第二の人生はストレスさよなら!精神科医が教える老後ずぼら生活のポイント
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月11日 11時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
老後はどうすればストレスフリーで生活できるのでしょうか? 精神科医の保坂隆氏は、による著書『精神科医が教える ずぼら老後の知恵袋』の中で「老後はずぼらでいこう」と主張しています。一体それはどんな風にずぼらにすればいいのでしょうか? 具体的な方法を本書から紹介します。
掃除は時間をかけず省エネモードで
主婦にアンケートをして嫌いな家事を挙げてもらうと、1位になるのは、お風呂やトイレを含めた家の掃除です。その理由は、面倒なことや時間がかかること、キリがないことなどさまざまですが、高齢になるとそれに疲労感や肉体的な負担が加わって、ますます苦手になるという人が多いようです。
実際、子どもが育ち盛りの頃は家も汚れやすく、頻繁に掃除する必要がありますが、夫婦ふたりだけの暮らしともなれば、それほど汚れませんから家事負担はかなり軽減されるはずです。それでも高い場所に手を伸ばしたり、力を入れて汚れを落としたり、掃除自体の面倒さは変わらないので、歳をとった分だけ掃除に対するストレス感が大きくなるのかもしれません。
そこで、前より強く疲れを感じる年齢になったら、掃除ももう少し省エネの「プチずぼらモード」に切り替えてみてはどうでしょう。昔から「ホコリで死んだ人はいない」といわれますが、それほど神経質にならなければ、掃除も毎日ではなく、2、3日に一度で大丈夫。
むしろ、普段からまめに片づけをしたり、目立つゴミやホコリを粘着テープで取り除いたりしていれば、部屋もそれほど汚れた印象にはならないでしょう。
また、片付けをする順番によって、掃除の難易度も変わってきますから、そうした知恵を活かすのも方法です。家の片付けで大事なのは、片付けやすいものから難しいものへと順番にハードルを上げていくこと。苦手と感じる場所は人それぞれなので一概に「ここから順に」とはいえませんが、自分が手を付けやすいと思うところなら、どこからでもOKです。
ただし、効率のいい掃除のコツは、「上から下」「奥から手前」「外側から内側」のルールを守るのが基本です。ハウスダストが気になる人は、ホコリを立てずに掃除をすることを念頭に、天井や壁の上の方、照明器具、家具の上などのホコリをハンディモップなどで取り、最後に床の掃除をするようにしましょう。
さらに、掃除機の排気口からの風でホコリが巻き上がることもあるので、ホース部分を長く接続して、本体を野外に出して使えば安心です。できるだけリズムをつけてスピーディにやるのがお掃除短縮化のコツですが、実は掃除が嫌になる最大の原因は、途中でテンションが下がるからなのです。
だから、掃除時間をできるだけ短くして一気にやるのが最大のポイント。人が掃除に集中できるのは、せいぜい1時間くらいのもので、あまり長い時間がかかると、ストレスでどんどん元気がなくなってしまいます。
それより、疲れたと思ったら、「今日はもうやめ!」とずぼら宣言をして、掃除を放棄してみましょう。やめたところで誰も困るわけではありませんから、「ホコリで死んだ人はいないわよ」と、ニッコリ微笑む余裕があればいいのです。
お惣菜に一工夫をプラスで食卓に彩りを
「スーパーで煮物や和え物などのお惣菜を見ると、つい買いたくなるんだけど、いかにも手抜きしているみたいで後ろめたくて。結局、材料を買って料理するのよね」「わかる、わかる。夫婦二人だけだから、たくさん作っても余るし、お惣菜を買う方が経済的なんだけど、なんとなく抵抗があるのよね」
年配の女性の間では、こんな会話が交わされることが多いようですが、これらの言葉には慎み深く勤勉な日本女性のメンタリティがよく表れています。手作りの料理は温かい家庭の基本。出来合いの惣菜を食卓に並べるのは主婦として恥ずかしい。こうした考えを持つのは、昔から受け継いだ「良妻賢母」のイメージを今も持ち続けているためかもしれませんが、還暦を迎える頃になれば、そろそろそんな建前を返上してもいいでしょう。
夫婦二人だけ、あるいは自分一人の生活で、毎日、料理にそれほど多くの時間と手間をかけるのは、少しもったいないような気がします。ただし、無類の料理好きで、一日中台所に立っていても平気という人は別です。そういう人にとって、料理は趣味の領域に入りますから、思う存分楽しんでください。
でも、毎食の料理をするのに疲れ、負担に感じるようなら、余計な責任感は忘れて、気軽にお惣菜をわが家のメニューに取り入れてしまいましょう。ただし、スーパーで買ったまま発泡スチロールのお皿を食卓に並べるのでは、いかにも「手抜き」に見えて、ちょっと侘びしい印象になってしまいます。
そこで、せめて小皿に体裁よく盛りつけるなどして、美味しそうな演出をしたいもの。ほんのちょっとの手をかけるだけで、スーパーのお惣菜もワンランク上の料理に変身します。私の知り合いの女性は、「最近は商店街のお惣菜をよく利用するの。手間がかからなくてとっても便利よ」と話していましたが、ユニークなのはそのコーディネート術です。
彼女はベランダのミニガーデンを利用して季節の草花やハーブを育て、それをお料理に添えているのです。そうすると、出来合いのお惣菜が上品な懐石料理風に大変身。とても手抜きとは思えない一品に仕上がるのですから、これは真似てみる価値がありそうですね。
草花だけでなく季節感のある器や箸置きなど、食卓を飾る演出法は、アイデア次第でたくさんあります。スーパーのお惣菜も一工夫すれば、たちまち気の利いた一品になるのですから、ここはプチずぼらのテクニックを発揮するいいチャンスです。
ハレの日の食事も手抜きをしていい
日本には昔から「ハレ」の日と「ケ」の日があって、これらはハッキリ区別されていました。今はあまり聞かれなくなりましたが、普段の生活を「ケ」の日、祭礼や年中行事などを行う日を「ハレ」の日と呼んで、日常と非日常を分けて考えていたのです。
食糧の乏しかった時代、「ケ」の日に頂くのは慎ましく質素な食事で、ご馳走は「ハレ」の日だけに許されるスペシャルメニューだったようです。それに比べて現代は、まさに「飽食の時代」といわれ、お寿司や天ぷら、すき焼き、ステーキなど、どんなご馳走もかなり手軽に食べられます。
すっかり贅沢な食生活に慣れた私たちですが、年齢を重ねるごとに食欲は衰え、ボリュームたっぷりの食事にもあまり魅力を感じなくなってきたのではないでしょうか。それでも、メリハリの乏しくなりがちな老後の生活で、食生活の持つ意味は大きいもの。季節感のある食事やイベントに合わせた料理を楽しむことで、生活の充実度も変わってきます。
たまの「ハレ」の日には思いきってご馳走を堪能するといったライフスタイルは、マンネリになりやすいシニアの生活に格好のアクセントをつけてくれます。ただ、子どもが小さい頃と違って、やたらに行事料理に時間をかけるのは負担が大きすぎます。無理をしてまでたくさんの料理を作る習慣は、定年世代になったらもう卒業した方がいいでしょう。
そこで、おすすめしたいのが「ハレ」の日の外食やお取り寄せです。よく外食をする人もいますが、シニア世帯の外食頻度は決して多くはありません。今でも「外食は贅沢」「外食は不経済」といった先入観があるせいか、または外出を面倒に感じるのか、どうしても家庭での食事が多くなるのでしょう。
でも、冷静に考えてみると、実は外食の方が合理的で経済的という分析もあるのです。たとえば、料理に必要な材料費や光熱費、食材のムダや調理の手間などをトータルで考えると、家での食事が経済的とは言いきれませんし、ましてや手間も費用もかかる「ハレ」の日の食事ならなおさらです。
実際に調理をする人なら、食後の食器洗いを考えただけでも、外食のメリットはよくおわかりでしょう。それなら、「ハレ」の日に限っては、純粋に食事だけを満喫できる外食の方がずっとリーズナブルではないでしょうか。
さて、「ハレ」の日の代表格といえば、お正月のおせち料理ですね。家族や親戚などが集まり、その家庭に伝わる料理を囲むという風習はすばらしいものですが、おせち作りにはかなりの時間と手間がかかります。
そこで最近は、完成品をお取り寄せする家庭が多くなり、少人数用のミニおせちから、老舗の料亭が手がける豪華なお重まで、さまざまなおせちが販売されているそうです。要は、料理にかける時間を余裕の時間にするわけです。このように、誰もが負担を感じない「プチずぼら食生活」こそが理想といえるのではないでしょうか。
保坂隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
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