フィリピンと米国「原子力協定」…マルコス大統領、2032年までに原発稼働目指す
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月15日 7時15分
![フィリピンと米国「原子力協定」…マルコス大統領、2032年までに原発稼働目指す](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_61972_0-small.jpg)
写真:PIXTA
一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、カーボンニュートラルに向けての原子力発電の導入動向と、最新のフィリピンの製造業の動向についてみていきます。
クリーンエネルギーはフィリピンの新たな成長産業になるか?
米国とフィリピンは、米国企業がフィリピンに核技術や材料を輸出できるようにする「民生用原子力協力」を7月2日に発効させました。この協定により、両国間のクリーンエネルギーおよびエネルギー安全保障の協力が強化され、長期的な外交および経済関係も強化されると、米国務省は声明のなかで述べています。
この協定は昨年11月に署名され、「123協定」として知られており、米国からフィリピンへの核物質、機器、および部品の輸出のための法的枠組みを提供します。
米商務省によると、フィリピンでの原子力エネルギー産業の発展に関心を持つ米国企業が最大で40社に上るとされ、米国大使館はフィリピンに技術を持ち込もうとしている米国企業で構成される業界主導のワーキンググループを設立しました。業界主導のグループは7月31日に初会合を開き、フィリピンエネルギー省(DoE)の代表者も出席する予定です。さらに、米国商務省は11月第2週にサプライヤーフォーラムを開催し、米国企業がフィリピンDoEとのパートナーシップについて議論する機会を提供するとしています。
一方、フィリピン貿易産業大臣パスクアル氏は、123協定がフィリピン政府のクリーンで持続可能なエネルギーへのコミットメントを強調。これは国の気候変動対策および経済目標達成に不可欠であると同時に、この協定がクリーンエネルギーへの投資を引き寄せ、フィリピンを主要な投資先として強化する機会となると述べました。
昨年5月、マルコス大統領がワシントンD.C.を訪問した際、Ultra Safe Nuclear Corp.およびNu Scale Power Corp.がフィリピンに原子力エネルギー施設を導入することに関心を示しました。NuScaleは、小型モジュール炉技術で知られています。Ultra Safe Nuclear Corp.は、今年初めに米国商務省長官ジーナ・M・ライモンドが率いる米国大統領貿易投資ミッションの一環としてフィリピンを訪れています。彼らはフィリピンでのパートナーシップを模索しており、一部の発電パートナーと秘密保持契約(NDA)または具体的な覚書(MoU)を締結する過程にあります。
マルコス大統領は、2032年までに原子力エネルギーがフィリピンのエネルギーミックスの一部になることを目指しています。
フィリピン製造業の最新事情…生産高は鈍化傾向に
フィリピンの製造業生産高は5月に鈍化しました。
フィリピン統計局(PSA)が発表した最新の産業別統合調査(MISSI)の予備結果によると、工場生産高は、5月は前年同期比3.2%増となりました。しかし、5月の生産高伸び率は、4月の改定値6.3%、1年前の同月6.1%から鈍化しています。また前月比では、4月の▲1.1%減から5月には1.5%増となりました。1月から5月までの工場生産高成長率をみてみても平均0.9%で、前年同期の6.3%から大幅に鈍化しています。
S&Pフィリピン製造業購買担当者景気指数(PMI)は5月に54.1となり、4月の54.3からわずかに低下。50を超える値は製造業の改善を示し、50未満は悪化を示します。5月の製造業の伸びの鈍化は、需要の低迷と見られています。需要は依然としてインフレにより抑制されていて、鈍化傾向にはあるものの、人々はまだ物価高を実感している状況です。供給面では、メーカーはコスト上昇、税関での遅延、交通渋滞などにも対処しなければならい状況が続いています。
需要供給曲線でみると、どちらも左にシフトしており、需要、生産量ともに減少している状況です。高インフレとペソ安が製造業生産の鈍化の原因です。ペソ安により、輸入される製造業投入財の価格を引き上げています。
インフレは5月に光熱費や交通費の上昇が主因となり、6ヵ月ぶりの高水準となりました。消費者物価指数は、5月に前年同期比3.9%上昇し、4月の3.8%を上回ったものの、前年同月の6.1%からは鈍化しています。
主要3業種である機械・装置を除く組立品(4月の29.9%から5月の▲13.4%)、化学製品(4月の16.6%から5月の▲17.7%)、コンピュータ・電子・光学製品(4月の5.2%から5月の▲0.3%)の生産縮小が全体の生産を圧迫しました。他の15の産業部門でも5月に生産が縮小しました。一方で、石炭、石油精製製品の製造は、4月の18.7%から5月の53.6%と、最も高い伸びとなりました。
平均キャパシティ・ユーティライゼーション(産業資源がどの程度モノの生産に使用されているかの度合い)は、5月に平均75.5%。これは前月の75.3%、2023年5月の73.5%よりもわずかに高くなっています。インフレは支出を抑制する傾向がありますが、インフレがより改善すれば、6月の製造業はより高い成長を遂げる可能性があると見られています。
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