残業+パワハラでうつ病→障害年金月7万円で暮らす59歳・独身男性の絶望…同居する年金月13万円・88歳母の“異変”に思わず「もう、なにも考えられない」【FPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月23日 11時15分
![残業+パワハラでうつ病→障害年金月7万円で暮らす59歳・独身男性の絶望…同居する年金月13万円・88歳母の“異変”に思わず「もう、なにも考えられない」【FPの助言】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61809_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
お金や健康、離婚など、さまざまな事情から高齢の親と実家で同居するミドル・シニア世帯は少なくありません。そのような環境で無策のままいると、将来「破産の危機」に陥ってしまうため注意が必要です。最悪の事態を避けるべく、高齢の親をもつミドル・シニア世代がすぐに実践したい対策について、具体的な事例をもとにみていきましょう。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが解説します。
上司のパワハラでうつ病に…早期退職を決断したAさん
現在無職のAさん(59歳)は、数年前までバリバリ働く会社員でした。しかし、残業続きの日々のなかで上司のパワハラに苦しみ、また同僚との人間関係も築けていなかったAさんは、数年前に精神疾患(うつ病)を患ってしまったそうです。
仕事を続けることが困難になったAさんは、自身の年齢も鑑み、定年を迎える前に退職することに。それ以降は、月7万円ほどの障害年金を受け取りながら実家で生活しています。
また、父親は10年ほど前にガンで亡くなっており、Aさんは88歳になる母親と2人暮らしです。母親は父の遺産と遺族年金で暮らしており、Aさんが退職してからもしばらくは金銭的に不自由ない生活を送っていました。
しかし……。そんな母親に、だんだんと異変が起こります。
母親に現れた「認知症」の症状…途方に暮れるAさん
テレビのリモコンや財布を探し回ることが増え、スーパーへ行っても毎回買っているおなじみの商品を買い忘れたり、ゴミ出しを忘れたりするようになりました。
最初は「年のせいかもの忘れがひどくなったな」程度に思っていたAさんでしたが、いつの間にか朝晩の着替えも忘れ、何日も同じ服を着ています。
心配になったAさんが病院へ連れて行ったところ、悪い予感が当たり、Aさんは「初期の認知症」であると診断されました。
家事はすべて母親任せで、これまでの人生で料理や掃除などほとんどしてこなかったAさん。生活費も母親がほとんどを負担してくれています。
「まずい、これからどうすれば……」途方に暮れたAさんは、会社員時代に知り合ったファイナンシャルプランナーである筆者のことを思い出し、相談することにしました。
普通に生きたいだけなのに…絶望のAさんに残された選択肢
「もう、なにも考えられません。普通に生きたいだけなのに、それがなんでこんなにも難しいんでしょうか……」
筆者のもとを訪れたAさんは、なかば自暴自棄になっている様子です。
一連の経緯について聞いた筆者は、Aさんの今後についてシミュレーションのうえ、次の対策を伝えました。
1.母親の口座から当面必要なお金を出金&可能なら代理人カードを作成する
銀行に母親が認知症になったことが伝われば、原則母親名義の口座は凍結され、お金を引き出せなくなります。
ただし、口座凍結後も親の預金を引き出す方法が2つあります。それが「成年後見人制度」と「代理人カード」の作成です。
「成年後見人制度」とは、認知症などによって判断能力を失った人の財産保護のために「後見人」と呼ばれるサポーターを選定し、その後見人が財産管理や契約締結などを代行してくれる制度です。
後見人をつけることで母親のお金を出金できるようになります。ただしこの場合、後見人に支払うランニングコストが発生します。また、後見人はあくまでも母親のために財産管理を行うため、Aさんは以前と比べて不自由に感じるでしょう。
他方、窓口で「代理人カード」を作成することにより、後見人をつけずともAさんが母親に変わって入出金できます。
2.母親の財産を確認する/3.生活費の確認をする
また、今後のことを考えると、精神疾患を患っているAさんが自身の体調の様子をみながら母親の面倒をみるというのは簡単なことではありません。したがって、母親を介護施設に入所させることも視野に入れる必要があります。
その際にあわてないためにも、Aさんはいまのうちに母親の財産を把握し、毎月の生活費にいくらかかっているか(どれくらい必要か)を確認しておくといいでしょう。
4.親族に協力を求める
幸い、母親には父親の遺産があり、FPからみても資産的には問題ないようです。しかし、今後さまざまな手続きをするにあたって、Aさんひとりでは心細いでしょう。したがって、親族に相談してみるよう伝えました。
長いあいだ母親と一緒に暮らしてきたAさんは「こうなったからには、自分がなんとかしなければ」という責任感が強く、それゆえに関係性の薄い親族に相談するという選択肢がなかったようです。ひとりで抱え込むのではなく、可能な範囲で周りの人を頼りましょう。
5.介護保険サービスを利用する
なにより伝えたいのが、決して無理はせずに「介護保険サービス」を活用しましょう、ということです。
自宅で過ごす場合は、訪問介護やデイサービスなどの通所介護がいいでしょう。また、自宅で過ごすことが難しくなった場合は、認知症の人に対応したグループホームなど、施設介護のサービスを受けましょう。
ここまで聞いて、Aさんは「なんとかなるかもしれないな」と少し希望を抱けたようです。
深刻化する「老々介護」問題…親子での事前対策が必須
今回の事例は、決して特殊なケースではありません。統計データによると、日本では高齢化や労働環境などを背景に、Aさんのような家庭が増加しているのです。
◆うつ病患者……約20年で「81.3万人」増加
厚生労働省が3年ごとに全国の医療施設に対して行っている「患者調査」によると、平成8年には43.3万人だったうつ病等の気分障害の総患者数は、約20年後の平成29年には124.6万人と、2.87倍に増加しています。
◆高齢者世帯……約20年で、全人口の「約半分」が高齢者世帯に
令和6年版高齢社会白書によると、令和4年時点で65歳以上の高齢者がいる世帯数は2,747万4,000世帯と全世帯(5,431万世帯)の約半数を占めており、平成12年(2000年)時点の約538万世帯から5倍以上に増加しています。
◆認知症患者……高齢者の約4人に1人はなんらかの「認知症害」あり
65歳以上の認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数の将来推計をみると、令和4年における認知症の高齢者数は443.2万人、軽度認知症害のある高齢者数は558.5万人と推計されています。
認知症患者は高齢化とともに過去から増加傾向にあり、認知症及び軽度認知症害がある高齢者の数は、令和22年にはそれぞれ584.2万人、612.8万人に増加すると推計されています。
今後も、高齢者の増加にともなって認知症患者の数も増えることが予想されます。
元気なうちは問題ありませんが、月日の経過とともに状況は刻一刻と変化していきます。親も子も「まだ早い」「面倒だから」と後回しにせず、専門家に相談のうえ、早めに対策をとっていきましょう。
武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役
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