【8050問題】東京在住の裕福な「51歳・子供部屋おじさん」、地獄の老後までのカウントダウン…「82歳・年金18万円の父」に余命宣告。息子に事実を明かすとき
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月22日 11時45分
(※写真はイメージです/PIXTA)
80代の親が50代の子の生活を支えるために負担を背負う8050問題。 そうした歳を重ねても親に養われる子どもらは、親がこの世を去るとどうなるでしょうか。本記事では山内さん(仮名)の事例とともに、大人の引きこもりについて、FP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。
実家から出たことのない一人息子
筆者のもとへ相談にやってきたのは山内隆さん(仮名)、現在82歳。51歳の息子と2人暮らしです。山内さんは大企業を勤め上げ、現在は毎月18万円の年金をもらいながら老後の生活を送っています。専業主婦だった妻は病により数年前に他界しました。
51歳の息子の正行さん(仮名)はいわゆるひきこもり。正行さんは、小学校のときには友達も多く、成績優秀、外遊びが好きな活発な子どもでした。しかし、中学生に入ったころから成績が落ち始め、ゲームに熱中するようになってから段々と内向的な性格になっていきました。学校が休みの日もあまり外出しなくなります。
高校を卒業後は、実家から通いやすい大学へ進学。隆さんが勤める企業のライバル社への就職が第一志望でしたが、残念なことに落ちてしまいました。結局、希望していなかった実家からアクセスのよい別の企業に就職することに。しかし、仕事内容が自分に合わない、職場にパワハラ上司がいるなどといった理由から、数年で退社。その後も転職を繰り返していきます。
40代息子からせがまれるお小遣い
30代後半には、派遣会社に登録をして、非正規社員として働きました。40歳を過ぎたころから、仕事に就くこともなく、実家の自室で過ごす日々が続いたそうです。1年くらいは、これまでの貯えがあったのか、ただ自宅で過ごしているだけの様子でしたが、ある日、当時まだ存命の母親に向かって「小遣いくれ」と言ってきたそうです。母親が「あげるけど、そろそろ仕事を見つけたら」とボソッと言うと、正行さんは激昂。出されたお金を奪い取るように掴んで、自分の部屋のドアを大きな音を立ててまた閉じこもったそうです。
最初に「小遣いくれ」と言われてから、毎月のように求められるようになりました。妻の亡きあとは隆さんにせがんできます。部屋に入ろうとノックをしてもほとんど反応はないということでしたが、時折食事や用事があるときには部屋から出てくることもあります。
10代や20代の若者のひきこもりとは、少し状況が変わり、正行さんは部屋に鍵を閉めているわけではなく、出入りは自由にできるようです。しかし、隆さんも妻も、積極的に正行さんとコミュニケーションをとってきませんでした。
8050問題は深刻化、9060問題へ
令和3年3月に出されている「ひきこもり支援施策の現状について」を見ると、平成30年度の調査で40歳~64歳までの推計数が61万3,000人となっています。60歳以上では、定年退職などをして、外出の頻度が減ったということもあり得ると思いますが、40代や50代でも「ひきこもり」となるケースもあるようです。
2018年に調査された生活状況に関する調査では、40歳~64歳までの調査対象の14.2%がひきこもりの状態にあり、そのなかで、40歳代は38.3%、50歳代では36.2%と中高齢になっても、ひきこもり状態にある人が見受けられます。要因としては、「求職活動がうまくいかなかったこと」や「職場になじめなかったこと」、「人間関係がうまくいかなかったこと」などがあるようです。
さらに、ひきこもりの期間も3~5年の13.1%が最も多くなっていますが、30年以上もひきこもりの状態が続いているというケースもあるようです。俗にいう8050問題は、最近では9060問題と年齢が上がっても問題が続いていることが社会問題となっているようです。
頼れる場所を見つけることの大切さ
ひきこもりの問題については、以前からあったようですが、この問題が長期化し、さらに高齢化していることを政府も問題にしています。2018年に初めて40歳以上の実態調査を行いました。
ひきこもりについての支援事業も拡大中で、「ひきこもり地域支援センター」を平成30年4月までに都道府県と指定都市(67自治体)に設置をして、困ったことがあれば、すぐに相談できるようにしてきました。さらに身近に相談できるように、設置主体を市町村へと拡大中となっています。
いまはよくても順当にいけば親が先に亡くなる
親が存命中は確かになんとかなるかもしれません。しかし、順当にいくとやはり養ってくれている親が先に亡くなる可能性のほうが高いでしょう。
正行さんの場合、すでに母親は亡くなっています。父親である隆さんが亡くなれば頼る人がいなくなるのです。遺産は残せたとしても、自室の扉から社会から緩い断絶を行っている正行さんに相続手続きや、今後のお金の管理、家事などが1人でできるでしょうか。
息子を経済的に支える父へ余命宣告
今回の隆さんの相談では、山内家の深刻な現状が浮き彫りになりました。
「実は、先日余命宣告をされたんです」
体調を崩しがちで、貧血のような症状が度々表れたため、病院で診てもらうと、末期の胃がんと診断されました。
「息子に小遣いを渡すだけではなく、食事代や年金、保険料の負担もあるため、すでにお金のことで悩んでいました。私が死んだら息子は困り果てるでしょう。まだこのことは息子に伝えられていません」
しかし、金銭的な問題解決を行う前に、正行さんのひきこもりを脱出する方法を考えなくてはいけないでしょう。筆者は「ひきこもり地域支援センター」へ相談に行くことを勧めました。
相談を受けたセンターでは、「ひきこもり支援ステーション」「ひきこもりサポート事業」と相談だけではなく、アフターフォローや社会復帰できるように、ネットワークの構築などもサポートしています。ひきこもりとなってしまっている本人が自ら相談に行くことが難しい状況が多いなかで、親がこういったサービスを知る機会を得ることが大切ですが、インターネットなどを使う習慣の少ない高齢者では、調べることすら大変になることもありますので、周りからのサポートが必要なのかもしれません。
正行さんが親亡きあとも1人で生きていけるよう、親として隆さんが最期に手助けしてあげられることを願います。
<参考>
厚生労働省:令和3年度「引きこもり支援施策の現状について」 https://www.khj-h.com/wp/wp-content/uploads/2021/04/03XX%E5%8E%9A%E5%8A%B4%E7%9C%81KHJ%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%83%9D%E3%82%B8%E3%82%A6%E3%83%A0.pdf
政府統計:生活状況に関する調査 https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00100114&tstat=000001136332&cycle=0&tclass1=000001136335&tclass2val=0
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表
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