インフレでお金の価値が下がってもどこ吹く風…お金持ちがダメージを受けない理由<br /><br />
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 10時15分
![インフレでお金の価値が下がってもどこ吹く風…お金持ちがダメージを受けない理由<br /><br />](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61760_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
長く続いていたデフレから脱しインフレへと変化している昨今ですが、物価は上がっているのにお給料は上がらないのはなぜ? と疑問に思っている人も多いのでは? 株式会社シナジーブレインの代表取締役である安田修氏による著書『中学3年生の息子に贈る、学校では教わらない「お金の真実」』(Gakken)から一部抜粋して、お金の仕組みについて解説します。
インフレでも金持ちがダメージを受けないのはなぜ?
お金に関して、大切なことを一つ伝えよう。それは「お金は、長く持っていると少しずつ価値が下がる」ということ。
これについては、まず「インフレ」「デフレ」という言葉の意味を伝えないといけない。どちらもよくニュースで見て、何となくわかるようなわからないような、不思議な感覚になる言葉だね。
まずはインフレ。これはインフレーションの略で、「世の中のモノやサービスの価格(物価)が全体的に継続して上昇すること」。デフレはその反対で、価格が継続して下がること。これからの人生、わからない言葉があったら辞書を引くこと。とりあえずスマホでググるだけでもよい。AIに聞いてもまあ概ね、大丈夫だろう。
今まで何十年もの間、世界的にデフレが続いていたんだ。だから僕は、大人になってから物価が下がることしか経験してこなかった。パソコンもスマホも車も、待てば待つだけ安くなった。こういうときは、お金を現実でもっていてもよいし、銀行に預けても損はしない。景気が悪かったら株式や不動産の価値もそれほど上がらないから、別にどんな形で持っていても構わないわけ。
でもその世界の「ルール」みたいなものが、ここ数年で大きく変わった。完全にインフレの時代に突入したんだ。ママがよく「食費が高くなった」とか、嘆いているだろう。あれが物価の上昇だ。これにはいくつかの原因があるんだけど、ごく単純にいうとお金を大量に印刷した結果として、お金の価値が下がっているということ。
モノの価格というのは「需要と供給」で決まる。それがほしいという人が多ければ価値が上がるし、いらないと思われたら価値は下がる。手に入りにくいものは価値が上がり、たくさんあるものは価値が下がる。自由にモノを売り買いできる市場(いちば)があって、たかくても買いたいという人が多ければ価値が上がるし、誰も買いたがらないものは安くなる。安ければ買ってもよいという人が現れるからね。このように、あらゆる価格は売り手と買い手の網引き、市場(マーケット)で決まる。
だからお金の量が増えれば、お金の価値は下がるんだ。ほしがる人の数が同じでも、供給が増えると手に入りやすくなるからね。物価が上がるということと、お金の価値が下がるということは同じ意味だ。だからお金の価値が下がるということは、インフレということになる。
少し前まで世界中で景気が悪くて、景気をよくしようと思ってお金を印刷しまくった。刷っても刷ってもなかなか景気はよくならないから、もっと大量に刷った。そうしたら、ちょっと時間差があって物価が急激に上がり始めた。
「そんなバカなわけがない」って思うでしょ? 嘘みたいだけど、本当の話だ。まあちょっと単純にしすぎているかもしれないけど、大きな構造としてはそういうことが起こっている。
普通はインフレが起こるのは、世の中の景気がよいときとされている。物価が上がっても、それ以上に給料が上がれば経済全体はうまく回るし、みんな幸せになるだろうと。資本主義というのは、そんな楽観的な考えで運営されているんだ。結構、危うい仕組みなんだよ。
ところが今回は、経済がよくなっているというよりは、お金をたくさん刷ったことの影響が大きいから、そこまでうまいくかは疑問。物価だけが上がって、給料はそれほど上がらない、つまりみんなの生活が苦しくなるかもしれないな。
お金の知識がある人は、そんなことが起こっても今までと変わらない、豊かな生活をし続けられる。インフレになると現金や銀行に預けたお金(預金)の価値は減るけれど、株や不動産、ビジネスといった資産にお金を換えておけば、モノの値段が上がるとそれらの価値も上がるから、価値が減ることはない。余計な苦しみを感じなくて済むんだ。
どうだろう。お金のことを学ぶ価値が、少しは伝わったかな?
お金はただの数字で、どれくらい人の役に立ったか「感謝の印」でもある
もう一つ、お金の本質を伝えるよ。おっと、ちょっと急ぎすぎたかな? 今までのところは本当に大切なことなので最初に書いているけれど、一番簡単というわけではないから焦らなくていい。ゆっくり、時間をかけて理解してくれたらいいからね。
「そもそもお金は、ただの数字だ」。そんなことを言うと、「さっき、お金は大切だって言ったじゃないか!」って思うかもしれないね。うん、確かにそうだ。
でも大切なのは、お金そのものではない。紙幣とか硬貨に価値があるわけではないんだ。お金は何かの価値を計測するための数字でしかない。何かと交換して初めて価値が得られるわけで、持っているだけではただの紙切れや金属でしかない。
1万円札に1万円の価値があるのを、不思議に思ったことはないかな。僕は、子どもの頃から、ずっと不思議だった。今でも不思議だ。信じられない。昔は国がお金を金と交換してくれたけど、今ではその保証すらない。みんな、お金を使えばどんなものとでも交換できると信じているから、信じている人の間では実際にどんなものとも交換できてしまうという不思議な現象が起きている。
いわば、経済はその参加者全員の「思い込み」の上に成り立っている。強いていえば、最終的にお金に価値があることを保証しているのは、皮肉なことに逮捕されるときかもしれない。
話が飛んじゃっているし、いきなり物騒なことを言ってしまったかな? どういうことかというと、税金をお金で支払わないと法律違反になるのが日本という国。税金をはらわない、つまり脱税すると最終的には逮捕されるという国の「武刀」が、お金に価値があることを証明してくれる。
だからみんな必死でお金を集めるし、なくなったら大変なことになると思い込んでいる。お金がなくなることの恐怖感は、生活できなくなるというのもあるけれど、逮捕されることの恐怖からも来ている。普段の生活の中で、そこまで意識はしていないけれど。
話がずれた。つまり、お金というのはそれ自体に価値があるということはない。と同時に、経済の仕組みが壊れてしまったら、何かと交換できるという価値すら失うかもしれない。ただの紙切れ。お金が1億円あったとしても、その1億はただの数字に過ぎない。誰かに押し付けて(使って)初めて、価値が受け取れる、約束事のようなもの。
その約束事の大きさを測るのが、金額というわけだ。だから商品やサービスを誰かに提供したとき、どれくらいのお金を受け取れるかはその約束事によって決まる。つまり、どれだけ人の役に立ったかを測るのがお金だというわけだ。
「あなたは私に対して100万円分の役に立ったから、いつか100万円の価値を受け取れます。ありがとう」これが商品やサービスの価格が100万円になる仕組みの全てだ。
そういう取引を繰り返して、人からの「ありがとう」をたくさん集めた人が、お金持ちになる。だから悪いことをしてお金持ちになることはできない。よいことをたくさんして感謝を集めたからこそ、お金持ちになるんだ。
そういう仕組みだから、お金自体はただの数字だし、お金を持っている人が悪でもない(それどころか、誰よりも世の中の役に立っている人である)ことが、わかるかな。
安田 修 株式会社シナジーブレイン 代表取締役
片桐 了 漫画家・イラストレーター
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