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ダメだ、もう管理できない…地方にある「先祖代々の墓」相続放棄は可能か【相続専門税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月5日 19時50分

ダメだ、もう管理できない…地方にある「先祖代々の墓」相続放棄は可能か【相続専門税理士が解説】

(画像はイメージです/PIXTA)

ご両親亡きあと、遺産としてお墓を相続する方もいると思います。しかし、生活圏と物理的に遠すぎる、自分に子どもがなく承継者がいないなどの理由で、お墓の相続はどのように行うのか、また、お墓が不要な場合はどのようにして手放せばいいのか、お墓にまつわる支払いや様々な手続きを見ていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

親が所有・維持管理しているお墓…相続手続きはどうなる?

この夏、関西地方の実家へ帰省予定です。父が高齢なので、そろそろ相続について相談する必要があるのですが、そのなかでも、お墓について悩んでいます。  

私の父は本家の長男で、実家近くのお寺にある先祖代々の墓を守ってきました。しかし、長男の私をはじめ、3人いる子どもたちは全員実家を離れ、それぞれ東京や神奈川に自宅を購入しており、将来実家に戻る予定もありません。したがって、お墓の管理は難しい状況です。今後、いったいどうしたらいいのでしょうか。 40代 会社員(東京都墨田区)

先祖代々のお墓の維持管理に悩む人が増えています。

まず、お墓を相続する場合について見ていきましょう。お墓の相続手続きは、大まかにいうと以下の4段階があります。

①祭祀承継者を決める ②墓地の管理者へ連絡をする ③名義書換をする ④名義変更の手数料を支払う

①の「祭祀継承者」とは、祭祀財産を引き継ぎ、祭祀の主宰者となる人です。主にお墓の管理、法事などの執り行い、また墓地の管理者に対して管理費やお布施を払う人のことを指します。この祭祀管理者を誰にするかを最初に決定する必要があります。

②では、祭祀承継者が、墓地の管理者に相続が発生したことを連絡します。その際に、③の名義書換の手続きに関しての指示があります。

名義書換の手続きには、主に「墓地利用権の証明書」「祭祀承継者の印鑑登録証明書」「前の祭祀承継者が亡くなった事実が分かる戸籍謄本」といった書類が必要となります。

とはいえ、お寺や霊園ごとに書式や対応、必要書類など手続きが異なるため、管理者の指示に従い、必要な書類を提出してください。

④名義変更の手数料は、民営墓地か、公営墓地で変わってきます。民営の墓地の場合なら数千円から1万円、公営の墓地の場合なら数百円から数千円程度が相場となっています。場合によっては、お布施を包むケースもあるため、わからなければ、お寺や管理者に直接聞くことをおすすめします。

「祭祀継承者」は誰が、どのようにしてなる?

ここまで解説してきましたが、これらの手続きを主導する祭祀継承者を誰が務めるのか、気になる方も多いかと思います。

基本的には「被相続人が生前に指定した人」が祭祀承継者となります。しかし、地域などの慣習で決める場合や、家庭裁判所が決める場合もあります。

被相続人が生前に指定しておく場合は、できれば口頭ではなく、文章にしておくことをおすすめします。なぜなら、口頭の場合は「言った・言わない」などのトラブルが起こる可能性があるためです。そのような事態を避けるためにも、明文化し、遺言書に書いておいたほうがよいでしょう。

もし、被相続人から祭祀承継者の指定がなかった場合はどうなるでしょうか。長男や長女といった長子が務めるべきなのか…と、考える方もいるかと思います。

確かに昔は「祭祀承継者を長男が引き継ぐ」という慣習が見られましたが、現在はそのような慣習は薄れつつあります。そのため、亡くなった方からの指定が特になく、地域の慣習もなく、誰が祭祀承継者になるか決めかねる場合は、家庭裁判所に申立てをして、指定してもらうことになります。

家庭裁判所では、過去にどういった生活をしていたか、お墓との距離がどれくらいか、身分の関係がどうなっているのか、などを総合的に考え、祭祀承継者を決定します。

お墓を相続しない・相続放棄することは可能か?

では、お墓を相続したくない場合「お墓を相続しない」あるいは「相続放棄する」ことは可能なのでしょうか?

祭祀継承者となるのを辞退したり断ったりすることはできないのですが、祭祀継承者が相続したあと、お墓を処分することは可能です。そのため、「墓じまい」という形をとれば、いったん相続しても、手放すことができます。

お墓の管理は大変ですし、費用もかかります。お墓が遠方なら、お墓参りだけで金銭的にも身体的にも大きな負担になるでしょう。継続的なお手入れとなればなおさら困難です。放置すれば荒れ放題になりますから、そんな場合はいっそ「墓じまい」をするのも手かもしれません。

墓じまいのあとは「永代供養」というかたちで、お寺や霊園に管理を任せることができます。「永代」という響きから、寺や霊園にずっと管理をしてもらえると勘違いをされる方がいますが、一定期間だけ管理してもらったあとは、お墓を撤去することになります。

具体的には、永代供養は33回忌までと期間が決まっており、期間終了後は、ほかの遺骨と一緒にされてしまうことが多いです。遺骨が一緒にされてしまうと、その後は遺骨を取り出すことができなくなるので、親族や家族の意見を聞きながら進めていくほうが安心です。

お墓の永代供養…費用の目安はどのくらい?

永代供養のお墓には、大きく分けて「単独墓」「集合墓」「合祀墓」の3通りあります。

費用は、所有する面積が大きいほど高額になります。いちばん高額なのが単独墓、その次が集合墓、最も安価なのは合祀墓です。お墓の購入費用と別に支払う「永代供養料」は、どれを選んでもほぼ同じです。大まかな予算として、5万円から200万円くらいまでだと考えておけばよいでしょう。

永代供養の場合、維持費はかからないと考えてよいといえます。最初に一括で永代供養料を払ってしまえば、あとからの請求はありません。

なお、お墓の相続には相続税がかかりません。相続税は、亡くなった人から財産を受けたときにかかる税金ですが、お墓はほかの財産と違い、先祖をまつるための財産のため、税金はかからないものとして決められているのです。

岸田 康雄 公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)

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