“新しい働き方”として定着すると思いきや…コロナ禍を経た今になって、強硬な「リモートワーク廃止論」を示す企業が現れた理由
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月16日 7時15分
![“新しい働き方”として定着すると思いきや…コロナ禍を経た今になって、強硬な「リモートワーク廃止論」を示す企業が現れた理由](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61874_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
新型コロナウイルス感染症の蔓延により、リモートワークが急速に普及し、新しい「働き方」が台頭してきました。しかし、近年企業の一部ではリモートワークを廃止する動きがみられています。一体、廃止・減少の背景にはどんな問題があるのでしょうか。今回は東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、リモートワークとマネジメント問題について解説します。
先進的なアメリカ系企業で「リモートワーク廃止論」が…いったいなぜ?
新型コロナウイルス感染症の騒動が収束して、かなりの時間が経過した今、リモートワークでもっとも進歩的といわれていたアメリカ系の企業でも、強硬なリモートワーク廃止論が出てきました。
ある世界的エンターテインメントの会社では、「週4回は絶対に出社するように」という指示が全従業員に通告されたとのことです。その話題は各メディアで広く取り上げられていました。
日本に比べて国土は日本の16倍あり、新しい制度に関して柔軟かつ先端を走っているイメージがあるアメリカ系企業で、このような議論はどこから出てきたのでしょうか。
コロナは収束まで3年ほどの時間を要しましたが、その期間を終え、さらに数年経過するなかで、企業独自の分析もかなり進んできているようです。そこでは次のような問題が論じられるようになっています。
「ピープルマネジメント」の問題とは
それはピープルマネジメント(インター・パーソナル・スキルの研鑽やそのスキルチェックをどうするのか)、(ロイヤリティの高い幹部候補を抜擢できるのか)についてです。
通信インフラの発達で、オンライン会議などのストレスはほとんどの方があまり感じなくなりました。むしろ通勤や出張などの移動時間の削減で、より仕事が効率的に進むようになったと歓迎している方も多いことでしょう。業種にもよるでしょうが、おおむね好感を持ってリモートワークに取り組まれていると思います。
しかし、そのような時間がコロナ以後5年ほど流れたことにより、Face to Faceあるいは数十人~数百人といったリアルな対人折衝の場面で、実際に人前に立ったときのインパクトを出せるのかということが見えにくくなってきたわけです。
いろいろな数字で補完して能力を推し量ろうという動きがあったと思いますが、そこが万全ではなかったのかもしれません。
リモートワークでも定量的、定性的、両方の側面から、働いている従業員の業績の管理や評価ができていたということも十二分にあるでしょう。
一方で、人を惹きつける魅力を持ち合わせているかどうか、あるいは、10年、15年先にその企業を背負って立つ、能力だけではないロイヤリティ、人間的魅力を併せ持った人材を本当に抜擢することができるのか。もしくは抜擢が進んでいるのか。そういったところに目を向けたときに、現経営陣側から見えない部分が出てきていると分析した会社が現れました。
つまり、従業員を縛りつけておくためにリモートを排除したのではなく、失われたリアルなコミュニケーションを重視するゆえにリモート廃止に踏み切ったのかもしれないのです。
企業によってリモートワークに対する捉え方はまったく違う
その一方で、これと180度違う方針を堅持している企業も多数存在します。これらの企業は、先ほどのリモートを廃止した企業が表明した懸念点、そういったものすべては今後の情報技術の革新、価値観の変化(リアルコミュニケーション以外はそもそも人間関係において重要な指標ではない)、こういう懸念さえ超越したマネジメントスタイルがまもなく現れるはずだから、そうした懸念は無用だとしています。
優秀な従業員に気持ちよく仕事をしてもらうにあたり、多くの方が望むであろうリモートワークを縮小すべきではないという、まさに革新と保守が完全に分かれているような、180度違う意見が出てきています。
日本でもいろいろな業種で、業界1位、2位がしのぎを削っている実例がありますが、とある業種における業界1位と2位がリモートワークに対するとらえ方で180度まったく違うケースがあります。参考までに具体的な事例をご紹介してみたいと思います。
企業別リモートワークの捉え方(実例)
以下はある会社の最近の発言です。
「リモートワークで失ったものはリモートワークで取り返すべき。反省点は山ほどあるが、これからの時代背景を考慮し、ますます完全リモート化を進める。役員を含め、すべてフルリモートで対応する」
次はその会社を追随する業界2位の会社の発言です。
「リモートは廃止。人は性悪説で見なければならない。人はサボるものである。自宅で仕事をすると、会社で仕事をしているときより確実に生産性が落ちている」
だから出社させないとダメなのだと断言しています。この2社は業界1位と2位のライバル企業で、しのぎを削って争っている会社です。
それがまったく反対側の観点で発言しているところが興味深いと思います。私が考察するに、どちらが正解か間違いかは文化的な要素もありますから、はっきりわかることではありません。
ただ注目しているのは、このリモートを推進している業界1位の会社は、今後も少子高齢社会であり続ける日本において、従業員の快適性を今から徹底追求しなければ、優秀な人材に選んでもらえなくなるだろうということが透けて見えているのではないかと思います。
一方の2位の会社は、そういう従業員に対する忖度自体が企業の体質を弱くさせる、おそらくそういう前提に立っているのでしょう。このように性善説と性悪説に見事に分かれています。どちらも社名を出せばだれでも知っている有名企業ですが、あえてここでは伏せておきます。
この業界1位の企業は週休3日を一番最初に持ち出した会社です。リモートワークの判断は採用が困難になり、人材獲得合戦が熾烈になる今の世相を映し出しているものと推察されます。リモートワークとマネジメントについては今後も注視していきたいと思います。
福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社
代表取締役社長
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