自分が先に逝くか、それとも…〈年金18万円〉81歳のおひとり様、雨漏りの天井を見つめ絶望「こんな結末を迎えるとは」
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月13日 7時15分
![自分が先に逝くか、それとも…〈年金18万円〉81歳のおひとり様、雨漏りの天井を見つめ絶望「こんな結末を迎えるとは」](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61959_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
住まいの経年劣化は避けられず、マンションであれば大規模修繕工事を「12年周期」で考えるのが一般的で、築40年以降は建て替えも視野に検討するケースが多いようです。しかし何をするにしても入居者の合意形成が必要なマンション。うまくいくとは限らないようです。
築古マンション激増…10年で4倍に
――ここを買ったのは、オイルショックの前だったか
都内の分譲マンションで暮らす、81歳の男性。30歳になる前に通勤の便を考えてマンションを購入。30歳になる前の決断だったといいます。翌年には長男が誕生し、その2年後には次男が誕生。次男は大学卒業のタイミングで、長男は結婚のタイミングで実家を出て、夫婦二人暮らしがスタート。ただ奥さんは2年前、79歳で他界し、以来、男性は家族との思い出が詰まったマンションでひとり暮らしを続けています。
――当時はモダンだったけど、さすがに50年も経つとボロボロだよ
そう天井を見上げた先にあるのは、茶色なシミ。雨漏りだそうです。
――先に自分が死ぬか、それともこのマンションが崩れるか……
国土交通省『令和5年度マンション総合調査』によると、築40年以上のマンションストック数は2012年調査では29.3万戸でしたが、2022年調査では125.7万戸。この10年の間に、4倍以上にも膨れ上がりました。この先、10年後には260.8万戸、さらに10年後には445.0万戸になると推測しています。
マンションが老いる一方で、入居者の高齢化も進んでいます。マンション入居者で最も多いのは「60代」で27.8%。次いで「50代」が23.7%、「70代」が21.7%。また5年前調査と比較すると、「30歳以下」は7.1%→6.2%と減少する一方で、「70代」は22.2%→25.9%と増加しています。
また3ヵ月以上空室の戸数割合をみていくと、築10年以内のマンションでは「0%=空室なし」が71.3%であるのに対し、築40年以上のマンションでは32.1%。つまり6割強のマンションが「空室あり」と回答。また所在不明・連絡先不通の戸数が1戸でもあるマンションは全体の3%ほど。築年数が古くなるほどその数は増えていき、1975年以前に建てられたマンションでは12.1%にもなりました。
空き家が多かったり、所有者に連絡がつかなかったりすると、修繕に大きな影響が出るようになります。実際、マンションなどの集合住宅において、修繕費の不足はいま大きな社会問題になっています。今回の調査では4割のマンションで、「修繕積立金残だが計画に比べて余剰がある」と回答する一方で、「計画に対して20%超の不足」と回答したマンションは11.7%。10棟に1棟程度の水準でした。
また老朽化対策についての議論の有無を聞いたところ「議論を行っていない」が66.1%で、「議論を行い、建て替えや解体、修繕・改修の方向性が出た」というマンションは13.3%にとどまっています。老いるマンション(マイホーム)を前にしても、話し合いのテーブルにつくこともない……それが現状です。
最期までいるつもりでも大規模修繕や建て替えはNO…「老いるマンション入居者」の実態
――生活ぶりは、可もなく不可もなく
毎月の生活費は、男性の年金月18万円(手取りでは16万円ほど)で賄っているといいますが、「そもそも、この年になると最低限のお金しか使わないから」と男性。孫もちょうど大学を卒業し、社会人に。「もう、ジジイがお小遣いをあげる年齢じゃない」といい、毎月の年金もあまる状況だといいます。
家計としては余裕はあるものの、空室も目立つ築50年のマンション、修繕となると積立金ではとても足りず入居者のプラスαの出費は避けられません。また建て替えという話も出ていますが、多くの入居者が反対しています。
――寿命が尽きるまでここにいるつもりだけど、それが明日かもしれない。それで建て替えは考えられない
――いつまでここに入れるか分からない。それでお金をさらに出して修繕は……
高齢者ばかりのマンションだからでしょう。未来の話を積極的にする人は誰一人といないのです。
――家族との思い出も汚れていくようで……せめて、雨漏りだけでも直せたら
一度、見てもらったものの、雨漏りの原因はこの部屋だけにあるわけではなく、マンション全体の問題だということが分かったといいます。つまり、男性ひとりだけでは、どうすることもできないのです。
――こんな結末を迎えるなんて、思ってもみなかったよ
とポツリ。50年前、家族との未来を思い描いた日々を想います。ボロボロの実家をみて「父さん、うちに来なよ。子ども(男性の孫)たちの部屋も開いているし」と子どもらは同居を提案してくれます。しかし、いまさら他の家に住むことは考えられない……雨漏りで茶色のシミができた天井を見るたび、どうすることもできない絶望感に襲われるといいます。
今後、築年数40年以上のマンションが急増していくなか、老いるマンションに取り残される高齢者たちも同じだけ増えていきそうです。
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