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「長男にはマンション、次男には預貯金を」50代・仲良し兄弟の仲を引き裂いた「遺言書」…父の善意が仇となったワケ【不動産鑑定士・行政書士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月17日 11時30分

「長男にはマンション、次男には預貯金を」50代・仲良し兄弟の仲を引き裂いた「遺言書」…父の善意が仇となったワケ【不動産鑑定士・行政書士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「近くに住む長男には自分が住むマンションを、遠くに住む次男には預貯金を分ければ、兄弟で揉めることもなくスッキリ相続できる」と父は遺言書を作成し、すっかり安心しきっていました。ところが、子どもたちの思いを考慮せず、憶測で作成した遺言書のために、とても仲の良かった兄弟はまさかのドロドロの相続争いを迎えることになってしまったのです……。不動産鑑定士であり行政書士でもある竹田達矢氏が、事例をもとに解説します。

良かれと思い息子たちへの「遺言書」を作成したが……

都内の高級マンションで一人暮らしをしていた飯塚さん。70代半ばを過ぎて妻が亡くなり、ずいぶん落ち込んでいたが、少しずつ1人暮らしにも慣れて生活が落ち着いてきた。もともと料理をするのが趣味だったので暇があれば料理を楽しみ、現役時代からの友人との外出を楽しんでいた。

母の3回忌が近づいたころ、友人たちと飲みに行ったときに終活の話題で盛り上がった。すでに遺言書を作り、公正証書にしているという友人が何人かいて、自分もそれなりに財産があるし、子どもたちのためにも終活しなければいけない時期だなぁ、と思いながら帰宅。

数日後、ちょうど近くで終活セミナーがあったので、講師に相談して、公正証書遺言を作成することを決めた。法定相続人は近くに住む長男と遠い関西に住む次男の2人だけ。2人とも50代だ。財産を2人にどう分けたらいいのか考え、まずは自分の財産を整理してみた。

飯塚さんが住むマンションは、いわゆる億ションと言われる高級マンションで、10年以上住んでいるが、今でも1億円以上はするだろう。銀行口座は3つ。それぞれにそれなりの額が残っている。

次男は関西の会社に勤め、家族で暮らしているため東京には戻らないだろうし、マンションをもらっても困るだろう。長男は近くに住んでおり、母が亡くなるまで面倒を見てくれ、一時は一緒に住もうとも言っていた。

そこで相続財産の分け方を次のように決めた。

・長男:マンション+A口座

・次男:B口座+C口座

マンションは共有にすると難しくなるし、こうすればほぼ同額になるから良いだろう。そもそも仲がいい兄弟だから揉めないだろうと思い、友人2人に証人になってもらい、公証役場で公正証書遺言を作成してもらった。

妻の3回忌。飲みに行った席で、早速言い争いに

想定外だった。まさか、ケンカになるなんて……長く離れて暮らしていたから、心の距離もあったかもしれない。

母の3回忌で、皆でお墓参りをした後、久しぶりに親子3人で居酒屋へ飲みに行き、初めて息子兄弟に遺言の話しをした。すると、早速ケンカがはじまった。

次男は「マンションはもっと高いはず。母の面倒を見たからと言って、差が大きすぎる。自分も子どもにお金がかかる時期だし、少しでも多く必要だ」と主張。長男は「うちも子どもがまだ高校生と大学生でお金がかかる。それに、お前は母が亡くなるまでこちらに全然戻ってこなかったじゃないか」と反論し、お互いさらに不満が高まった。

長男が売却すればマンションの価格も明確になるが、「父さんが住んでいるのにそれは無理だ」と長男が言うと、「俺に出て行けというのか!?」と飯塚さんもつい興奮してしまった。

父の死後、争いはピークに……

結局、公正証書遺言は考え直したり書き換えたりする余裕もなく、飯塚さんは亡くなった。

飯塚さんが亡くなるまでに兄弟の仲はさらに険悪になり、お互いに話をすることなく、もう後戻りできない状態になっていた。飯塚さんの葬儀では長男が喪主となったが、お互いに目を合わせることもなく、険悪な雰囲気だった。

それからしばらくして、次男に裁判所から調停の連絡があった。長男が申し立てしたものだった。双方弁護士に相談して、調停で解決することになった。

次男は「マンションは立地条件がいい高級マンションだから、もっと高いものと考えるべき」と主張。長男は、「たとえ少しぐらいマンションが高かったとしても、母の世話も父の最期までみていたのも自分なんだから、本当はもっともらってもいい。小さいことを言わず父の思いを汲んで欲しい」と反論。

双方、子どもたちが高校生、大学生となりお金がかかる時期になっていることもあり、早く決着をつけたい気持ちは同じだが、マンション価格が引っかかりなかなか話し合いは終わらない。

相続財産は全て“塩漬け状態”。費用だけがかさんでいく事態に

マンションは売ることもできず、固定資産税に加えて毎月の管理費、修繕費などがかさんでいく。長男は、マンションに引っ越して住み出すと、次男が何を言ってくるかわからないためそのまま放置している。

遺産分割協議書も作れないため、父の口座は凍結され、マンションも売れず、遺産は塩漬けになっている。 兄弟は子どもの頃から仲良しだったのに、争いになってしまい、飯塚さんの死から5年経っても解決の見通しが立たない。

どうすれば争いは起きなかったのか

遺言は自分の思いだけでなく、子どもたちの思いや生活状況、財産の状況などを総合的に考えて、事前に関係者が納得していないと深刻な事態になる。

また、遺産分割協議の段階で険悪になってから鑑定評価を依頼されることがあるが、そうなってから一方の依頼で鑑定評価をしても、相手から重箱の隅をつつくような反論が出てくる事が多い。

「この不動産鑑定士に依頼して、出てきた結果には文句を言わない」と事前に決めておかないと、結局無駄になることが多い。相手の用意してきた不動産鑑定士だと、相手の言いなりだろうと勘ぐられ、今度はこちらも鑑定評価を取って……と、時間と費用だけがかさんでいく。

不動産の鑑定評価を事前にしておくことはもちろんのこと、鑑定評価は、遺言や遺産分割に精通した信頼できる不動産鑑定士に依頼することが重要である。

竹田 達矢

不動産鑑定士

行政書士

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