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50代長男夫婦、年金月18万円の74歳昭和気質の父を疎み“サ高住”へ押し込めるも…3ヵ月後「貯金2,400万円」を失い帰ってきちゃったワケ【CFPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月14日 11時45分

50代長男夫婦、年金月18万円の74歳昭和気質の父を疎み“サ高住”へ押し込めるも…3ヵ月後「貯金2,400万円」を失い帰ってきちゃったワケ【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

父と母、どちらかが先立つと、ひとり暮らしをさせるか同居するかなど、残された親を今後どうするか悩む子どもは多いでしょう。高齢者施設への入居という選択肢もあります。その場合、新たな課題となるのが入居にかかる費用です。本記事では石田さん(仮名)の事例とともに、高齢親の老後資金についてFP相談ねっと・認定FPの小川洋平氏が解説します。

高齢施設へと追いやられた父

石田雄二さん(仮名/74歳)は夫婦で長男の家族と同居し、リタイア生活をしています。もともとは地域の中堅企業の役員を務めてきましたが、70歳で引退してからはほとんど外出することもなく、自宅にいることが多くなっていました。

若いころから妻の恵美さん(仮名)に家事は任せきり。家事はほとんど自分でしてこなかったため、リタイア後も恵美さんに頼り切りです。きれい好きなため家の中の掃除と庭の手入れだけは毎日欠かすことなく行っていましたが、インスタントラーメンひとつですら自分では決して作りません。トイレでトイレットペーパーが切れたら、「おい! 切らしてるぞ!」とトイレから大声をあげます。

また、50代の長男夫婦や孫たちの生活態度に対しても厳しく、夜遅くまで起きていたり、朝遅くまで寝ていたりするとその都度小言を言っていました。掃除がなっていないなどと、長男の嫁を責め立てたり、「なんで女が働きに行くんだ」と共働きである長男夫婦に絡みにいったり、それが原因で長男夫婦は喧嘩になることもしばしば。そんな雄二さんの存在を妻の恵美さんだけでなく、長男夫婦にも疎まれるようになってきました。

そんなある日、妻の恵美さんが先立つこととなりました。

母に先立たれた父をどうするか

恵美さんの死をきっかけに、息子夫婦は石田さんを施設へ入れられないかと考えるようになりました。当初は長男家族が家を出ようとも考えていましたが、高齢の石田さんをひとり残すよりも、見守りがついた施設に入ってもらったほうが安心という判断に至りました。

石田さんは当初猛反対。長男夫婦は、市街地にあり利便性もよく外出も自由、部屋もホテルのような施設だからとなんとか説得し、最終的にはふてくされる石田さんをしぶしぶながらも首を縦に振らせたのでした。

入居から3ヵ月後…

石田さんはサポート付き高齢者住宅(サ高住)に入居することになりました。サ高住は自立して自分の生活ができる人であっても60歳以上であれば入居することができ、介護職員、看護職員が常駐しています。入居者の体調不良などのトラブルなどに対応することができるため、ひとり暮らしの高齢者でも安心して暮らすことができます。

退職金も合わせて3,000万円以上の貯金があった石田さんにとっては費用面も心配なく、息子夫婦はこれで安心と思っていたのでした。

しかし、それから3ヵ月後、思いもよらぬことが起きてしまいます。石田さんは「お金がなくなってしまいもういられない……」と言って戻ってきてしまったのです。

銀行を信じて2,400万円を消失

石田さんは現役時代からの付き合いの銀行に勧められ、「預金では増えないし……」と仕組債と呼ばれる金融商品を購入しました。この資産の運用は銀行に任せていました。仕組債とはデリバティブ取引を組み合わせて組成される債券の総称です。通常の債券は満期まで保有していれば額面が償還され、そのあいだに決められた金利が支払われるローリスク・ローリターンな特性を持つ商品です。

石田さんは、仕組債のなかでも対象となる株式の価格が一定の金額以上下回ると株式に転換される「他社株転換社債」という商品を購入していました。株価が一定の価格の範囲で変動しているあいだは、通常の債券投資では難しい高い金利を得ることができ、1年後には投資した金額が償還されるというものです。しかし、株価が決められた価格以上に上振れ・下振れした場合には、債券から株式へと転換されます。つまり下落している場合、債券は価格が下落した株式に転換されてしまうため、大きな損失が発生する場合があります。

このように複雑な仕組みから構成されている商品ですので、初心者には理解することが難しく不向きなものなのですが、石田さんは「銀行に任せておけば大丈夫だろう」と、安易に考えてしまいます。3,000万円もの金額を投資してしまった石田さんが購入した仕組債は、石田さんの予想に反して対象銘柄が大きく値下がりしてしまい、600万円ほどに株価が下落してしまったのです。

公的年金の受給額も月に18万円程度なので、これでは住居費用を払ったあとほとんど残らなくなってしまいます。手元資金600万円では引き続きサ高住で暮らすのも難しいと判断した長男夫婦は、さすがに石田さんを放っておけず再び一緒に暮らすことになりました。

自分のミスでお金を失ってしまった石田さんは、さすがに申し訳ないと思ったのか長男夫婦に気を遣うようになったそうです。

理解不足の商品を契約してしまう高齢親

今回の事例の問題点は、よくわからない商品を「銀行の言うことだから」と安易に契約してしまったことにあります。

複雑な仕組みの商品を知識の乏しい人に販売すること自体、売り手側の問題も多いにあるのですが、それを安易に契約してしまった石田さんの判断も問題です。

リスクの度合いが自分に合わない・自分が仕組みを理解できない商品は契約しない。――これは、金融商品選びの基本です。馴染みのある金融機関から勧められたらついつい安心してしまいがちですが、金融機関が必ずしも顧客のために商品を勧めてくれるというわけではありません。

そのため、リスク性商品を購入するのであれば「長期分散投資」という投資の基本の考え方を理解し、自分のリスクに合った資産構成で投資を行うことが必要です。

金融商品は上手に活用すれば資産寿命を延ばし老後を豊かにしてくれるものですが、よくわからないまま勧められた商品を契約してしまうと今回の事例のようになってしまいます。

狙われる高齢親の資産

今回は仕組債で資産を失い、サ高住に住み続けることができなくなってしまった石田さんの事例をお伝えしました。仕組債をはじめ、こういった金融機関から勧められた商品をよく理解しないまま契約してしまい、トラブルになるケースは後を絶ちません。

特定非営利活動法人 証券・金融商品あっせん相談センターが公表するデータによりますと、近年では年間4,000件以上もの証券会社や銀行などとのトラブルによる相談が報告されています。

さらに総務省の家計調査報告(2022年貯蓄の状況)によると、高齢者世帯における貯金額の平均値は2,414万円となっており、高齢者のお金は、詐欺業者や悪徳業者に限らず証券会社や銀行も狙っています。金融リテラシーの低い高齢者に対して、仕組債や外国株式、投資信託といった手数料を稼ぎやすい商品を成約させ手数料収入を得ているのです。

NISAのブームでより投資が身近になっている昨今ですが、理解不足のまま投資を行うことはこういった危険もあることを理解し、特に高齢親が知識不十分のまま契約しないよう、家族間で共有することが理想です。しっかり基礎知識を学び、理解してから自分に合ったものを選んでいきましょう。

小川 洋平

FP相談ねっと

FP

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