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しくじった!…資産総額1億円+生命保険金1,500万円、配偶者に生命保険「全乗せ」の相続対策が失敗した〈財産構成〉〈相続人〉のパターン【司法書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月9日 16時15分

しくじった!…資産総額1億円+生命保険金1,500万円、配偶者に生命保険「全乗せ」の相続対策が失敗した〈財産構成〉〈相続人〉のパターン【司法書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

万一自分が亡くなったときを考え、配偶者にまとまった生命保険金が支払われるよう準備している方は多いと思います。しかし、生命保険金の受取人を「配偶者だけ」にしていると、遺産の内容や家族の構成によっては、相続時に想定外の税金がかかってくる場合もあることをご存じでしょうか? 司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏が解説します。

相続対策としても活用されている「生命保険」

自分にもしものことがあっても、配偶者が生活に困らないようにまとまったお金を残すため、生命保険に加入している方は多いと思います。

生命保険金は相続財産ではなく受取人固有の財産であり、遺産分割協議の対象にはなりません。これを前提に、万一の場合、生命保険金を相続税の納税資金に充てられるという点が、生命保険金のメリットのひとつとしてあげられています。

相続財産の割合の多くが、土地や建物などの不動産で占められている場合、生命保険金から相続税を支払うことができるなら、とても大きなメリットになります。

ただし、生命保険金は民法上の相続財産ではありませんが、相続税法上の「みなし相続財産」という扱いになる点には注意が必要です。

つまり、生命保険金は相続財産ではないため分け合う必要はありませんが、相続財産とみなされ、金額によっては相続税を納める必要があるのです。

生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人の数」です。

たとえば、妻と子ども2人が相続人の場合、非課税枠は、

500万円 × 3 = 1,500万円

となります。

上記の例であれば、1,500万円までなら、生命保険金の受取人が妻となっていても、子ども2人が750万ずつ受け取ってもよいのです。

この場合、相続財産に計上する金額は0円となります。

財産構成・家族の状況によっては「落とし穴」も…

ここまで、生命保険金と税金の関係を確認する限り、配偶者に手厚く生命保険を残すことには、大きなメリットがあるように思えます。

ところが、相続財産の資産構成や、相続人の状況によっては、「生命保険金の受取人を配偶者だけ」にすることで、思わぬデメリットが生じるケースもあるため、要注意なのです。

さらに具体的に相続財産全体における相続税との関係をみていきましょう。

■「夫+妻+子ども2人」の4人家族の場合

夫が亡くなり、相続人は「妻・長男・長女」の3人で、相続財産が不動産など「総額1億円」と、「生命保険金1,500万円」というケースを考えてみましょう。

なお「生命保険金の全額は妻が受取人」「5,000万円の自宅は妻が相続」、「夫所有の2,500万円のA不動産・B不動産は、それぞれ長男長女が相続」したとします。

まず、ここでの相続人は妻・長男・長女の3人ですから、相続税を考える場合における基礎控除の計算は、

3,000万円 + ( 600万円 × 法定相続人の数〈3人〉)

となり、4,800万円が基礎控除額となります。

生命保険金は相続財産に計上されないため、相続財産から基礎控除を引くと、

1億円 - 4,800万円 = 5,200万円

となります。

この「5,200万円」に対して、相続税が発生します。

■配偶者は無税だが…2,500万円の不動産を相続した子は納税資金をどうする?

ただし「配偶者の税額の軽減」の制度を利用できるため、これによって1億6,000万円までは無税となります。したがって、5,000万円の自宅を取得した妻は、相続税の負担が0円となります。

しかし、不動産を取得した長男・長女は、一体どこから相続税の納税資金を捻出すればいいのでしょうか?

長男・長女が不動産を相続した場合、相続財産から納税資金は自身のお金から捻出する以外にありません。それがむずかしければ、家族のうちのだれかの預貯金から支払うことになるのが一般的です。

今回のケースでは、妻が生命保険1,500万円の受取人となっています。そのため、子ども2人が相続税を支払えない場合、妻が受け取った保険金から支払うことになるでしょう。

しかしそれでは、相続税の納税資金を母親が子どもたちに「贈与」したことになり、贈与税を申告しなければなりません。

税務所は、相続税がどのように支払われているのかを細かく確認しています。したがって、贈与されているのに申告しなかった場合、将来、妻が亡くなった「二次相続」の際に、指摘される恐れがあります。

生命保険、相続税の節税だけを考えると損することも!

配偶者である妻は「配偶者の税額軽減」の制度により、1億6,000万円までは相続税を支払う必要はありません。この制度を理解したうえで、生命保険金の受取人を、不動産を相続する長男・長女に割り当てておけば、このような「母親が子どもの納税資金を出したことによる、贈与税の発生」を回避できます。

不動産を相続した子どもたちは、生命保険金がなければ、相続税を相続財産以外から支払うことになりますが、生命保険金の受取人を子どもたちにしておけば、それを使って相続税を支払えるのです。

相続税の節税だけを考え、生命保険金の受取人を妻にしていると、場合によっては相続時に相続人が困る=「損してしまう」可能性があります。

相続人の条件や財産など、ケースごとに事情は異なりますが、相続税の支払いのために生命保険金を活用するのなら、金額や受取人を慎重に検討する必要があります。

今回取り上げたケースのように、相続財産のほとんどが不動産の場合、また、子どもに相続税を支払う預貯金がない場合は注意が必要です。

税に関する相談は専門家である税理士へ、相続登記などに関することは司法書士へ相談することをおすすめします。

加陽 麻里布 司法書士法人永田町事務所 代表司法書士

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