社用車がフェラーリ…税務調査官「社長の趣味ですよね?」→最終的に〈経費計上〉が認められた驚きの理由【税理士の助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月14日 11時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
経費とは、あくまで「事業に関係する支出」を指します。では、ベンツやポルシェ、フェラーリなど“明らかな高級車”を社用車として購入した場合、経費として認められるのでしょうか? 多賀谷会計事務所の税理士でCFPの宮路幸人氏が具体的な事例を交えながら、経費計上のポイントと税務調査での正しい対処法を解説します。
税務調査で「狙われやすい人・企業」の特徴
日本は「申告納税制度」を採用しており、納めるべき税金は自身で計算し、申告書を作成したうえで提出・納税することとなっています。
税務調査とは、この申告納税方式において、納税者が適正に申告しているかどうか税務署がチェックすることです。
ところで、税務調査というと「対象は法人や個人事業主だから事業をしていなければ関係がない」というイメージがあるかもしれません。しかし、それは間違いです。副業で利益を得た会社員や相続が発生して相続税を納めた人など、“一般の個人”であっても税務調査を受ける可能性は十分にあります。
また、たとえば次のような業種や状況にあてはまる場合、税務調査の対象になりやすい傾向にあります。
①売上が大きく伸びている、あるいは利益が大きく伸びている。
②原価率が大きく変動していたり、交際や外注費など特定の経費科目が大きく増加している。
③申告漏れの多い業種に該当している。 ⇒たとえば、バー・キャバクラ、風俗店、飲み屋、パチンコ屋、そのほか現金商売を行っている業種は、税務調査の対象になりやすいです。
④IT業、ネットビジネス、暗号資産などの新しい業種。あるいは、FX、海外取引や海外からの送金がある場合。
⑤消費費税の還付を受けた場合。 ⇒消費税の不正還付には税務署は目を光らせています。いっとき流行った「消費税還付スキーム」は、現在法改正により封じられています。
税務調査官の指摘は「すべて正しい」わけではない
税務調査にあたって注意していただきたいのは、調査官の指摘が必ずしも正しいとは限らないということです。そのため、税務調査を受ける側にも、税務に関する知識や判断力が求められます。したがって、税理士に立ち合いを依頼したほうが、税務調査はスムーズでしょう。
ただし、調査対象はあくまで納税者本人であることはお忘れなきよう。「すべて税理士に任せているので、私はよくわからない」という“丸投げスタイル”は危険です。
税務調査に立ち会う際には、細かいところはともかく、大きなお金の動きなどは自分で答えられるように準備しておきましょう。
フェラーリが「経費」として認められた驚きの理由
税務調査で経費として認められるのは、事業を運営するのにかかった支出です。つまり「経費か・経費でないか」の判断基準は「あくまで売上を上げるために必要なものであるかどうか」です。
このため、業種により経費になるもの、経費にならないものの判断が異なります。
一般的に、普通の企業が社用車としてポルシェやフェラーリを購入したら、税務調査で「なぜこんなに高い乗用車が必要なのですか? 同業他社でこのような車に乗っている人はいません。これは社長の個人的な趣味ですよね? 残念ですが、経費としては認められません」という指摘を受ける可能性が非常に高いです。
とはいえ、ポルシェやフェラーリが絶対に経費として認められないかというと、実はそうではありません。
たとえば、その企業が高級車のディーラーであるとか、顧客が富裕層であるため大衆車ではカッコがつかないなど、事業上の理由で高級車に乗る必要性があり、また仕事で使用していることが実際に証明できれば、経費での計上が可能です。
過去、フェラーリを会社の資産として購入し、減価償却として経費計上した法人が、税務調査で指摘されたケースがありました。しかし、「車検距離などの状況から代表者の通勤や業務の交通手段としていることがみとめられること」「個人で所有している他の車両(ロールスロイスなど)3台については経費計上していないこと」「フェラーリが社長の個人的趣味であっても、現実に会社の事業の用に使用されていることが推認できる以上は、税務署側の主張を採用することはできない」として、最終的にフェラーリは経費として認められたのでした。
また、たとえばYouTuberなどは、動画のテーマのための取材費用や衣装代、美容関連費用など、実際に必要であり、事業のために使ったことを説明できた場合、経費として認められます。
税務調査で指摘を受けやすい、経費計上の「グレーゾーン」
しかし経費のなかには判断に迷う「グレーゾーン」が存在します。税務調査では、税務上の解釈によって経費として認められるケースと認められないケースがあります。
税務調査で指摘を受けやすい経費として、たとえば以下のような例があげられます。
1.事業用の車の購入費や維持費、ガソリン代などの経費
その車を事業専用として使っている場合は経費計上できますが、個人的に使用している場合、その分は経費として認めることができません。
2.取引先との個人的な会食
実際に会社の接待などで会食を行った場合、「接待飲食費」として計上可能です。しかし、たとえ取引先の相手であっても、個人的な付き合いでたとえばキャバクラや風俗店などに行った場合、経費として落とすことはできません。
3.出張ついでの観光費用
事業の出張と兼ねて、プライベートで観光もした場合は、事業に直接関わっている部分については経費計上できますが、プライベートな部分については経費計上できません。
またお土産については、家族や友人のために購入したものについては経費にできませんが、従業員(全員)に購入した場合は「福利厚生費」として経費計上できます。
調査官を納得させる「税務調査」のコツ
税務調査に慣れている方はあまりいないため、「税務調査に伺います」と言われるとつい緊張してしまうと思いますが、落ち着いて対応すれば大丈夫です。
基本的にはあまり余計なことは言わず、聞かれたことに回答しましょう。すぐに思い出せないような場合は、「調べてのちほど回答します」と答えればOKです。
当日の対応よりも「日々の経理」のほうが重要
また、当日の対応ももちろん重要ですが、それ以上に日々の経理処理を適正に行うことが肝要です。売上については正しい時期に漏れなく計上することを心がけ、仕入れや経費において前期に比べて大きく変動している科目がある場合には、税務署も注目しますのであらかじめ説明できるようにしておきましょう。
また税務調査では、原始資料(契約書、レシート、発注書など)等の証拠を揃えて相手を納得させることが重要です。もし証拠を示すことができなければ、たとえあなたの主張が事実であっても税務調査では不利になってしまいます。
税務判断に迷うグレーゾーンの争いになると、是認・否認のどちらに転ぶこともありえます。
よくニュースなどで企業の申告漏れが報道されたとき、企業側が「税務調査の結果、見解の相違があったが、指摘のとおり申告と納税は済ませた」と発言していることがあります。あれは必ずしも企業が悪いとは言い切れず、今回みてきたようにまさに「見解の相違する部分があった」場合が少なくありません。
国税庁の発表では、法人税の税務調査に入られた場合、約4件に3件はなんらかの申告漏れが指摘されています。
税務調査は、調査官を納得させることが重要です。調査官によっては、悪いことをしているのではないか? という前提で調査を行う嫌味な人もいるかもしれませんが、感情的な対応とならないよう注意しましょう。
また、税務調査では「実質」と「形式」の両方を満たすことが重要です。実質とはその事実が正しいのかどうか、形式とは領収書がある、契約書があるなど、書類ベースがきちんとしているかということです。
取引が発生した際は、あとで説明できるようにその都度書類等を作成するようにしましょう。
宮路 幸人
多賀谷会計事務所
税理士/CFP
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