大切な財産「自分が死んだら妻に、妻も死んだら甥っ子に引き継ぎたい」…この希望を叶えるための解決策とは?【相続のプロが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月26日 7時45分
一般的な遺言では、「自分が亡くなった後、財産を誰に渡すか」ということしか指定できません。しかし、自分の財産を相続した人が亡くなったあと、その次に財産を引き継いでもらいたい人を指定したいという場合もあるでしょう。本記事では、松尾拓也氏の著書『「おふたりさまの老後」は準備が10割』(東洋経済新報社)より一部を抜粋・再編集し、財産を引き継ぐ順番まで指定できる「家族信託」という制度について詳しく解説します。
Q. 自分が亡くなり、妻も亡くなった後、自分の甥に残したい財産があるのですが……。
A.財産を引き継ぐ順番まで指定したいのであれば、「信託」という方法があります。
一般的な遺言では、「自分が亡くなった後、財産を誰に渡すか」ということしかできません。しかしこの質問のように、自分の財産を相続した人が亡くなったあと、その次に財産を引き継いでもらいたい人を指定したいという場合もあるでしょう。そんなときはどうすればいいのでしょうか?
先祖代々の資産家のケースはどうする?
たとえば、妻とおふたりさまだった先祖代々の地主さんの場合。自分の死後、いったん財産はすべて妻に相続させ、いずれ妻も亡くなったときは、妻の親族ではなく、自分の親族に相続させたいというケース[図表1]を見てみましょう。
この場合、遺言がないとご自身が亡くなった際には兄弟姉妹にも4分の1の法定相続分があります。では、次に妻が亡くなったときのことを考えてみましょう。
この場合、妻の相続人は、妻の兄弟姉妹、甥・姪など、妻と血縁関係にある人になります。つまり、遺言を残していないと、
①自分が亡くなったときには、妻が相続で苦労する
②妻が亡くなると、先祖代々の土地が妻の身内に渡る
ということになります。一般的な遺言では、自分が亡くなった後の財産の配分しか決められないので、
●苦楽をともにした妻に財産をすべて残す
あるいは、
●土地や不動産など先祖代々の財産は自分の家系に、自分たちの代でつくり上げた財産は妻に残す
といったパターンになります。しかし、これでは、自分が亡くなった後は妻にすべての財産を渡し、妻が亡くなったらその後は自分の家系に渡すという、当初の望み通りではありません。
解決策は「家族信託」
そこでまず考えられるのは、次の方法です。
●自分が「妻に全財産を残す」という遺言を書いたうえで、妻に「夫の身内に全財産を残す」という遺言を書かせる
しかし、亡くなる順番は誰にもわかりませんし、遺言の内容はあくまでも本人の自由意思に基づくものです。妻が夫と同じ考えとは限りませんし、妻の遺言書の内容に、夫は口出しできません。
こういった場合に活用できるのが「家族信託」という制度です。
Q. 「家族信託」とはどういう制度ですか?
A. 財産を信頼できる家族(親族)に託し、管理をしてもらう仕組みです。
通常、自分の財産は「管理する」権利と「利用する」権利の両方を自分で行使しますが、家族信託では「管理する」権利だけを他の人にお願いします。
[図表2]を見てください。
おふたりさまの場合、何もしなければ財産を管理するのも利用するのも、ご夫婦で完結します。そこで、家族信託を開始し、夫側の甥に「管理」を託します。そうすると、自分(夫)亡き後、妻は財産を使う権利はそのまま、甥は財産を使う権利はありませんが、財産を管理する権利をもちます。妻が亡くなると信託は終了し、財産は甥のものになります。
このように、管理する人と利用する人を分けることができるのが「家族信託」です。図の③の状況では、基本的に財産管理については甥の判断で行えますが、受益者である妻の意向に沿った形での管理が求められます。
たとえば残された妻が認知症になり施設に入所した場合、管理権のある夫の甥が施設などへの支払い業務を行います(この場合の報酬は、無報酬でも有償でもかまいません)。
このように、信託という仕組みを使うことで、将来的な財産を引き継ぐ順番まで指定していくことが可能になります。
ただし、信託の設定後30年を経過した後は、受託者の死亡により信託は終了することになっていますので、その程度の時間軸で信託の検討をするようにしましょう。
松尾拓也 行政書士/ファイナンシャルプランナー
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