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税理士「無理に法人化する必要はない」…個人の不動産投資家“だけ”に与えられた「5つ」のメリット

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月29日 17時15分

税理士「無理に法人化する必要はない」…個人の不動産投資家“だけ”に与えられた「5つ」のメリット

(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産投資が軌道に乗り、「法人化」のタイミングをうかがっている方も少なくないでしょう。しかし、一概に「個人」より「法人」のほうがいいかというと、そうともいえません。今回は、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が、「個人」で不動産投資を行う場合のメリット・デメリットについて解説します。

不動産投資するなら、「個人」と「法人」どちらが有利?

――不動産投資って、個人でやる方法だけじゃなく法人でやる方法もあるじゃないですか。経営者が不動産投資をする場合、「個人」と「法人」どちらが有利なんですかね?

黒瀧氏(以下、黒)「難しい質問ですね。その人の状況によって変わります。不動産投資を個人でやる場合と法人でやる場合では、特に税金の面と融資の面で違いが出てきます」

――どのような違いがあるのでしょうか?

1.税金の違い…不動産投資で大儲けした場合、「個人<法人」

黒「個人の場合、不動産投資で得られる収入は『不動産所得』に区分されます。不動産所得は総合課税のため、最終的には給与所得をはじめ他の所得と合算させたうえで税額を計算します。

そして、個人の所得税には『超過累進課税』が採用されており、課税所得が多くなるほど税率が大きくなるしくみです(図表1)」

――つまり、個人の場合は不動産所得が多ければ多いほど、税金が高くなる可能性が高いってことですか。

黒「はい、そのとおりです。

一方、資本金1億円以下の法人の場合、年800万円までの所得には15%の税率、年800万円を超える部分には23.2%の税率で固定されています。

他にも法人住民税や法人事業税などがかかりますが、すべてを合わせた法人実効税率で見ても、税率は約25%~34%です」

――なるほど、法人の場合は税率が固定されているから、不動産で大儲けしたときは個人よりも税金が少なく済む可能性があるんですね。

黒「そうなんです。ただし、逆にいえば所得が少ないときは法人のほうが税率が高くなってしまいます。

ですから、法人化するのであれば給与所得が高い人であったり、不動産投資である程度の収入を得てからがベターです」

2.融資の違い…選択肢が多いのは「法人」だが、設立したては「個人」のほうが有利

黒「不動産投資を大規模に行っていく場合、金融機関から融資を受けることも視野に入ってきます。

個人の場合は金融機関が不動産投資のために用意している「アパート・マンションローン」を活用することがほとんどですが、法人の場合はこの「アパート・マンションローン」のほか、事業用の融資を受ける選択肢もあります」

――法人のほうが融資の選択肢が多いんですね。ということは、融資を受ける場合は法人のほうが有利ということですか?

黒「そうとも限りません。たしかに選択肢は法人のほうが多いかもしれませんが、個人の場合はローン審査の際、物件の収益性や担保評価、個人の信用力が重視されます。

他方、法人の場合は業績が重視されます。法人を設立したばかりだと業績がないため、融資を受けられる可能性が低いです。よって、早く融資を受けたいのであれば、個人のほうが有利になる可能性が高いといえます」

――なるほど、法人は融資の選択肢が広い分、融資を受けられるようになるまで時間がかかる可能性があるんですね。それぞれ一長一短ありますね。

個人で不動産投資をする「5つ」のメリット

――ここまでの話を聞いていると、小規模の不動産投資を行う場合は、個人のほうがよさそうな感じがしますね。

黒「そうですね。不動産投資で法人化するなら、ある程度の条件を満たしてからのほうがいいと思います。個人で不動産投資をする場合もさまざまなメリットがあるので、無理に法人化する必要はないといえます」

――では、個人で不動産投資を行うと、具体的にどのようなメリットがあるんですか?

黒「個人で不動産投資を行う場合、下記のようなメリットがあります。

●青色申告特別控除が受けられる

●家族への給与を経費にできる

●関連する費用を経費にできる

●不動産所得を損益通算できる

●長期譲渡所得が適用される

以下でそれぞれ詳しく解説していきますね」

1.青色申告特別控除が受けられる

黒「個人で不動産投資をする場合、『青色申告特別控除』が受けられます。青色申告特別控除とは青色申告をしている事業者に適用されるもので、最大65万円の控除を受けることができます。

たとえば所得税率が33%だった場合、住民税も合わせると43%の税率になります。この場合、65万円の控除で65万円×43%=28万円ほど税金を下げる効果があるのです」

――これはかなり大きいですね。不動産収入が多くて税率が高いほど、青色申告特別控除が効いてくるってことですね!

黒「そうですね。ただし、最大65万円の青色申告特別控除を受けるためには、不動産投資が「事業的規模」である必要があります。「事業的規模」であると認められなかった場合は65万円控除は使えず、控除額は10万円になります」

――そうなんですね。不動産投資が「事業的規模」だと認められる条件はなんですか?

黒「我々の業界では『5棟10室』と呼ばれているのですが、戸建て5棟以上、またはアパート等の部屋数10室以上を保有している場合、『事業的規模』ということになっています。『5棟10室』が絶対ということではありませんが、これくらいの規模であれば事業を行っているといえます」

――なるほど。不動産経営で青色申告特別控除最大65万円が適用される基準は、「5棟10室」程度ということですね。

2.家族への給与を経費にできる

黒「これは『青色事業専従者給与』というもので、家族に支払った給与を全額経費にできるという、青色申告の特典のひとつです。ただし不動産貸付業の場合、さきほどと同様『事業的規模』であることが条件です」

3.関連する費用を経費にできる

また、個人で不動産投資を行う場合、不動産投資に関連する費用は経費にすることができます。

たとえば、

・勉強会の参加費

・書籍代

・物件視察のための交通費

こういったものは経費計上が可能です。このほか、物件の修繕費や管理費、賃貸仲介会社に支払う仲介手数料なども経費にすることができますよ」

――不動産投資は他の投資よりも費用がかかりがちですからね。こういった費用が経費にできるのはありがたいですね!

黒「ただし、経費にできるのはあくまで不動産投資に関連するものだけです。特に不動産投資では、他の事業のように取引先と関わるようなことが少ないので、接待交際費などは経費として認められないことが多いです」

不動産投資で赤字が出た年も、個人なら給与と「相殺」可能

4.不動産所得を損益通算できる

黒「『損益通算』とは、1つの所得区分で出た損失分を他の所得から控除できる仕組みです。

たとえば、不動産投資を行って赤字が出たとしても、本業の給与所得があるのであれば損失分と相殺することが可能ということです」

――せっかく始めた不動産投資で赤字が出るというのはあまり考えたくないのですが、実際、赤字になることって多いんですか?

黒「不動産投資の場合、赤字になるというケースが結構あるんですよ。

たとえば、家賃収入からローンや諸経費を引いた金額がプラスだったとしても、減価償却費の計上などによって帳簿上は赤字になることがよくあります。また、修繕費がかかる年があれば修繕費のほうが利益よりも大きく、赤字になる年もあります。

こういった場合にも、『損益通算』をすることで課税所得を抑えることができます」

――なるほど。そう考えると活用する場面は多そうですね。

5.長期譲渡所得が適用される

――「長期譲渡所得」ってなんですか?

黒「不動産投資をしていると、もちろん死ぬまで保有していたいという方もいらっしゃいますが、一方で何年かして不動産を売りたいと思う方もいらっしゃいます。

このとき、不動産を売却して得た利益は不動産所得ではなく、『譲渡所得』として扱われます。不動産の売却で得た譲渡所得というのは『分離課税』なので、他の所得と合算されず、一般的な所得税率とは異なる税率が適用されます。

この税率は[図表2]のように、不動産の所有期間によって異なります。売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下の場合『短期譲渡所得』になり、税率は所得税と住民税合わせて約40%になります」

――約40%は大きいですね。

黒「一方、所有期間が5年を超えている場合、『長期譲渡所得』が適用され、税率は所得税と住民税合わせて約20%になります。

――約半分になっているじゃないですか!

黒「この制度は個人のみ利用可能で、法人にはありません。法人化すると譲渡益に法人税が適用されてしまうので、5年を超えて物件を売却する際は個人よりも不利になる可能性が高いです。

ただ逆にいえば、5年以内での売却については、法人の場合いまみてきた短期譲渡所得の税率40%ではなく法人税が適用されますので、税率は低くなります。

5年以内の短い期間で売却するのであれば、法人のほうが税金は安くなります」

――ということは、もし短期での売却を考えている場合は、法人化を検討してもよさそうですね。

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士  

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