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「暗証番号さえ知っていれば」は甘い…「認知症」の親の口座が凍結される前に、やっておくべき〈事前手続き〉【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月26日 11時45分

「暗証番号さえ知っていれば」は甘い…「認知症」の親の口座が凍結される前に、やっておくべき〈事前手続き〉【FPが解説】

画像:PIXTA

認知症になると財産は凍結されてしまいます。金融機関の手続きは、本人でなければ行えないものが多く、最悪の場合、介護にかかる費用など介護者が負担しなければならない事態が起きてしまうのです。そのようなことになる前に、事前にできる対策はあるのでしょうか。本稿は、FP歴27年の安田まゆみ氏の著書『もめないための相続前対策: 親が認知症になる前にやっておくと安心な手続き』(河出書房新社)から、一部を抜粋して紹介します。

認知症であることを金融機関はどのようにして知るのか

「認知症になると資産が凍結しますよ。金融機関から、お金が引き出せなくなります」とお伝えすると、必ず「金融機関は、どのようにして本人が認知症だとわかるのか?」という質問を受けます。

確かに、「私は認知症です」とゼッケンをつけて金融機関へ行くわけでもないですからね。認知症だということを、金融機関はどのようにして判断するのでしょうか?

認知症といっても、症状は様々です。ひとによって、日常生活でできることも違ってきます。

私のご相談者の例ですが、 ご相談者のお母様は、認知症と診断された後も、ひとりで金融機関の窓口でお金をおろすことができていました。金融機関は、自分で入出金や振り込みの手続きができている間は、特に何もいいません。

そのうち、通帳や印鑑、キャッシュカードの紛失が相次いで起きました。「暗証番号がわからなくなった」と、窓口で何度も繰り返すようになり、ほどなくして、金融機関は本人の判断能力が著しく低下したのではないかと判断して、口座を凍結しました。「生活費がおろせなくなった」と母親から電話があって初めて、ご相談者は母親の金融機関口座が凍結されたことを知りました。

この場合の金融機関口座の「凍結」は、相続が起きた際の「凍結」とは少し違います。口座の名義人が亡くなった場合の「凍結」は、金融機関がその人が亡くなったことを知ったタイミングで、その口座名義人の入出金、振り込みや口座引き落とし、通帳の記帳などのすべての口座の取引を止めます。

認知症で判断能力がかなり低下していると金融機関が判断した場合の「凍結」は、「口座の取引を大幅に制限する」ことです。入出金や振り込み、カード・通帳等の紛失・再発行、定期預金の解約・契約等の手続きができなくなります。ただ、口座引き落としや他からの振り込み(家賃の支払いや配当金を受け取るなど)は、銀行にもよりますが、そのまま続けられるところが多いようです。

暗証番号さえわかれば安心?

親が認知症になって、財産管理ができなくなったら「キャッシュカードの暗証番号を事前に聞いておいて、子どもたちが管理する」または、「代理人カードを作っておいて親が銀行に行かれなくなったときに備える」という方法はどうでしょうか? との質問も多く受けます。

金融機関は、家族であっても親のキャッシュカードで入出金を行うことを原則認めていません。ですが、実際には親のキャッシュカードと暗証番号がわかれば、ATMでの入出金が可能です。もちろん、親の同意があってのことですが。親が急に入院した場合など、この方法で家族が入出金を行っているケースは多いと思います。緊急事態には、対応してもよいでしょう。

キャッシュカードの暗証番号さえわかれば、認知症になっても困ることはないのではないか。そんな声が聞こえてきますが……。

この方法のリスクは、通帳やキャッシュカードの紛失や破損、磁気不良などを起こした場合です。本人の認知症が進行していると、銀行での本人確認が困難になり、再発行の手続きができなくなる可能性があります。それ以降、引き出すことはできなくなります。

「代理人カード」ではどうか

では、代理人カードはどうでしょうか?

代理人カードは、本人が手続きをして、代理人カードを受け取り、それを代理人に渡します。どの金融機関も本人でないと手続きはできないようになっています。親が元気なうちに、カードを作っておいてもらうのはよいと思います。

親が入院してしまっても、代理人カードを利用して必要なお金を引き出すことができます。入院費などの振り込みが、親と遠く離れたところに住んでいても、可能になります。

代理人カードは、利便性はありますが、本人のキャッシュカードと同じように、紛失や破損、磁気不良などが起きて、再発行の手続きが必要になった場合には、本人が窓口に行かなければなりません。その際に親の認知症が進んでいれば、本人確認ができないので、再発行はできません。

金融機関によっては、「代理人カード」とは別に、代理人指名」というシステムがあるところもあります。本人の判断能力のあるうちに出金の代理人をあらかじめ指名しておくことで、指名された家族は窓口で出金ができるような仕組みです。

引き出せる額には制限がありますが、代理人指名制度を利用することにより、代理人が取引を行うことができます。ただし、本人の判断能力が著しく低下してしまった場合には、代理人での取引もできなくなります。

2021年に全国銀行協会が取引の指針の見直しを発表しました(「金融取引の代理等に関する考え方および銀行と地方公共団体・社会福祉関係機関等との連携強化に関する考え方」)。

内容を簡単に要約すると、

・認知症などの高齢者が行う金融取引は、成年見制度を利用してもらうことが基本

・成年後見の申し立ての手続きが完了するまでの間など、一定の要件を満たした場合は、「本人の利益に適合することが明らかである場合に限り」家族による預金の引き出しを例外的に認める

・認知症になる前であれば、本人が支払っていたであろう本人の医療費、介護費用、家賃や介護施設利用料、公共料金等の支払いについて、請求書などの支払いの根拠となるものを提示してもらって、対応する

というものです。

家族の困りごとが、少しは減ると思われるこの指針が、全国の銀行に広がっていくのには、まだまだ時間がかかると思います。

安田 まゆみ

ファイナンシャルプランナー

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