計を共にしていた場合に関係します。生活保護の審査は世帯全体の収入が基準となるため、正規雇用の子と生計を共にしている場合、受給は難しいでしょう。

しかし今回のケースでは、アキヲさんを含む2人の子どもたちはすでに独立しており、世帯が別々です。申請者の世帯収入に子どもたちの給与が合算されることはありません。

【生活保護】持ち家を売却しなくても受給できる?

次なる懸念点は持ち家です。持ち家の評価額が一定以上に高い場合は別ですが、持ち家にはハルコさんが今現在住んでおり、売却は現実的ではないと判断されます。

実際に、生活保護を受給している161万7,578世帯のうち、4万6,887世帯が持ち家を所有しています。持ち家所有率は約3%です。割合はわずかではあるものの、多くの受給者が持ち家を認められています。ハルコさんも無事に持ち家を所有したまま受給できることとなりました。

(参考:厚生労働省の令和3年度年次調査)

笑顔が戻り、新しい人生をスタートさせたハルコさん

その後、生活保護費が振り込まれるようになると、ハルコさんの栄養状況は大幅に改善しました。少しずつ体重は増え、顔色は格段に明るくなりました。

活力を取り戻したハルコさんは、商店街の友だちの紹介で、保護猫の一時あずかりボランティアを始めます。保護猫の引き取りを希望する人とは保護団体の方と一緒にオンライン面談し、猫の特徴や注意点等を伝えます。社会との繋がりが増え、ハルコさんは以前より生き生きとしています。これからも人や動物と関わる喜びを感じながら、暮らしていきたいと思うハルコさんなのでした。

波多 勇気 波多FP事務所 代表ファイナンシャルプランナー

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