私立の学習費は平均で年間約143万円→「中学受験はコスパが悪い」といわれるが…それでも受験させる親が後を絶たないワケ【FPが解説】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月6日 11時15分
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(※写真はイメージです/PIXTA)
首都圏模試センターによると、首都圏の中学受験者数は推定5万2,400人ほどいるそうです。これは、首都圏の小学6年生のおよそ4.7人に1人が中学受験をしている計算になります。しかし、学費や塾代などなにかとお金がかかる中学受験は「コスパが悪い」といわれることも少なくありません。にもかかわらず、受験者が後を絶たないのはなぜなのか……自身の長男も私立中学に通う石川亜希子AFPが解説します。
中学受験は「コスパが悪い」?
文部科学省の「令和3年度子供の学習費調査」によると、中学校3年間でかかる学習費は次のようになっています。
■公立中学校
……約 50万1,000円(学校教育費(注1)約 13万2,000円+学校外活動費(注2)約36万9,000円)
■私立中学校
……約142万9,000円(学校教育費約106万1,000円+学校外活動費約36万8,000円)
(注1) 学校教育費……授業料や学校納付金、修学旅行費、教材費など学校にかかる費用のこと。
(注2) 学校外活動費……塾代や習い事の月謝など、学校以外でかかってくる教育費のこと。
上記をみると、年間で約92万8,000円の差があり、3年間で278万4,000円と、300万円もの差になることがわかります。
なお、高校については下記のとおり、年間で54万1,000円、3年間で162万3,000円の差があります。
■公立高等学校(全日制) ……約 51万3,000円(学校教育費約30万9,000円+学校外活動費約20万4,000円)
■私立高等学校(全日制) ……約105万4,000円(学校教育費約75万円+学校外活動費約30万4,000円)
また、塾代などをはじめとした学校外活動費にも、進路によって違いがあるようです。
![](https://ggo.ismcdn.jp/mwimgs/b/d/800m/img_bd0a86306ffa1f4b93fcdf1aca44e8f795213.jpg)
したがって、6年間でかかる教育費は、概算ですが下記のようにまとめることができます。
1.公立中学(塾なし)から公立高校(塾なし)に進学した場合……132万3,000円
2.公立中学(+塾)から公立高校(+塾)に進学した場合……304万2,000円
3.公立中学(+塾)から私立高校(+塾)に進学した場合……466万5,000円
4.私立中学(塾なし)から私立高校(塾なし)に進学した場合……591万9,000円
5.私立中学(塾なし)から私立高校(+塾)に進学した場合……666万2,000円
6.私立中学(+塾)から私立高校(+塾)に進学した場合……744万9,000円
上記の3と4を比較すると、私立中学に進学しても6年間塾に通わなければ、公立中学から私立高校に進学し6年間塾に通っていた場合と比べて教育費の差は125万4,000円、月額わずか1万7,000円程度の差になります。大学付属の中高一貫校が人気の理由も頷けます。
費用を考える際の注意点
ただし、上記のデータには、中学受験に必要な小学生時代の塾代が含まれていないことに注意が必要です。
また、最終的に目指す大学が同じなのであれば、公立の中高に通ったほうがお金はかかりません。倍率の高い私立中学を目指し、幼いころから高い学費を支払いながら長い時間をかけて勉強する「中学受験」は、“コスパ”を考えるとあまりいいとはいえません。
さらに、お金をかけて中学受験をして中高一貫校に通ったとしても、最終的に難関大学に合格できるという確証はありません。難関大学に合格できる保証もないのにお金をかけるのはコスパが悪いといえるでしょう。
しかし、首都圏模試センターによると、首都圏の中学受験者数は2015年~2023年にかけて9年連続で増加しています。では、なぜこのように「コスパの悪い」中学受験をさせる親があとを絶たないのでしょうか?
早いうちから講義が受けられる…中学受験の「メリット」
では、中学受験のメリットはあるのでしょうか。考えられるのは下記の4点です。
1.大学受験を見据えたカリキュラムが組まれている
私立中学では、独自のカリキュラムを組むことができます。そのため、中学生のうちから高校レベルの内容を学ばせる学校も多く、塾に通うことなく大学受験を見据えて学習に取り組むことが可能です。
2.「高大連携」している学校が多い
付属校でなくても大学と提携協定を締結している学校が多く、早いうちから大学での講義を受けることができるなど、キャリア教育が盛んです。
3.設備や環境が整っている
学校によってさまざまですが、図書室の蔵書が充実していたり、カフェテリアや屋内プールが設置されていたり、海外研修があったりと、公立学校に比べ設備や環境が整っていることが多いです。
4.受験勉強で中断することなく部活動などに取り組める
高校受験がないため、たとえば部活動などに力を入れている場合、受験勉強に中断されることなく熱中することができます。
一方で、中学受験には金銭面以外にも、下記のようなデメリットが考えられます。
中学受験の金銭面「以外」のデメリット
子どもへの負担が大きい
中学受験の準備は、小学3年生の終わり頃から始まるといわれています。早くから目標を持って学習に取り組むことは長期的に考えればメリットにもなる一方で、遊びの時間の多くが勉強に割かれ、子どもへの負担は少なくありません。
また、親や先生からのプレッシャーが重くのしかかることも子どもにとっては負担になりえます。
想像以上に保護者の負担も大きい
勉強に付き合う、スケジュール管理、学校説明会への参加、塾への送迎など、受験をサポートする親もやることは山積みです。フルタイムで働いている場合や小さな兄弟がいる場合、特に負担は大きくなります。
多様な価値観に触れる機会が減る
私立中学には同じような価値観、環境の家庭が多く、いい面もありますが、子どもの視野が狭くなってしまうということもあり得ます。
入学してから、子どもに合っていないことに気づく場合がある
偏差値重視で進学先を決めてしまうと、校風が子どもに合わなかったり、ハイレベルな授業についていけず落ちこぼれてしまったりと、思わぬ落とし穴にハマるケースもあります。
このように、中学受験は、子ども・親双方にとって負担がかかります。「周りのみんなも受験するから」となんとなく始めてしまうと、デメリットを感じやすいかもしれません。しかし、コスパばかりに注目していると、費用以外の大切なものを見逃してしまう可能性もあります。
◆まとめ…中学受験の魅力は「コスパ」だけではない
中学受験をする、しないに正解はありません。家庭ごとに大切にしたい考えや価値観は異なります。
我が子が中高6年間をどのように過ごすことがその先のよりよい人生につながっていくのか、本人を含め家族で話し合い、より多くの選択肢から考えるとよいでしょう。
ちなみに筆者の長男は、小学生時代から熱心に取り組んでいるスポーツがあり、中高6年間中断することなく続けたいという理由から中学受験をしました。現在は、友だちや先輩と切磋琢磨できる環境を楽しんでいるようです。
親があれこれ考えても、実際に学校で過ごすのは子ども自身です。中学受験に際しては、偏差値や進学実績といった親の理想だけにとらわれず、子ども自身がそこで過ごす価値を感じることができる学校を選び、検討するのがいいでしょう。
石川 亜希子
AFP
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