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80代の母死去、遺産総額4,100万円…「相続税ナシ」のはずが、納付期限直前〈税務署からのお尋ね〉が届いた驚きの理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月7日 11時45分

80代の母死去、遺産総額4,100万円…「相続税ナシ」のはずが、納付期限直前〈税務署からのお尋ね〉が届いた驚きの理由

(※写真はイメージです/PIXTA)

父親の相続時には不要だった相続税の納付。父のときより預貯金が大きく減った母親の相続なら、相続税の納付はなおさら不要…。そう考えて気楽に構えていたある女性のもとに、税務署から「お尋ね」の封書が届き、パニックに。納付期限が迫るなか、対応に追われますが…。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します。

老親を見送った50代独身女性〈税務署からのお尋ね〉に戦慄

今回の相談者は、50代会社員の鈴木さんです。8ヵ月前に亡くなった母親の相続の件で困ったことが起きていると、筆者の事務所に駆け込んでこられました。

「税務署から、こんな書類が送られてきて…」

鈴木さんが握りしめていたのは、税務署からの「相続税の申告等についてのご案内」の封筒、いわゆる〈税務署からのお尋ね〉でした。

鈴木さんは長女で、3歳年下の弟がいます。また、独身の鈴木さんは会社員として働きながら、ずっと両親と同居し、日常のこまごまとした面倒を見てきました。弟は結婚を機に別世帯となり、いまは妻と子ども2人、隣県に家を購入して生活をしています。

十数年前の父親の相続では、全財産が母親のものに

「父が亡くなったのは12年前ですが、そのとき母はまだ70代になったばかりでした。そのため、父の財産は母の老後を見越し、すべて母が相続したのです」

鈴木さんの父親が亡くなった当時は、相続税の基礎控除の改正前でした。当時は「5,000万円+相続人1人につき1,000万円」が基礎控除額で、8,000万円の財産までは相続税はかかりませんでした。

「父の財産は自宅と預貯金のみです。当時は、たしか自宅が3,500万円ぐらい、預金は2,000万円ぐらいでした。そのため、税務署には申告も、納税も不要だったのです」

鈴木さん家族は、母親に財産を移すため、遺産分割協議書を作成。無事に、不動産や預金の名義替えの手続きをすませたのでした。

母親が亡くなって8ヵ月後、税務署から届いた封書

「母が亡くなったあとに預金を確認したところ、残高は400万円ぐらい。生命保険の死亡保険金も500万円程度でしたので、今回も相続税関連の手続き不要だと思い、放置していました」

ところが、母親が亡くなってから8ヵ月を過ぎたとき、税務署から「相続税の申告等についてのご案内」という封書が送られてきたのです。

父親のときと同様「なにもしなくていい」と思い込んでいた鈴木さんは驚き、慌てて相談先を探し、筆者のところに駆け込んできた…という経緯でした。

税務署からのご案内の通知…なぜ届く? どういう内容?

では、税務署からの「相続税の申告等についてのご案内」は、どのような理由で届き、どのような内容となっているのでしょうか。

相続発生後、6~8ヵ月頃に送られてくる

相続発生後、6~8ヵ月過ぎた頃に、税務署から封書で送られてきます。

封筒には「相続税の申告要否検討表」という用紙が入っており、これに必要事項を書いて税務署に返送します。

場合によっては「相続税の確定申告書」が入っていることもあります。ちなみに鈴木さんの場合は、「相続税の確定申告書」の用紙が入っていました。

◆相続税の申告を促す目的で送られて来る

税務署から送られる「相続税の申告等についてのご案内」は、亡くなった人の財産の内容を確認して、相続税の申告を促す目的があるとされています。

人が亡くなったときは市区町村役場に死亡届を提出しますので、この情報は税務署にも通知されます(相続税法58条)。

よって、税務署は、この情報をもとに、亡くなった人について過去の確定申告書や固定資産課税台帳、さらに保険会社から提出される保険金の支払調書などから財産がどれぐらいあるかを調べます。

その結果、亡くなった人の全員に通知を出すのではなく、一定以上の財産があると見込まれる場合に「ご案内」が送られます。

◆過去に確定申告をしていた場合、送られてくることが多い

一定の収入があり、毎年の確定申告をしているような場合は、税務署も不動産や金融資産などの財産の内容を把握していることから、相続税がかかる財産だと認識しています。

鈴木さんの父親は定年退職後、これまでのキャリアで身につけた技術を生かして自営業を営み、確定申告をしていました。仕事場は自宅の1階の一部分で、父親が亡くなったあとは類似の仕事を営む人に賃貸し、母親は家賃収入を得ていました。そのため、母親もずっと確定申告をしてきたのです。

基礎控除内でも税務署への申告は可能

母親の財産は預金400万円、生命保険は非課税枠内の500万円です。基礎控除は4,200万円ですので、不動産評価が3,800万円を超える場合は相続税の申告が必要となります。

鈴木さんと弟との間では、遺産分割について、自宅は鈴木さんが相続し、預金と保険は2人で等分にするということで合意ができているといいます。

筆者の事務所の提携先の税理士に諸々の財産目録を作成してもらったところ、不動産評価は不整形などを考慮し、預金や金融資産をプラス、葬儀費用などをマイナスとして差し引くと、最終的に4,100万円の財産となりました。

これで基礎控除内であることが確認でき、相続税の申告も不要となりました。

しかし、鈴木さんは税務署から問い合わせが来たことを不安視しており、念のため相続税の申告書を作成して税務署に提出することを希望したため、それらも含めて税理士に引き受けてもらうことになりました。

この対応によって「ご案内」にあった質問に回答したこととなり、相続税の納税は不要であることの証明になるのです。

申告期限ぎりぎりに着地「今夜からぐっすり眠れます」

税務署から「相続税についてのご案内」が送られてきたのは、母親が亡くなってから8ヵ月過ぎ、つまり期限の2ヵ月前でした。そして、筆者のもとに相談に来られたのが期限の1ヵ月半前という、ギリギリのスケジュールです。

しかし、鈴木さんはそれまでに、戸籍関係の文書を取得し、銀行の残高証明書や不動産の固定資産税通知などをそろえていたので、作業はスムーズでした。

「一時は恐ろしくてたまりませんでしたが、これで安心しました。今夜からぐっすり眠れます」

鈴木さんはほっとした表情で、事務所をあとにされました。

※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

曽根 惠子 株式会社夢相続代表取締役 公認不動産コンサルティングマスター 相続対策専門士

◆相続対策専門士とは?◆

公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

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