1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

蛋白質の不足分は脂質と炭水化物で補おう!腎臓の悪い人が摂るべき栄養素の注意点【透析専門医が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月23日 11時0分

蛋白質の不足分は脂質と炭水化物で補おう!腎臓の悪い人が摂るべき栄養素の注意点【透析専門医が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

健康な腎臓を保つためには一体どんな食生活がいいのでしょうか。医師の別府浩毅氏は著書『透析専門医が教える! 健康長寿の人が毎日やっている腎臓にいいこと』の中で、「蛋白質不足分になったときは脂質と炭水化物を増やすしかない」と言っています。一体どういうことでしょうか? その理由を本書から紹介します。

蛋白質の不足分は、脂質と炭水化物で補おう

・エネルギー不足にならないこと、肥満にならないことに注意が必要

腎臓の悪い人は蛋白質の摂取量を抑える必要があるため、蛋白質不足になったときにはほかの方法を考えるしかありません。厚生労働省が推奨している「蛋白質20%前後の摂取」が難しい場合は、炭水化物や脂質の摂取を増やすしかないことになります。三大栄養素と言われる蛋白質、脂質、炭水化物は、身体のエネルギー源をつくるものですが、エネルギー効率だけで言えば、脂質を多くするとエネルギーを補うことができます。

炭水化物と蛋白質は、1g摂取すると4kcalのエネルギーが生成されますが、脂質は1gで9kcalと、2倍以上のエネルギーを生成してくれるからです。エネルギーを得るために効率よく摂取できるのは脂質なのですが、すぐカロリーオーバーになってしまうことも、同時に理解しておく必要があるでしょう。日本人の食生活は欧米化が進み、和食から肉食に変化してきています。脂質の摂取量増加にともなって肥満が増えてきているのは、社会問題の一つと言えますね。

・脂肪酸について、覚えておきたい3つのポイント

脂質の主な構成要素である脂肪酸は、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれます。ここでぜひ知っておいてほしいことが、3つあります。

(1)オメガ3系脂肪酸の青魚とアマニ油は積極的に摂取 これは腎臓だけでなく、動脈硬化をコントロールすることもできる、身体にいい油なので、できるだけ摂るようにしましょう。

(2)MCTオイルは、腎機能障害でもカロリー摂取が必要な人におすすめ MCTオイルは、中鎖脂肪酸100%のオイルです。エネルギーとしてすばやく変換されるため、体脂肪として蓄積されない特徴があります。消化・吸収が早く、カロリー補充がすぐにできるので、カロリーを多めに摂る必要がある腎臓の悪い人におすすめです。常温で、サラダなどに加えて摂りましょう

(3)オメガ6系脂肪酸はバランスよく摂取することが重要 不飽和脂肪酸のなかで、積極的な摂取が推奨されるオメガ3系脂肪酸とは異なり、オメガ6系脂肪酸とオメガ9系脂肪酸は炎症を起こす可能性があるため、積極的に摂らないほうがいいものです。オメガ6系脂肪酸には、アラキドン酸という炎症を起こしやすい要素が含まれており、血管の状況を悪くする可能性があります。オメガ6系の食品は、サラダ油、肉、卵などです。

脂質面だけで見ると身体によくないものなのですが、蛋白質を補充する観点で見ると摂取したほうがいいものなので、バランスよく摂ることを心がけましょう。

腎機能が低下したら、カリウムやリンを含んだ食事を減らそう

・茹でることでカリウムを除去し、リンも軽減できる

腎臓は体内の電解質を調整する働きをしていますが、腎機能が悪くなると調整がうまくいかず、老廃物が溜まってしまいます。溜まらないようにするには、老廃物になるものをなるべく口にしないようにすることです。茹でることで、老廃物となる部分をカットすることができます。

腎機能の悪い人は、食事のメニューを選ぶときに気をつけることで、身体にかかる負担を軽減させましょう。カリウムもリンも電解質であり、腎機能の悪い人には要注意な2大ミネラルです。ただ、どちらも身体に必要なものなので、身体に負担とならない食べ方をぜひ知っておきましょう。

・カリウムを腎臓から排泄できなくなる高カリウム血症に注意

カリウムは人体に必要なミネラルの一つであり、筋肉の収縮を調整したり、ナトリウムの排泄を促進することで血圧の上昇を抑制したりしています。その分、体内の適正な量から外れると、問題が起こります。カリウムの高い状態を高カリウム血症、低い状態を低カリウム血症と言いますが、問題になるのは腎機能低下にともない、カリウムを腎臓から排泄できなくなる高カリウム血症です。

高カリウム血症になると、筋収縮の調節ができなくなる結果、筋の脱力感が起こり、重篤な場合は心停止を起こすこともあります。そのため、医療関係者は採血でかならず腎機能とカリウムをセットで評価し、データの確認を怠らないようにしています。腎機能が消失したときに、人工透析を2日に1回行う最大の理由は、カリウムが高くなると心臓が止まってしまうことがあるからなのです。

・カリウムを多く含む食品は、基本的に生で食べない

カリウムを多く含む食品は、いも類、海草、きのこ、野菜の青菜類があげられます。一般的には身体にいい食品であっても、自分の身体の状態によってはあまりよくない食材があることをぜひ知っておきましょう。これらの食品は、茹でることでカリウムがかなり軽減されます。

【カリウム制限のポイント】 (1)低蛋白食にする 食品中の蛋白質量とカリウム量は正比例の相関関係です。そのため、蛋白質を多く摂れば、カリウムもたくさん摂ることになり、摂取量も多くなります。蛋白質制限は、カリウム制限をすることとイコールの関係です。

(2)カリウムを多く含む食品を知る いも類、海草、きのこ、野菜のなかの青菜類には、カリウムが多く含まれていることを知っておきましょう。

(3)カリウムを多く含む野菜の食べ方 野菜は生で食べる際、30分以上水にさらしましょう。先に切って断面を多くして、水に触れる面を増やし、カリウムを抜けやすくします。また加熱して食べる野菜は、一度湯通しすることで、カリウム量を3~5割減らすことができます。

(4)カリウムを多く含む果物の食べ方 果物は生を避けましょう。果物を食べるのであれば、シロップに浸かっていることでカリウムが抜けていくので、缶詰のほうがおすすめです。もちろん、シロップは飲まないようにしましょう。

・高リン血症にならないためには、蛋白質制限が大切

リンも、カルシウムやマグネシウムとともに骨や歯をつくる成分になったり、体内のエネルギーをつくり出すときに必須の役割をしていたりする、人体に必要なミネラルの一つです。魚類、牛乳・乳製品、肉類といった動物性食品や大豆に多く含まれます。リンの高い状態を高リン血症、低い状態を低リン血症と言いますが、問題になるのは、腎機能が低下したことで、リンを腎臓から排泄できなくなる高リン血症です。

リンが高いとカルシウムと結合し、本来は起こり得ないような場所で血管が石灰化して、動脈硬化が進行する原因になります。慢性腎臓病(CKD)の人が動脈硬化を起こしやすい理由の一つは、リンを上手に排泄できないからです。リンは蛋白質の多い食品に多く含まれているため、蛋白質制限さえしっかり行っていれば、自然とリンの制限にもつながっていきます。

つまり、低蛋白食=低リン食なのです。高リン食品として、次の4つのものを押さえておきましょう。

1 カルシウムが多い食品(乳製品、骨ごと食べられる魚)

2 卵製品

3 肉類、魚介類

4 豆類、納豆

なお、食品添加物として使用されているリンについては、次の項でお話しします。

加工食品や添加物に多い無機リンは極力避ける

・無機リンは、「老化促進物質」として問題視されている

すでにお伝えした通り、加工食品にはリンが多く含まれています。そもそもリンには、肉や魚、卵、乳製品、豆類食材にもともと含まれている「有機リン」と、食品添加物に使われている「無機リン」の2種類があります。そして後者の無機リンは、ハムやベーコン、練り物、プロセスチーズ、インスタント麺、缶詰、ファストフードなどの加工食品に、食品添加物として使われているものです。

無機リンは有機リンに比べて腸から吸収されやすく、血液中のリンの濃度(血清リン濃度)が上昇しやすくなります。とくに腎機能の悪い人は、無機リンが多く入っている食品添加物入りの加工食品は避けたほうがいいでしょう。

「老化促進物質」として問題視されている無機リンは、カルシウムと結合することで血管の石灰化を促します。石灰化すると血管や臓器が硬くなりはじめ、動脈硬化が急速に進み、心筋梗塞や脳卒中といった血管疾患を引き起こしてしまうのです。

・食品成分表示を見て、食品添加物を確認しよう

とくに、自分で調理しない食べ物には、リンが多く含まれていることが多いため、外食や加工食品を摂る生活を続けている人は、注意が必要です。加工食品の裏面には食品成分表が貼られていて、原材料表示に「リン酸塩」「pH調整剤」といった名前が記載されていないか、ぜひ確認するようにしましょう。

ただ、ほぼすべての加工食品に含まれているので、入っていないものを見つけることは困難です。代表例は、コンビニ食品です。簡単に食べられる食品には、かならず理由があるのです。おいしくて、調理しやすくて、保存が利く食品には、それなりの添加物が加わっていることを忘れないようにしましょう。

また、これはよく知られた話ですが、食品添加物には発がん性物質が含まれていることも多いので、できるだけ口にするのを避けるに越したことはありません。加工食品を控えたほうがいいのは、リンを摂取しないためだけではないことを、ぜひ覚えておいてください。

プリン体の多い食事は「痛風腎」を引き起こす

・プリン体の過剰摂取で尿酸の結晶が腎臓に溜まり、痛風腎になる

「痛風腎」という言葉を聞いたことはあるでしょうか? 痛風腎は、プリン体の過剰摂取によって尿酸の結晶が腎臓に溜まり、腎臓に炎症を起こした状態をいいます。この状態を放置すると腎機能が低下し、人工透析になることもある、怖い疾患です。痛風腎になる人はそこまで多くはなく、また最近は医療が進んでいい薬ができたため、人工透析まで症状が悪化する人はあまり多くありません。

ただ、放置をすると腎機能が低下し、人工透析になることもある疾患なので、プリン体を多く摂取する人は注意が必要です。ビールにプリン体が多く含まれていることはよく知られていますが、内臓類やお肉、魚介類などにも多く含まれているのをご存じでしょうか?

とくに、レバーや干物、カツオ、イワシなどに多く含まれているのです。ビールを多く飲む人や、プリン体の多い食事を摂る人は、尿酸が石となって結晶化され、固体化されることで腎臓に蓄積されます。これが痛風腎の症状です。プリン体は身体に悪いものなので、尿酸を上げない食事管理を心がけましょう。  

別府浩毅

医師

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください