〈20代で借金〉急増…200万円を新卒1年目で借入れも「若いときは貯金より経験」「インフレ下では借金をしたほうが得」【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月20日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
日本銀行がマイナス金利解除を行ってもなお続いているといえる「低金利」。長期間の低金利によって世間の借金へのイメージは変化したのでしょうか? また、どのようなローンが実際に借入れされているのでしょうか? 本記事では、Jさんの事例とともに「お金を借りること」とその目的について、FP事務所・夢咲き案内人オカエリ代表の伊藤江里子氏が解説します。
借金の「良し悪し」
日本銀行が2016年から継続してきた「マイナス金利政策」を2024年3月に解除し、都市銀行などの普通預金金利は0.001%から0.02%に引き上げられましたが、わずかな上昇にすぎません。一方で、住宅購入を予定している人からは、低金利が続いてほしいと願う声が聞こえてきます。長期間にわたって続いている低金利で、借金に対するイメージは変わったのでしょうか。
今回は、「お金を借りること」とその目的について考察します。
お金を借りることへのイメージ
「三井住友トラスト・資産のミライ研究所」の調査※1では、お金を借りることへのイメージをきいた結果がまとめら
れています。これによると「できれば借金はしないほうがよい」と考える人が全体の61.7%を占めています。年代別で見ると、18~39歳が約57%であるのに対し40~69歳は約62~64%と高く、年齢が若い世代の方が借金に対してやや肯定的です。
実際、総務省統計局「家計調査」※2によると、20代の借金保有率(借金をしている世帯の割合)は、1997年の15.2%から2022年には40.1%へと大幅に上昇しています。つまり、4人に1人の20代が借金を抱えているのです。さらに、借金の平均額も増加しており、2022年の20歳代の借金平均額は156万円と、1997年の58万円から約2.7倍に膨らんでいます。
また、「自分に役立つスキルを身につけるためのローンはよい借入れだ」と回答した人は世代によってばらつきがあり、18~29歳が最も肯定的に捉えていて、いったん40~49歳の世代ではそれが減少するものの、50歳以降は再び増加するという変化があります。「ギャンブルや浪費のための借入れ」に否定的なイメージを持つ人が多いとはいえ、どの項目も全体の半数以下に留まっています。もともと「良い借金」「悪い借金」について明確な定義はないからかもしれません。
資金使途が自由なフリーローンの金利は高め
借金に否定的なイメージがあるのは、返済時の利息分が家計に負担を与えることや、返済不能に陥った場合のリスクによるのかもしれません。ローンも計画的に活用すれば、生活を豊かにし、資産形成や自己投資のための有効な手段となりますが、その資金使途によって金利が異なるというのが現状です。
住宅ローンは、有担保なため各金融機関が取り扱うローンのなかでも最も低い金利で利用できる商品です。実際に住宅は高額だから、長期間の借入れとなるため慎重に計画して利用したいと事前にFPにローンの相談する方も多いです。
このなかには、低金利を活かして無理のない範囲で借りて、自己資金をなるべく残して投資で資産運用したいという方も少なくありません。住宅金融支援機構の調査でも、ローンの金利が0.5%以下の人が最も多く、融資率が「90%超100%以下」とのことで、諸費用を除いた物件(土地・建物)にかかる費用をローンで賄う人が多いという結果です。
そのほかの個人向けローンはどうでしょうか。無担保なので住宅ローンに比べると金利が高いです。なかでも資金使途を定めない「フリーローン」は他の自動車購入・教育費目的のためのローン金利より高く設定されています(融資実行までの期間が迅速で手続きが簡易なほど金利が高い傾向もあります。主な金融機関で最安値の金利を比較すると、フリーローンは借入れ金利に幅があり審査結果によって決まるので、契約者(年収や勤務先など)次第で差があります)。
「お金を借りること」より、その使途のために借金することが好ましいかどうかイメージがわかれているのではないでしょうか(各金融機関は、「フリーローン」の使途が自由であっても、事業性資金・投資性資金にすることを禁止していたり、違法な行為のための資金ではないことを確認しています※3)。
年収に迫るフリーローン200万円を借入れした20代会社員
三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査で「通常の生活に必要のないものを得るための借金は悪い借入れだ」と回答した人が全体の約20%いました。通常の生活に必要でないものの例に、余暇や遊行費があります。
今回は、フリーローンでお金を借りて、旅行代などに使ったJさんの話を紹介します。
Jさん:28歳(会社員、年収700万円)
・金融資産:現預金25万円(別途、勤務先の確定拠出年金でマッチング拠出)
・負債:フリーローン当初200万円を年10%で借入れ(返済期間残8年)
当初150万円を年5%(返済期間残8年半)
当初150万円を年4.5%(返済期間残9年)
Jさんは、入社した年とその翌年の短期間でその当時の年収に近いくらいのお金を借りて、国内外の旅行などの遊行費にお金を使ったそうです。
進学によって同級生より少し遅く就職したJさんは、ちょうど「DIE WITH ZERO人生が豊かになりすぎる究極のルール」(ビル・パーキンス著)という本を読んで、早いうちに質の高い経験をしたいと考えたそうです(本の中で、著者が20代の頃のルームメイトが、多額の借金をして数ヵ月間の旅行にいったエピソードがあり、これに感銘を受けたとのこと)。
Jさんもまた、この本の著者のルームメイトと同様に、いましかできない経験を重視し「就職した年は貯金なんてなくて、10%の金利は高いと思いましたが学生と違ってお金を借りられるのでフリーローンを利用しました。それに、昨今のインフレでは、お金の実質的な価値も下がるのだから借金をしたほうが得ですし」と話していました。
また、勤務先の業績が好調で、賞与が増えたこともあり、翌年もフリーローンを利用して見聞を広げるため休日は国内外への旅などに出かけたそうです。また、ボーナスなどで金利が高い方のローンは繰上げ返済していく予定とのことですが、ローンは滞りなく毎月返済しているそうです。(個人のプライバシーに配慮し旅行先やその費用は伏せますが、「南米ペルー世界遺産を巡るツアーで8~9日間約150万円」など、海外旅行では行き先・時期によってはオプション・滞在費を含むと、1人100~200万円かかります)。
良い借金と悪い借金はあるのか
Jさんの借入れは「絶対に必要なもの」ではなく、将来にどのような利益を生むかは未知数です。住宅ローンのように低金利で借りて、自己資金は借入れ利率以上の利回りで資産運用するといった直接的に経済的リターンを生むかどうかの保証はありません。しかし、生活を豊かにしたり将来への自己投資につながる可能性はあります。
「自分に役立つスキルを身につけるためのローンは良い借入れだ」と考える割合が50歳以降少し増えたのは、旅行によって広い視野と多様な価値観を育て、キャリアの発展につながった、遊びを通して人々との出会いが後に有益な関係を築けたという経験者の回答が含まれているかもしれません。
「ギャンブルや単なる浪費のための借入れ」は、多くの人が良くない借入れと認識していますが、住宅ローンや教育ローンのような資産形成や将来的にリターンを生む可能性が高い、いわゆる「良い借金」であっても、きちんと返済ができない場合は「悪い借金」になってしまいます。
どんな場合でも、借金をする際は目的と返済計画を明確にし、返済可能な範囲で利用することが大切です。どんな目的のためにお金を使うか、あるいはお金を借りるかは個人のライフイベントや価値観によって異なります。
この記事が、いまのお金の使い方を振り返ったり、資産について家族など身近な方と話したりといったことのきっかけになれば幸いです。
<参考>
※1 三井住友信託銀行 三井住友トラスト・資産のミライ研究所「住宅ローン「頭金ゼロ」の選択肢は正解か?」
https://mirai.smtb.jp/wp/wp-content/themes/mirai/pdf/miraiken_report_230810.pdf
※2 総務省統計局「家計調査」
※3 住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査【住宅ローン利用者調査(2024年4月調査)】」
https://www.jhf.go.jp/files/400370422.pdf
伊藤 江里子
FP事務所 夢咲き案内人オカエリ 代表
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