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小麦やライ麦の外皮に含まれる“健康長寿”成分「アルキルレゾルシノール」の有効性【医学博士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月25日 14時30分

小麦やライ麦の外皮に含まれる“健康長寿”成分「アルキルレゾルシノール」の有効性【医学博士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

健康で長生きしたい……誰もが考えるこの願いを叶えてくれるかもしれない成分として、「アルキルレゾルシノール」が注目されています。この「アルキルレゾルシノール」とはいったいなんなのか、『最新科学で発見された 正しい寿命の延ばし方』(総合法令出版)より詳しくみていきましょう。著者で代謝機能研究所所長の今井伸二郎氏が解説します。

長寿遺伝子の機能をアップさせる食品

ザクロや菊よりも健康長寿に有効な「アルキルレゾルシノール」とは

サーチュイン遺伝子の発現を促進する成分を多く含む食品としては、ブドウ種子、ザクロ、食用菊などがあります。これらの食品素材はいずれも健康長寿に有効な食品であると期待できますが、これらよりももっと期待の高い「アルキルレゾルシノール」とよばれる成分があります。 ※サーチュイン遺伝子:老化や寿命の制御に重要な役割を果たすとされる遺伝子のことで、「長寿遺伝子」とも呼ばれている。

サーチュイン遺伝子の発現量をアップする成分ではなく、サーチュイン遺伝子が転写翻訳され産生されるサーチュインタンパク自体に働き、脱アセチル化を促進させる働きが確認された成分です。小麦やライ麦などの穀類の外皮、麦類でいえばふすまといわれる部分に多く含まれています

[図表1]をご覧ください。サーチュインの脱アセチル化の反応速度を表したものです。横軸は時間を示し、縦軸は反応によりアセチル基が外された量を示しています。自動車の速度のように一定の時間あたりの量を表しています。自動車の場合1時間に移動する距離で表すように、反応速度の場合も一定時間あたりの反応生成物の量で表します。

この図でいえば、横軸あたりのアセチル基が外された量、すなわち傾きで示すことができます。

実線で表した線はアルキルレゾルシノールを添加せずに反応させた場合を、破線で表した線は添加した場合を示しています。

実線よりも破線のほうが、線の傾きが大きいのが分かります。この傾きの違いが、アルキルレゾルシノールにサーチュインの脱アセチル化の促進作用があることを示す証拠です。

この[図表1]でアルキルレゾルシノールに換えてレスベラトロールを添加した場合の線を2本線で表しました。レスベラトロールの場合は実線とほとんど傾きは変わりません。すなわち、レスベラトロールにはサーチュインの脱アセチル化の促進作用がないということです。

ヒトの細胞を使った実験では?

この実験は動物細胞を用いずに行う、セルフリーとよばれる種類の実験ですが、細胞を用いた実験によっても評価を行いました。その結果が図表2です。  

この実験にはヒトの細胞を用いました。細胞には核という部分があります。核の中に遺伝子が格納されています。その遺伝子を安定させて格納する役割を持った物質でヒストンとよばれるタンパク質があります。このヒストンもアセチル化していて、遺伝子の安定化に強く寄与しています。

そこで、細胞にアルキルレゾルシノールやレスベラトロールを添加して培養した後、このヒストンのアセチル基の量を測定してみました。

[図表2]に示すように、アルキルレゾルシノールやレスベラトロールを添加しなかった無添加に比べ、アルキルレゾルシノールを添加したヒストンのアセチル基は減少していました。レスベラトロールを添加した場合も同じようにアセチル基は減少していました。

すなわち、アルキルレゾルシノールもレスベラトロールも、ヒストンの脱アセチル化が促進されたのです。レスベラトロールはセルフリーの実験では脱アセチル化活性が見られなかったのに、細胞では見られたことは、レスベラトロールがサーチュイン遺伝子の遺伝子発現量を増加し、サーチュイン自身の量を増やした結果だと思われます。

この[図表2]で、ヒストンのアセチル基量はアルキルレゾルシノールを添加した場合より、レスベラトロールを添加した場合のほうが減少していることが分かります。

オスとメスで寿命の延び方が違う?

それなら、アルキルレゾルシノールよりレスベラトロールのほうが、活性が強いのでしょうか? ところが、そうでもないのです。前述したようにレスベラトロールはさまざまなメタボリックシンドロームに対して強い効果を示します。

また、寿命を延ばす効果もショウジョウバエなどで確認されています。それらの評価法を用いて、アルキルレゾルシノールとレスベラトロールと同じ濃度で比較してみると、いずれもレスベラトロールよりもアルキルレゾルシノールのほうが効果が強いことが確認されました。それらの評価法のうち、ショウジョウバエを用いた寿命延長効果を示します。

[図表3]はショウジョウバエの生存率を縦軸に、横軸には日数を示しています。ショウジョウバエの餌に何も混ぜない群を対照群として、餌にアルキルレゾルシノールを混ぜた群、レスベラトロールを餌に混ぜた群の3群で比較しました。もともと各群200匹で飼育を始め、その数字を1として表記しています。ハエは徐々に死に始め、普通食の対照群は70日後には全てのハエが死にました。

一方、アルキルレゾルシノールとレスベラトロールを混ぜた餌を食べた群では、それぞれ生存曲線が右にシフトし、寿命が延びています。

アルキルレゾルシノールでは、平均寿命がおよそ10日間程度延びています。この寿命延長はヒトに換算すると10年から15年程度に匹敵します。レスベラトロールの場合も寿命延長は見られますが、その平均寿命の延長は8日程度に留まりました。この結果はいずれもオスの場合です。

メスの場合、アルキルレゾルシノールの寿命延長はオスの場合と同程度ですが、メスのレスベラトロールにおける生存曲線は、対照と同様で寿命延長が見られないのです。これは一体、どういうわけでしょうか?

その答えの前にもう少し図表3の説明を続けます。今までの説明は図表3の上側に示したグラフ正常ハエのオスとメスについてでしたが、下側のグラフはサーチュインの遺伝子がもともと欠損しているハエで同じような実験を行った結果を示しています。

こちらの場合は対照に比べ、アルキルレゾルシノールもレスベラトロールも寿命が延びていません。すなわち、ハエの寿命が伸びる現象にはサーチュインが関係していることを証明した証拠です。

メスの寿命は延びない?

レスベラトロールによる寿命延長がメスでは観察されないことは、我々の研究結果以外に別のグループによる論文でも確認済みです。ヒトの細胞を用いた実験では、ヒストンの脱アセチル化の程度を比較するとアルキルレゾルシノールよりレスベラトロールのほうがより強く反応していました。

それなのに、なぜアルキルレゾルシノールのほうが寿命が延びるのでしょうか? 理由ははっきりとは分かっていませんが、ただいたずらに強く脱アセチル化を進めればいいということではなく、ベストな脱アセチル化の程度がありそうです。

レスベラトロールは遺伝子発現を促進させ、その結果サーチュインの量を増やすことで脱アセチル化を進めています。一方でアルキルレゾルシノールの場合、遺伝子発現の促進はせず、サーチュインの量は変わらずに、脱アセチル化の反応速度を上げることで脱アセチル化を進め、ベストな状況に至るのだと思われます。

遺伝子の発現はそのメカニズムにおいて別の要素も関係することがオスとメスでの違いを導いた可能性があります。

<まとめ>

・ブドウ、ザクロ、食用菊より期待できるアルキルレゾルシノール

・アルキルレゾルシノールは小麦やライ麦などの穀類の外皮に多く含まれている

今井 伸二郎 医学博士 代謝機能研究所所長/東京工科大学名誉教授/藤田医科大学客員教授

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