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「うちはパワーカップルだから安心ね」と思ってたのに…42歳妻を襲った45歳・最愛の夫の死。年金事務所で知らされた〈衝撃の一言〉に絶句したワケ【社労士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月18日 11時15分

「うちはパワーカップルだから安心ね」と思ってたのに…42歳妻を襲った45歳・最愛の夫の死。年金事務所で知らされた〈衝撃の一言〉に絶句したワケ【社労士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

世帯年収は軽く2千万円を超えた「パワーカップル」だったAさんBさん夫婦。タワーマンションに住み、娘二人と仲睦まじく暮らしていたところ、夫Bさんがまさかのバイク事故で帰らぬ人に。遺族年金にすがろうと妻Aさんが年金事務所へ向かうと、そこではまさかの年金を受け取れない事態が……。本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、AさんBさん夫婦の事例を通し「遺族年金」を受け取れる「遺族」の条件について詳しく解説します。

42歳妻・絶句、遺族なのに遺族年金が受け取れないって…

42歳の妻・Aさんと45歳の夫・Bさんはいわゆる「パワーカップル」。世帯年収は軽く2,000万円を超えています。湾岸エリアのタワーマンションに住み、私立の中高一貫校に通う高校生の娘が2人。家族4人で仲睦まじく暮らしています。

営業としてバリバリ稼ぐAさんは昨年初めて年収が1,000万円に届きました。夫(Bさん)の年収に追いつき追い越せで頑張っています。

バイクが趣味の夫。ちょっとした買い物にもバイクに乗って出かけます。誰よりも安全運転を心がけていましたが、先日近くのショッピングセンターに出かけた際の帰り道、飛び出してきた犬を避けようとして転倒、打ち所が悪く帰らぬ人となりました。

病院から連絡を受けたAさんは言葉を失い、顔面蒼白。その日から何も手につきません。しかし、今後の家賃の支払いや、子ども2人の教育費などを考えると泣いてばかりいられません。

まずは遺族年金を請求しようと年金事務所に行きました。そこで、思いがけない事実を知らされます。「残念ですが、Aさんは遺族年金を受給することはできません」Aさんは絶句、「長年一緒に暮らしてきたのになぜ?」と頭が真っ白になりました……。

遺族の生活を支えるセーフティネット

老後の生活保障というイメージが強い公的年金ですが、実はいくつかの機能を持ち合わせています。

公的年金は「老齢・障害・死亡」に備えた社会保険制度であり、歳を取れば老齢年金、障害を負えば障害年金、亡くなれば遺族が遺族年金を受け取る事ができます。

遺族年金は、一家の支え手が亡くなった場合に遺された家族の生活を支える給付です。国民年金または厚生年金保険の被保険者(被保険者であった方)が亡くなったときに生計を維持されていた一定の遺族が受給することができ、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2種類があります。

亡くなった方の職業によって受給できる年金が決められており、亡くなったのが自営業者の場合には「遺族基礎年金」が、会社員の場合には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」が原則として支給されます。

制度により異なる遺族の範囲

遺族年金といっても、遺族であれば誰でも受給できるわけではありません。遺族基礎年金を受給できるのは配偶者か子です。ただし、配偶者が遺族基礎年金を受給するには子がいなければなりません。子には要件があり、18歳になった年度の3月31日までにあるか、20歳未満で障害等級1級または2級の障害状態にあることが必要です。

【遺族基礎年金を受け取れる遺族】

死亡した方に生計を維持されていた次の遺族

  1. 子のある配偶者
  2. 子(生計を同じくする父母がある間は支給停止)

遺族の範囲は遺族厚生年金の方が広く設定されています。遺族基礎年金では対象ではなかった孫や父母、祖父母まで含まれます。

【遺族厚生年金を受け取れる遺族】

死亡した方に生計を維持されていた次の遺族

  1. 子のある妻、または子
  2. 子のない妻  ※夫の死亡時に30歳未満であれば5年間の有期給付
  3. 死亡当時55歳以上の夫、父母、祖父母(支給開始は60歳から)

※遺族基礎年金の支給対象となっている夫の遺族厚生年金は55歳から支給される

子の要件は遺族基礎年金と同様です(孫も同じ)。

一緒に暮らしていただけでは遺族にならない?

さて、遺族基礎年金と遺族厚生年金に共通した要件にお気づきでしょうか?

いずれも遺族の要件として、「死亡した方に生計を維持されていた」とあります。遺族年金は先にみたとおり「一家の支え手が亡くなった場合に遺された家族の生活を支える給付」ですから、遺族年金を受給するには「生計を維持されていたこと」が求められるのです。

厚生労働省「遺族年金ガイド令和6年度版」のQAをみてみましょう。

Q. 遺族基礎年金・遺族厚生年金を受け取るための条件の一つに、「死亡当時、死亡した方によって生計を維持されていた方」とありますが、具体的にどのような場合をいうのですか?

A.「死亡した方によって生計を維持されていた方」には、死亡当時、死亡した方と生計を同一にしていた方(同居していること、または別居していても仕送りを受けていたり、健康保険の被扶養者である等の場合に認められます。)で、原則として、年収850万円未満の方が該当します。

生計維持要件は大きく2つに分けられます。「生計同一要件」と「収入要件」です。これらを満たして初めて「死亡した方によって生計を維持されていた」と認定されるのです。

【生計同一関係要件】

・住民票上同一世帯に属しているとき

・住民票上世帯を異にしているが、住所が住民票上同一であるとき

・住所が住民票上異なっているが、現に起居を共にし、かつ、消費生活上の家計を一つにしていると認められるとき

【収入要件】

・前年の収入が年額850万円未満であること

・前年の所得が年額655万5千円未満であること

・一時的な所得があるときは、一時的な所得を除いた後、前年の収入が年額850万円未満または前年の所得が年額655万5千円未満であること

・これらの要件に該当しないが、定年退職等の事情により、近い将来(おおむね5年以内)に収入が年額850万円未満または所得が年額655万5千円未満となると認められること

ざっくり言えば、遺族年金を受給するには、一般に「住民票上同一世帯で、前年の収入が850万円未満であること」が求められるということです。

今回のケースでは、住民票上、亡くなった夫が「世帯主」、Aさんが「妻」となっていて「生計同一要件」は満たしています。しかし、Aさんの収入が850万円以上なので「収入要件」を満たせず、「生計維持」とは認められません。よって、遺族年金を受給することはできないのです。

Aさんは、一緒に暮らしている家族であれば遺族年金をもらえるものだと思っていました。家族のライフプランは夫とのダブルインカムであることが前提です。これからは1人の収入で生活費を賄い、2人の子どもの教育費を捻出していかなければなりません。夫の遺影を前に、不安に押しつぶされそうになるAさんでした……。

角村 俊一 角村FP社労士事務所代表・CFP

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