高卒・たたき上げ→執行役員まで出世した年収1,200万円・59歳の“やり手”サラリーマン、日本年金機構から届いた“青色の封筒”に思わず「なにかの間違いでは」【CFPの助言】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月8日 11時15分
![高卒・たたき上げ→執行役員まで出世した年収1,200万円・59歳の“やり手”サラリーマン、日本年金機構から届いた“青色の封筒”に思わず「なにかの間違いでは」【CFPの助言】](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/goldonline/goldonline_62056_0-small.jpg)
(※写真はイメージです/PIXTA)
人生100年時代といわれるいま、定年後も再雇用などで勤務可能な企業が増えています。とはいえ、60歳での完全引退を考える人も少なくありません。高校卒業以来がむしゃらに働いてきたAさん(59歳)もそのひとりです。しかし、日本年金機構から届いた封筒に愕然。老後のプランが大きく揺らぐことに……いったいなにがあったのでしょうか。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役でCFPの五十嵐義典氏が解説します。
「定年祝いの海外旅行」に胸をふくらませるAさんだったが…
59歳のAさんは、製造業に従事しています。従業員200人ほどの中小企業ながら、高校卒業以来がむしゃらに働いてきたAさんは執行役員・本部長まで昇進しており、現在の年収は1,200万円です。会社一筋で貢献してきましたが、来年60歳で定年を迎えます。
そんなAさんには、定年後のイベントとして心の底から楽しみにしていることがあります。それは、妻のBさん(56歳)と娘のCさん(21歳・大学生)と3人で行く、自身の定年祝いと娘の卒業旅行を兼ねたヨーロッパ旅行です。
「これまで仕事ばかりで妻と娘には寂しい思いをさせてきたから、ようやくゆっくり過ごせるな」と、Aさんはこの旅行を非常に楽しみにしていました。
自宅に届いた「青色の封筒」の中身に、驚愕
ある日、Aさんが帰宅後いつものようにポストを覗くと、青色の封筒が届いていました。差出人は日本年金機構からで、「ねんきん定期便」と書いてあります。59歳の誕生月に合わせ、Aさんには封書のねんきん定期便が届いたようです。
「なんだこれ……?」Aさんは身に覚えのない封筒を疑問に思いました。
仕事中心の生活を送ってきたAさんは、これまで毎年ハガキで届いていたねんきん定期便のこともあまり気に留めていませんでした。
Aさんは妻から毎年届くものだという話を聞き、「へえ、今年はこんな封筒に入って届くのか。家計はこれまで妻に任せきりだったが、退職後は収入も減るだろうし、さすがに自分が受け取る年金くらいは把握しておかないとなぁ」と開封してみることにしました。
しかし、いざ中身を確認すると、Aさんは衝撃を受けました。65歳から受けられる老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給見込額合計が「216万円」と書かれているのです。
「年216万円ってことは、月18万円、月18万円!? たった!? いやいや、なにかの間違いだろう」Aさんは思わずそうこぼしました。
「たしかにうちは大企業じゃないけど、給与はそんなに悪くなかったし、その分しっかり保険料も天引きされていたぞ。もっともらえるはずだろう、こんなのおかしい」とAさんは、いまの年収との落差をなかなか受け入れることができません。
「俺とおなじように中小企業で働いていた親父はそもそも60歳から年金を受け取っていたし、金額ももっと多かったはずだぞ。これが本当なら、ヨーロッパ旅行を心から楽しめないじゃないか……どうしよう」
自身のねんきん定期便をはじめてしっかりと確認した結果、老後の計画に不安を持ったAさんは、年金の正しい知識と専門家の意見が欲しいと、ファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねました。
「ねんきん定期便」の記載額はあくまで“見込み”
FPが改めて確認したところ、ねんきん定期便にはたしかに、65歳からの受給額が「216万円」と記載されています。では、Aさんはこのまま月18万円の年金を受け取ることになるかというと、そうではありません。
「ねんきん定期便」の59歳時点での見込額は、60歳までいまの条件で勤務した場合の見込額となります。したがってここには、60歳以降年金制度に加入する場合の金額は含まれていません。
つまり、60歳以降の働き方によって、Aさんは65歳以降受け取る年金額をさらに増やすことが可能です。
FPがこのようにお伝えすると、Aさんは渋い顔で次のようにいいます。
「うちの会社でも、60歳以降65歳まで再雇用で働くことができます。けれど、役職からは外れるし、給料もいまの半分以下になるんですよ。月給36万円で賞与がいくらか出て、年収はだいたい550万円。いやあ、ちょっと考えものですよね……」
「あとね、人手不足もあって、65歳から70歳までは週3~4回・社会保険加入のアルバイトという形で引き続き働くこともできます。だけど、アルバイトですよ? こちとら元役員なのに。それに年収もせいぜい240万円くらいですね」
Aさんはかなり後ろ向きですが、どうやら60歳以降も同じ会社で働くチャンスがありそうです。
厚生年金は制度上、70歳まで加入することができるため、60歳以降も働くことで年金をさらに増やすことができます。
60歳以降に10年勤務→年金受給額は年20万円増える
では、仮にAさんが60歳から70歳まで10年間厚生年金に加入し続けると、年金はいくら増えるのでしょうか。
まず、60歳から65歳まで年収550万円で勤務すると、老齢厚生年金は年14万円増えます。この場合、Aさんが65歳時点で受給できる年金は年230万円(月約19万円)になります。
さらに、65歳から70歳までの5年間厚生年金に引き続き加入し、年収240万円で勤務した場合、年金は年6万円ほど増えます。すると、Aさんが70歳以降受給できる年金は年236万円(月約20万円)になります。
このように、Aさんが60歳以降10年間勤務すれば、年金は月18万円から月20万円弱と約2万円増やすことが可能です。
ねんきん定期便には記載されない「加給年金」
また、Aさんには3歳下の妻・Bさんがいます。よって、Aさんの老齢厚生年金には、Bさんが65歳になるまで(=Bさんが年金を受けられるようになるまで)のあいだ、年間約40万円の「加給年金」も加算されます。
ねんきん定期便の見込額には含まれていませんが、生計を維持された年下の配偶者がいる場合には、このように加給年金が上乗せされます。Aさんの場合は、3年間で約120万円も年金が増えるということになるのです。
年金受給額を増やす方法はまだある
このほか、「繰下げ受給」によって年金を増額させる方法もあります。
Aさんが60歳以降も勤務するようであれば、継続して給与収入が入ります。また他に貯蓄や退職金があると、必ずしも65歳から年金を受け取る必要がないかもしれません。
年金の「繰下げ受給」とは、本来の受給開始年齢である65歳よりも受給のタイミングを繰下げる(=遅らせる)ことで、その分増額した年金を生涯受け取れるという方法です。1ヵ月繰下げるごとに、0.7%増額されます。
■60歳以降働かず、年金を5年繰下げる場合
たとえば、Aさんが年金を5年(60ヵ月)繰下げて70歳から受け取る場合、0.7%×60ヵ月で42%増額されます。すると、年216万円×42%=約307万円(月25万円強)となり、65歳から受給するよりも月7万円程度増額されます。
■60歳以降も勤務し、かつ年金を5年繰下げる場合
さらに、Aさんが60歳以降勤務した場合、65歳時点での年金は230万円となります。これを70歳まで5年間繰下げた場合、受給額は年230万円×42%=約327万円(月27万円程度)に。
加えて、65歳から70歳までの5年間の勤務で増える6万円が上乗せされることにより70歳以降は333万円(月28万円弱)になります。
このように、繰下げ受給を選択する場合も、60歳以降も勤務したほうが受給額が増えます。
ただし、先述した加給年金については、老齢厚生年金を繰り下げると加算の開始がその分遅くなったり、加算されなくなったりするケースがあるため注意が必要です。
なお、繰下げ受給については、ねんきん定期便にも記載されているため、チェックしてみましょう。
「60歳から年金暮らし」はもう古い…自分なりの受給開始時期を吟味して
AさんはFPの説明を受け、考えが変わったようです。「給与が下がるからと意地を張っていましたが、まだ体力も残っているし、働いてみようかな。リタイア後の人生も長くなるかもしれないですもんね」と、60歳以降も引き続き勤務することを決めました。
残念ながら、Aさんのお父様のころとは異なり、「60歳でリタイア、60歳から年金暮らし」という時代ではなくなりました。しかし、ここまでみてきたように、ねんきん定期便の見込額を見て少ないと思っても、増やす方法やチャンスはあります。
まずはご自身の「ねんきん定期便」を見て現状を確認し、不明点はFPをはじめとした専門家に相談しながら、それぞれに合ったプランを立ててみるといいでしょう。
五十嵐 義典 CFP 株式会社よこはまライフプランニング 代表取締役
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