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50代共働き夫婦、年金12万円の70代母、一時預かりから「老人ホーム入居決定」でようやく安堵も〈まさかの逆戻り〉となった深刻理由

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 11時15分

50代共働き夫婦、年金12万円の70代母、一時預かりから「老人ホーム入居決定」でようやく安堵も〈まさかの逆戻り〉となった深刻理由

(※写真はイメージです/PIXTA)

高齢者が終の棲家とする老人ホーム。しかし、費用面ばかり見て施設を選ぶと、本人に大きな不満が生じるばかりか、親族が大変な思いをすることもあるようだ。実情を見ていく。

舅が亡くなり、姑は資産を処分して娘の家へ

近年では、高齢になっても家族に介護されることなく、「老人ホーム」を終の棲家とする高齢者も増えてきた。背景には、核家族化、共働きの増加といった家庭の在り方の変化がある。

高度成長期から平成バブル時代までに多く見られた、夫の一馬力で家族全員を養うスタイルが激減し、「とにかく夫婦で稼がなければ生きていけない」厳しい状況の家庭が増えている以上、高齢の親の面倒を見たくても、時間的・金銭的に無理があるのだ。

50代の佐藤さんはため息をつく。「舅が亡くなったあと、同居したいと泣き叫ぶ70代後半の姑をなだめすかして、ようやく老人ホームに入ってもらったのですけれど…」。

佐藤さんと夫は結婚したときから共働きで、双方の両親と同居したことはなく、また、干渉されることもほとんどなかったという。しかし、数年前に舅が80歳目前で亡くなると、姑の態度は大きく変わった。

「隣の市に暮らす夫の両親は、干渉してこなかったというより、義妹の子どもたちに夢中で、こっちに注意が向かなかったのです」

佐藤さんの夫には妹がひとりいるが、夫の両親と近居で、しょっちゅう行き来をしているようだった。

「正直、孫差別もひどく、うちの2人の息子には全然お金をかけてもらっていません。もっとも、私の仕事が忙しくて付き合いもおろそかになりがちでしたので、仕方ないと思っていたのですが…」

舅姑とはあまり深い交流のないまま年月が過ぎ、佐藤さんの2人の息子たちも無事に大学を卒業して巣立って行った。息子たちの手が離れた佐藤さんは、定年退職までの数年間、自身の老後資金を作るべく、仕事に打ち込んでいた。

そのようななか、とくに健康不安もなかったはずの舅が心筋梗塞で急死してしまったのである。

「持病は聞いていなかったので、驚きました。でも、長患いするよりよかったのではないかと。残された姑は、仲のいい義妹家族と交流しつつ、のんびりしてもらえたら…と思っていたのです」

舅は普通のサラリーマンで、資産は横浜郊外の築古の自宅と預貯金のみ。相続も、姑の老後資金の確保のため、子どもたちは放棄することになった。

すると姑は、舅の死から1年たたないうちに自宅を売却。義妹家族と同居するため引っ越していった。佐藤さん夫婦は安堵したが、それで話は終わらなかった。

土曜日の夜に鳴ったインターフォン

「土曜日の夜、突然インターフォンが鳴るので出てみたら、姑と義妹が立っていたのです」

義妹家族と同居していた姑だったが、義妹の夫と大げんかして追い出されてしまったのだ。

「とりあえずその夜はうちに泊まってもらいましたが、私たちも仕事をしていますから、いつまでも2人を置いておくことはできませんので…」

しかし、日曜日の夜自宅に帰ったのは義妹だけ。義妹の夫が〈姑が戻るなら自分が出て行く〉と言い出したためだった。

姑は足腰が悪いわけでもなく、認知症の兆候もない。そのため、とりあえずは共働きの佐藤さんの家で〈一時預かり〉ということで過ごしてもらうことにした。

「でも、限界でした。家に帰ったら姑がいるんですよ。これまで親しく話したこともありませんから、とにかく気持ちが休まりません」

「それに、生活習慣がまったく合いません。2人だけになってから、食事も各自好きなものを勝手に食べています。洗濯も、お風呂のあと一気に回して乾燥までしておしまい。それをいちいち〈そんなのよくないわ〉と…。本当に苦痛で…」

しかし、先にキレたのは夫の方だった。

「いいからほっといてくれ!」

佐藤さん夫婦は、義妹夫婦を交えて相談し、「なるはや」で姑に老人ホームへ入居してもらうことになった。

老人ホーム入居にかかる費用とは?

老人ホーム入居にかかる費用として、まずは入居一時金が必要になる。老人ホームの家賃は「入居一時金方式」と「月払い方式」があり、前者は一定期間分の家賃をまとめて前払いし、後者は毎月定額の家賃を徴収される。前者を採用するホームのほうが多く、前払いの分、毎月かかる費用を抑えられるメリットもある。

まとまった費用が出せなければ入居は叶わない。そのため、月払い方式を用意している施設もあるが、一時金の費用はかからない分、毎月の費用は高くなる。

また入居一時金は、5〜15年程度の償却期間があるのが一般的で、償却期間が終わる前にホームを退去した場合は、未償却分の入居一時金を返還してもらうことができる。通常は初期償却分として、入居と同時に償却される分があり、この部分は基本的に戻ってこない。

そして、入居後に毎月支払う月額利用料だ。内訳はホームによって異なるが「家賃」「食費」「水道」「光熱費」「管理費」「介護費」といったのが主な項目だ。また、ホームによっては日用品代やおむつ代など、日常生活費として個人で支払う費用がプラスされることもある。費用に含まれるものと含まれないものを、しっかり確認しておくことが重要だ。

「姑の年金額は月12万円。自宅の売却金額を含めた預貯金は2,500万円程度。たくさん資料を集め、みんなで手分けして費用面の条件が合うところを探しまくりました」

ちなみに、厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況和』によると、厚生年金保険(第1号)の老齢給付の受給者の平均年金月額は、併給の老齢基礎年金を含めて14万4,982円。65歳以上の受給権者の平均は、男性が16万7,388円、女性が10万9,165円。また国民年金の老齢年金受給者の平均年金月額は5万6,428円となっている。元会社員であれば月17万円、手取りにすると月14万~15万円程度の年金が得られるようだ。

民間企業が運営する老人ホームの場合、月額費用の相場は20万~30万円と高額で、なかなか年金で賄えるところがない。ところが、奇跡的に予算内で収まる施設を発見。最初は泣いていやがった姑だったが、なんとか説得して納得してもらい、入所が決まった。

これで一安心と思ったのだが、現実は甘くなかった。

「帰ってきちゃった」とテヘペロ

土曜日の夜、佐藤さん夫婦が自宅でそれぞれくつろいでいると、インターフォンが鳴った。

思わず夫婦で顔を見合わせ、恐る恐るインターフォンのカメラを見ると、そこには姑が映っていた。

「ぺろりと舌を出して〈エヘッ、帰ってきちゃった〉と…。もう絶句です」

株式会社Speee/「ケアスル 介護」による『介護施設の転居に関するアンケート調査』によると、入居した施設が「1施設目」との回答が61.6%。逆にいうと、老人ホーム入居者の4割が転居をしていることになる。

転居経験者に聞いた理由の最多は「特養などに入所するため、一時的な入居だった」で33.3%だが、以降は「介護スタッフ・施設職員への不満」「介護サービスの質が低い」「医療・看護体制が不十分」「介護度や病気が重くなり退去を命じられた」といった不満が続く。

「食事がまずく、スタッフが不親切だというのです。金額面だけで選んだら、結局こんなことに…」

義妹夫婦のところには戻れないため、とりあえず佐藤さんの自宅にいてもらい、新しいホーム探しが続いている。

「本当に疲れました…」

だんだん遠慮がなくなってきた姑に、佐藤さん夫婦も疲弊しているようだ。

老人ホームを安さだけで選んでしまうと、思い描いていたサービスが受けられず、後悔の原因になることもある。費用だけでなく、入居後の生活もシッカリ考慮したうえで検討することが重要だといえる。

[参考資料]

株式会社Speee『介護施設の転居に関するアンケート調査』

厚生労働省『令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況和』

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