普通に生活していても「網膜剥離」に…いったいなぜ?〈視野欠損〉に気づけない“ゆでガエル”の怖さ【眼科医が解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 11時0分
「網膜剥離」という目の症状があることは大半の人が知っているでしょう。しかし、「日常生活を送っているだけで網膜剝離になることもある」という事実は意外と知られていません。本記事では、窪田氏の著書『近視は病気です』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、網膜剥離の知られざるリスクについてご紹介していきます。
衝撃を受けなくても起こる「網膜剥離」
「ボクシング選手が網膜剝離の診断を受け……」というニュースを耳にしたことがある人もいるかもしれません。殴られたとか、ボールが激しくぶつかったとか、頭をどこかにぶつけたとか、頭や目に強い衝撃を受けたときには、念のため眼科医に診てもらったほうがいいと思います。網膜剝離の危険があるからです。
網膜剝離も、ひどくなると失明につながる怖さがあります。日本では、一万人に一人が網膜剝離になっているといわれています。
網膜剝離はその名のとおり、網膜の最も外側にある層がはがれてしまう症状です。はがれた部分は、網膜の裏にある血管層である「脈絡膜」から酸素を受けとれなくなってしまいます。極端な言い方をすると、その部分の網膜の細胞が酸素不足で窒息してしまうのです。
ぜひ知っておいてほしいのは、頭や目に衝撃がなくても、日常生活を送っているだけで網膜剝離になる人が少なくないという事実です。実際、網膜剥離の発症ピークは20代と50代が最も多くなっています。20代は外傷性のものが多いですが、50代はそうではありません。
どういうことでしょうか。眼球の中は、硝子体と呼ばれるゼリー状のもので満たされており、前面では水晶体に、奥では網膜に接しています。赤ちゃんのときには100%ゼリー状ですが、加齢とともにどんどん液化していって、液体の部分ができてきます。そして、ゼリーと液体が半々くらいになったところで、ある日突然キュッと収縮して、網膜からスルッとはがれます[図表1]。
この半々くらいになるのがちょうど50~59歳くらいなのです。たいていは、何の問題もなくスルッとはがれます。ただ、硝子体を包んでいる後部硝子体という膜には粘着性があるため、たまたまどこかの網膜と強くくっついたままで硝子体がはがれると、網膜まで一緒に引っ張られて穴が開いてしまいます。
すると、その穴から網膜の裏へと液化した硝子体成分が入り込んでしまい、網膜剝離が起こります。たとえるなら、粘着力の強いシールをはがしたら壁紙も一緒にはがれてしまったようなものです。はがれた部分は無酸素・無栄養となり、光を感じなくなり、じわじわと視野が欠けていくのです。
壁紙と同じで、運悪く上のほうに穴が開いてはがれ始めると、重力の影響で急速に剝離部分が拡大してしまいます。下のほうに穴が開いたときは極端な場合、何年も拡大せず、網膜剝離が進行しないこともあります。
「ゆでガエル」の怖さ
50代の網膜剝離の怖さは、何か衝撃を受けたといったきっかけがないために、見えなくなっていくのに気づけないことです。
網膜の視神経乳頭と呼ばれる部分には、光を感じる細胞がありません。誰しも、見えていない「盲点」があるということです。ただ、日常生活で盲点を自覚することはまずありません。
同じように、視野が少しずつ減っていっても、「まあ、こんなものだったかな」と思ってしまいます。実は見えていなくても、先にも触れたように脳はみずから情報を補塡して、見えているかのように判断してしまうためです。
知り合いの眼科医が海外旅行に行ったとき、空港で入国審査を書こうとしたら書けなかったことがあるそうです。「手がおかしいのかと思ったら違った。あとで調べたら、実は軽い脳梗塞だったんだ」。それで片方が見えなくなっていたのです。眼科医ですら、視野欠損が起きていることに気づくのに何時間もかかったという例です。
じわじわと起こることには、人間の感覚は鈍感です。「ゆでガエル」の怖さがあります。ただし多くの網膜剝離の場合は、剝離した瞬間に血管を傷つけてしまったりして、見え方に違和感を生じることがあります。収縮したコラーゲンや出血などが、小さな虫が飛んでいるように見えたり、何か小さなゴミのようなものが見えたりする飛蚊症(ひぶんしょう)や、ピカッと光が見えたりする光視症(こうししょう)です。
こういう段階でいかにすぐに病院に行けるかが勝負です。私は普段から手術は推奨しないと言っていますが、網膜剝離は緊急手術の対象になる場合があります。
窪田 良 医師・医学博士
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