老後は無理して嫌な人とつきあう必要はない!精神科医が教えるプチずぼら人間関係とは?
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 11時0分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
老後はどんな人間関係を築くといいのでしょうか? 精神科医の保坂隆氏は、による著書『精神科医が教える ずぼら老後の知恵袋』の中で「プチずぼら」を推奨しています。一体それはどんなことをすればいいのでしょうか? 具体的な方法を本書から紹介します。
60歳を過ぎたら人間関係も気楽に
知り合いの女性に、「60歳を過ぎてよかったと思うことは何ですか?」と尋ねたら、屈託のない笑顔でこう話してくれました。「そりゃあもう、わずらわしい人づきあいをしなくてよくなったことですよ。この歳になると、お愛想笑いをしてまでも人とつきあうのが面倒になってね。今は人間関係も省エネですませてます」
彼女によれば、盆暮れの贈り物や山のような年賀状に悩まされることがなくなっただけでも、定年後の大きな収穫だったとか。このように仕事をリタイアした人は、それまで縛られてきたしがらみから解放されて、「ああ身軽になった」と喜んでおられるのですが、これは主に女性の場合で、男性で役職に就かれていた人はまた別の反応を見せます。
女性が季節の贈答品選びから解放されて喜ぶ半面、男性はお中元やお歳暮が届かなくなったことで自分の存在感がなくなったように感じて、ひどく寂しい思いをすることがあります。これは男性の高すぎるプライドが原因でしょうが、はっきり言って、不要なプライドは円満なシニアライフの妨げになります。還暦には干支が一巡して生まれ直すのですから、それと同時に心もリフレッシュ。素直な自分に戻ってみましょう。
そうして世間体や損得を考えずに自分の人間関係を見直してみれば、おのずとつきあいたい人とそうでない人が見えてくるはずです。やっとつかんだ自由な老後の人生で、無理をしてまで嫌な人とつきあう必要はないでしょう。八方美人はもうやめて、苦手な人とは距離を置けばいいのです。
その代わり、本当に心を許せる人とはより深く密度の濃いおつきあいをすれば、生活の充実度も増します。60歳を過ぎて大切なのは、友だちの数ではなく質です。選りすぐった友人と正直につきあえる老後こそ、値千金といえるでしょう。
余計な義理は「三欠く法」で大丈夫
夏目漱石は『吾輩は猫である』の中で、合理的な人づきあいについて「義理をかく、人情をかく、恥をかくの『三欠く』を実行すべし」と書いていますが、この言葉は中高年にこそふさわしい名言といえます。本来は無駄な出費を控えて節約しようという意図でいわれたフレーズですが、むしろ老後の人間関係に当てはめる方がぴったりきます。
やっと社会的な制約から離れて過ごせるようになったのですから、無理をしてまで人づきあいをする必要はないと思うのです。社交的な性格で大勢の人と接するのが大好きという人なら、つきあいを避ける理由はありませんが、シンプルに生きたい中高年にとっては、建前だけのつきあいは負担に思えるでしょう。
もちろん、法事やお葬式のようになかなか避けて通れない場もありますが、60歳を過ぎた頃からは100%はおつきあいをしなくてもいいのではないでしょうか。当主として家を継いだ場合などを除けば、親戚づき合いや冠婚葬祭も都合によってパスするケースも出てくるでしょう。
ある程度の年齢になると、友人や親戚を見送る機会も増えますが、ご葬儀のすべてに参列してお香典を包んでいたのでは、経済的負担も大きくなってしまいます。だから葬儀の場合、どこかで境界線を引いて、参加不参加を決めなければなりません。
その基準はあくまでも自分の気持ちですから、どうしてもお見送りがしたいと思ったら、どんな遠方でも出向くのが自然です。しかし、よほど縁の深い人の場合を除いては、弔電やお便りでお悔やみを申し上げるだけでも失礼には当たらないでしょう。
また、これは冠婚葬祭に招く側の手間や負担を軽くするという意味もありますから、単なる不義理とはいえません。「大変なのはお互いさま」という考え方もありますが、若い頃はそれでよくても、歳をとると、招く側の負担も大きくなります。
出向く方も迎える方も同様なのですから、お互いが「気持ちだけ」で簡素にすませても文句は出ないでしょう。ただし、足を運ばなかったのなら、丁寧なお便りを差し上げるようにしましょう。セレモニーへの不参加を電話やメールですませたのでは、ちょっと軽すぎるかもしれません。
そして、義理を廃して人間関係を絞った分、本当に大切な人とのおつきあいについては密度を高めていけばいいのです。老後のつきあいは「義理堅く」ではなく、「自分の心に正直に」。漱石の言う「三欠く法」を見習ってみてはどうでしょうか。
ギリギリ近所づき合いはキープをしよう
大都市ばかりでなく、地方の都市でも近所との関係は希薄になっているようです。「面倒だから」と、近所づきあいを放棄している人もいます。ただ、昔から「遠くの親戚より、近くの他人」というように、いざというときに頼りになるのは地域社会の住人です。
普段は地元のつきあいを無視していて、困ったときだけ助けてもらおうというのは、ちょっと虫のいい話でしょう。親密な関係を築くことはありませんが、最低限のコミュニケーションは必要です。たとえば、一人暮らしの高齢者が大地震で自宅に閉じ込められたとしても、親しいご近所さんが誰もいなければ、その安否を心配して家を訪ねてくれる人も、行動を共にしてくれる人もいないわけです。
別に災害に備えて近所とつきあえというわけではありませんが、最初からつきあいを拒否せず、茶飲み友だち程度の仲間をある程度はつくっておくといいでしょう。もし、定年まで働くのに精一杯で、近所づきあいをする時間がなかったというなら、地元の町内会や自治会に参加してみるのもよい方法です。
どの地域にも町内会や自治会のような地域住民のための組織がありますから、とりあえず会員になって、地域の行事やイベントに参加してみてはどうでしょうか。はじめは馴染めなくても、何度か顔を合わせているうちに気心も知れ、打ち解けてくるはずです。
なかには「友だち選びは慎重にしないと」と身構える人もいるでしょうが、そこはちょっとずぼらに、「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」くらいに考えて、いろいろな人に気軽にアプローチすればいいのです。そうすれば、意外にコミュニケーションの道は開けるものです。
保坂隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長
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