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量は「手ばかり栄養法」で決めよう!腎臓に配慮した食事をするための蛋白質の目安【透析専門医が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月21日 11時0分

量は「手ばかり栄養法」で決めよう!腎臓に配慮した食事をするための蛋白質の目安【透析専門医が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

健康な腎臓を保つためには一体どんな食生活がいいのでしょうか。医師の別府浩毅氏は著書『透析専門医が教える! 健康長寿の人が毎日やっている腎臓にいいこと』の中で、「蛋白質を調整することが重要」と言っています。一体どういうことでしょうか? その理由を本書から紹介します。

■量は「手ばかり栄養法」で決めよう

・手の平に食材を乗せることで、適切な大きさが簡単にわかる

腎臓に配慮した食事をするには、蛋白質の量を調整することが重要であり、その目安は「標準体重×1g」といわれています。これを厳密に行うためには、「腎臓病食品交換表」というものを使い、食材を計量する必要がありますが、患者さんは「何g」と言われても、なかなかわからないので、現実的には難しいでしょう。

そこでおすすめしたいのが、手の平を使う簡易的な方法である「手ばかり栄養法」です。手ばかり栄養法は、いまや栄養指導の世界においては有名な指導法であり、多くの栄養指導の先生も取り入れています。この方法によれば、「自分の手の平に載せられる程度が適切な量」とのことです。蛋白質の制限がない人は、1食あたり、片方の手の平に載る量を目安にしてください。

蛋白質制限が必要と言われた人は、「標準体重×0.8g」が目安なので、ご自身の手の平の3分の2程度を目安にしましょう。いかがですか? 「思ったよりも少ない…」と感じられるのではないでしょうか。

・「手ばかり栄養法」のおかげで摂取量のコントロールが可能に

わたし自身も、臨床の現場でもっとも難しいのは蛋白質のコントロールなのではないか、と感じています。なぜなら、実際に行うことが非常に難しいものだからです。1日に食べられる蛋白質(肉・魚・卵・大豆製品など)の目安は両手に載るくらい、1食では片方の手の平くらい。食材を積み上げるわけではないため、本当に少しの量です。

「この量で足りるのかな?」と思ってしまうかもしれませんね。でも、腎臓が悪い人は蛋白質を制限しなければいけないため、この量しか摂れないのです。「手ばかり栄養法」のおかげで蛋白質の摂取量がイメージしやすくなり、コントロールしやすくなった人も増えています。ただ、腎臓病の食事調整は食事療法のなかでもっとも難しいので、慢性腎臓病(CKD)と診断されている人は、定期的に医療機関で管理栄養士の指導を受けることをおすすめしています。

・若い人の痛風は、食べすぎが原因

腎臓が悪くなるのは、もちろん高齢の人だけではありません。毎日いい食事をたくさん食べたり、コース料理を頻繁に食べたりしていると、30代でも痛風になってしまいます。痛風は、もちろん腎臓と関係があります。腎臓が悪くなると、原因となる物質を外に出せなくなるため、痛風になってしまうのです。

ただ、若い人の痛風は、腎機能の低下が原因とは言い切れないことが多くなっています。若い人の腎臓は排泄する能力が高いのですが、いくらパワーのある若い腎臓であっても、処理しきれないほど痛風の原因となる食事を摂っていれば、痛風になってしまいます。痛風の原因となる典型的なものは、プリン体を多く含むアルコールや肉類です。

そして、よく見落とされがちなのですが、糖質も尿酸値を上げる原因の一つになっています。つまり、おいしいものを摂ることも要因ではありますが、それ以上に「食べすぎ」が原因なのです。ご紹介した「手ばかり栄養法」でわかるように、「手の平に載る程度」という視点で見ると、毎日食べすぎて食事を摂りすぎているな、と気づく人も多いのではないでしょうか。

もっとも、この「手ばかり栄養法」で目安とされる量は、ある程度腎臓が悪くなった人に向けたものなので、元気な人にとっては少ないと感じるのは当然でしょう。

・サプリメントではなく、食事でコントロールしよう

腎臓が悪い人は、ほぼすべての栄養素を制限しなければならず、食べすぎはもってのほか、と言えます。ただ、生活するためにはカロリーの摂取も必要なので、「どうすればいいの?」と悩んでしまう人も多いでしょう。それほど大変なことなのです。カロリーをサプリメントで補うこともできますが、値段が高いので、誰もが継続できる手段ではありませんね。

いくら身体のためとはいえ、毎日淡々と決められた食事を続けられる人は、決して多くはないでしょう。ある程度の食生活の乱れは、当たり前のようにあるのではないでしょうか。もっとも、体重が大幅に増えるような食べ方をしたら、翌日から数日はまったく食事をしない、という方法もよくありません。腎臓が悪くなりきっていない人が食べすぎたのであれば、その翌日から数日かけて食事の量を減らす形で調整するのがいいでしょう。

そのためにも、毎日体重を測ってください。そして、体重が増えていたら、その日は調整に取り組みましょう。毎日体重を測ることは、腎臓が悪い人だけではなく、心臓が悪い人にもおすすめの方法です。ぜひ、日々の調整を始めてみませんか?

・ダイエットして痩せても、体重の増減があった事実は体内に残っている

ダイエットで急激な体重の増減を繰り返すことは、腎臓はもちろん、すべての臓器への負担となります。 太ると体重が重りとなって、膝に負担がかかりますよね。内臓についても、同じことが起こります。食べすぎは太るだけでなく、塩分の摂りすぎで血圧が上がり、腎臓に負担をかけるものです。

痩せればいい状態に変化しますが、血圧や血糖値、コレステロールが上がった悪い状態も、負の遺産として身体のなかに残り続けてしまうのです。太っても、ダイエットで元に戻ればいい、というわけではありません。急激に体重が増えたり減ったりする生活習慣は、絶対に避けるべきです。

意外な盲点「脂質管理」をきちんとしよう

・腎臓にダメージをきたす「脂質異常」は避けるべき

生活習慣病において、高血圧や糖尿病に注目する人は多いのですが、「脂質」に注目する人は少なく、あまり光が当たっていない印象があります。でも、わたしは糖尿病、高血圧、脂質異常が生活習慣病の3本柱であると考えています。脂質異常のリスクも頭に入れておくべきです。

三大栄養素である糖質、蛋白質、脂質は、腎臓病と深い関わりがあります。まず、腎臓病を引き起こす原因疾患として一番多い糖尿病では、血糖管理が重要なことはよく知られていますね。また、すでにお話しした通り、腎臓には蛋白質管理も非常に大切です。そして、血液の4分の1が流れている腎臓は「血管のかたまり」とも言えるため、腎臓と血管の状態をよくすることは、イコールです。

血管を丈夫にするために重要なのは、血糖管理、血圧管理、脂質管理であり、血管にダメージをきたす脂質異常も避けるべきなのです。

・LDL(悪玉)コレステロールによって、動脈が詰まってしまう

脂質異常は、LDL(悪玉)コレステロールが高い場合とHDL(善玉)コレステロールが低い場合、中性脂肪が高い場合の3つに分かれます。そして、脂質異常のうち、動脈硬化をきたす最大の原因と言われているLDLコレステロールをきちんとコントロールする食事や薬物治療は、非常に大切です。とくに、腎臓の悪い人やすでに脳梗塞・心臓病といった動脈硬化の症状が出ている人は、しっかりと脂質を下げなければいけません。

一般的にLDLコレステロールが増えやすい食事は、脂質の多いものです。なかでも、加工食品を使った食事には注意が必要です。また、肉は火を通すときに酸化してしまうことに気をつけ、油を使い回すような揚げ物も身体に悪いので、避けるべきでしょう。

ところで、なぜLDLコレステロールが増えるとよくないのでしょうか? それは、血液中にLDLコレステロールが増えすぎた状態が続くと、活性酸素の影響を受けて「変性LDL」という物質になり、血管を傷つけてしまうからです。傷ついた血管には、そのすき間からLDLコレステロールが入り込み、酸化して溜まっていきます。

わたしたちの身体には、こうした異物を排除しようとする「掃除屋(マクロファージ)」が存在し、異物を取り込んだマクロファージは、サイトカインという物質を出して炎症反応を起こします。炎症反応の結果、動脈に膨らみ(プラーク)をつくるのですが、プラークはニキビのように破れてしまうことがあります。そのとき、血液のかたまり(血栓)ができてしまうと、動脈が完全に詰まる原因となるのです。

これが冠動脈で起こると狭心症や心筋梗塞となり、脳動脈で起こると脳梗塞となり、命に関わることに…。このように、LDLコレステロールが増えると、さまざまな病気を併発するリスクが増えてしまうため、脂質管理の努力はとても大切と言えるでしょう。

なお、最近はコレステロールに関する考え方が諸説出ていて、厚生労働省も2015年、コレステロールの上限の目標量を撤廃しました。これは医者のなかでも賛否が分かれているところであり、動脈硬化を発症している人はコレステロールを下げたほうがいい、という考えの医者がいまでも多いことはたしかです。  

別府浩毅

医師

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