もう限界だ…現役時代は〈年収1,500万円超え〉の元大手メーカー部長、勝ち組サラリーマンの代表が「老人ホーム入所初日」に涙のワケ
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月7日 5時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
昨今、高齢者の住まいの選択肢として人気が高まる「老人ホーム」。施設によって入所条件はさまざまですが、老人ホームを検討する理由は、自宅での介護が難しくなったというケースや、家事が面倒というケースまでさまざま。不本意ながら老人ホームに入所することになったという人もいれば、その逆のパターンも。みていきましょう。
老人ホーム入所初日に涙した72歳男性
サ高住で働く50代女性。サ高住というと、基本的に住宅単体では介護サービスはついていないため健康な高齢者が入居するイメージですが、女性が働く施設は介護対応可能。また原則、サ高住では食事の提供はありませんが、その施設には調理場があり食事の提供サービスも。至れり尽くせりのサービスもあるため、自由に暮らしたい人から、サービスが目当ての人、さらには介護を必要とする人まで、入居者層は実に幅広いといいます。
そんな施設で、先日入所してきた72歳の男性。施設での初めの食事の際にポロポロと涙を流したとか。「ごはん、美味しくないですか?」と尋ねると「いえっ、とても美味しいです」とひと言。そのあとも、「美味しい」といいながら、涙していたといいます。
食事が終わり、落ち着いたところで話をしていると、「嬉しかったんです」と男性はポツリ。
現役時代、大手メーカーに勤めていたという男性。独身だったこともあり、転勤を頼まれることが多く、「だいたい3~5年ごとくらいに赴任先が変わっていた」と男性。「また数年後にはここからいなくなるから」と、同僚とは表面的な付き合いしかなかったといいます。ただ仕事に真面目な姿勢は社内でも評価され、最終的には部長職まで昇進。年収は1,500万円を超え、まさにサラリーマンの勝ち組代表といえるほどでした。
アート引越センターが総務・人事など転勤に関わる業務に携わっている会社員に対して行った調査によると、「転勤者を選ぶ際に家族構成は影響しているか?」の問いに対して、71.7%が「影響している」と回答。60.2%が「既婚者よりも未婚者のほうが優先されやすい」と回答し、また37.2%が「子どもがいない人のほうが優先されやすい」と回答しました。
数年ごとに赴任先が変わり、表面的な人間関係しか築くことができなかったという男性。その影響は定年退職後にも。
内閣府『令和3年度高齢者の日常生活・地域社会への参加に関する調査』によると、「昔の職場の同僚との付き合い」については、「付き合っている人がいる(「よく付き合っている人がいる」「たまに付き合っている人がいる」の合計)」が61.5%に対して、「付き合っている人がいない」が33.5%でした。赴任先が数年ごとに変わり、表面的な人間関係しか築けなかったという男性は、この3割のほうだったのでしょう。
サラリーマンではなくなったときに孤立する人たち
60歳で定年を迎えた後は、雇用延長で65歳まで働き、そのあとは関連会社で再就職。社内規定で70歳で退職となったそうです。
大手企業の部長職を勤め、最高年収は1,500万円。定年後も70歳までサラリーマンを続行。独身で派手な趣味もなし。そのため、十分すぎるお金だけはありました。しかし大学を卒業後、仕事に邁進していたため学生時代の友人とは疎遠となり、サラリーマン時代に親しくなった同僚もなし。70代でサラリーマンでなくなったときに、男性はいかに孤独であるかを知ったといいます。
内閣府『こども・若者の意識と生活に関する調査 (令和4年度)』によると、40~69歳の外出頻度が低い回答者に対して「あなたの外出状況が現在の状態になったもっとも大きな理由は何ですか」と尋ねたところ、「退職したこと」が最も多く32.3%。男女で比べると、男性のほうが退職を理由に選ぶ割合が多く(38.6%)、また年齢があがるほど同様の傾向がみられます(「65~69歳」で46.3%)。会社という繋がりがなくなると、社会との接点がなくなり、引きこもり気味になってしまう……よくあるパターンのようです。
男性の場合も、70歳で仕事を完全に辞めてからは、ほとんど外にも出ない毎日が続いたそうです。
――ひとりでも平気ならいいのですが、わたしは「寂しい」と思うタイプの人間のようで
「こんな生活も限界だ……」と感じた男性は、この状況を打破しようと老人ホームへの入所を決意したといいます。そして入所初日。何年振りかに人と食事をする、まともに話すということがあまりにも嬉しかった……というのが涙の理由だったのです。
高齢化が進むなか、社会から孤立する高齢者が問題になっていますが、老人ホームがひとつの解決策になるかもしれません。
[参照]
アート引越センター株式会社/0123引越文化研究所『転勤実態アンケート2023』
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