年金6万円では無理…「10年に1度の酷暑」自宅は蒸し風呂と化し地獄、行き場を失う「日本の高齢者」の現実
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月18日 7時15分
(※写真はイメージです/PIXTA)
そろそろ梅雨明けが発表され、いよいよ夏本番。そんななか、気象庁から10年に1度の酷暑を警戒するよう発表がありました。暑さを乗り切るためにも、無理せずにクーラーを使用することが、身体のことを考えても重要です。しかし収入が限られる高齢者は、そうはいきません。電気代を気にしてクーラーをつけられず、家にもいられない高齢者たちはの行く先は……。
気象庁「10年に1度レベルの酷暑」に警戒情報
16日、気象庁は「高温に関する早期天候情報」を発表しました。これは10年に1度レベルの高温に見舞われる可能性があるときに、6日前までに注意を呼びかけるもの。7月24日~28日の5日間の平均気温について、東北地方日本海側と北海道を除き、「かなり(気温が)高い」という予報されています。
早期天候情報
その時期としては10年に1度程度しか起きないような著しい高温や低温、降雪量(冬季の日本海側)となる可能性が、いつもより高まっているときに、6日前までに注意を呼びかける情報です。
出所:気象庁ホームページ
高温で心配されるのが熱中症。消防庁によると、7月1日からの1週間、熱中症による救急搬送は速報値で9,105人。昨年同時期の4,026人の倍以上。そのうち半数を占めるのが高齢者で搬送された人全体の59.1%を占めます。ちなみに搬送された人の6割強が軽症。重症者が2.3%、死亡が0.2%でした。
さらに熱中症にとなった場所をみていくと、圧倒的に多いのが「住居」で37.9%。「道路」20.6%、「公衆(屋外)」が13.2%、「(道路工事現場、工場、作業者等)仕事場」9.0%と続きます。
2人以上世帯では9割以上の世帯でクーラーが普及。そのようななかでも熱中症になってしまうのは、クーラーがなかったり、またはクーラーの使用を控えたり。またクーラーをつけずに睡眠、寝ている間に熱中症となるケースが多いことは最近、よく知られるようになりました。「クーラーをはじめとした冷房機器をつけたまま寝ると体に悪い」と聞いて育った人も多いでしょう。ただこのことになんら科学的根拠はなく、専門家は「都市伝説です」と言い切っています。熱中症予防のためにも、躊躇うことなく、クーラーをつけて寝る……これが酷暑を乗り切るためのポイントです。
しかし6月使用分から政府の補助がなくなり、各社値上げとなった電気代。厳しい家計運営が続くなか、「寝ている間にクーラーをつけっぱなしというのは……」と躊躇う人も多いでしょう。ただ8月から10月使用分に限定して再開するとしており、体のためにもクーラーは適切な使い方をしたいものです。
「物価高」「電気代高騰」でも「年金減」…酷暑でもクーラー代を気にする高齢者は
ただ熱中症予防でクーラーの使用を呼びかけられても、気になるのは電気代。昨今の資源高による電気代高騰の影響で、電気代は上昇傾向。家計に占める割合も年々存在感を増しています。
【電気代と家計に占める電気代の割合】
2009年:4,769円(2.9%)
2013年:5,482円(3.4%)
2019年:5,700円(3.5%)
2020年:5,791円(3.8%)
2021年:5,482円(3.5%)
2022年:6,808円(4.2%)
2023年:6,726円(4.0%)
出所:総務省『家計調査 家計支出編』より
そんななか苦しい思いをしているのが年金を頼りに暮らす高齢者。年金の支給額は、今年4月(6月支払い分)から昨年比2.7%増。老齢基礎年金は満額で「66,250円」→「68,000円」となりました。しかし物価高はそれ以上の伸びを示し、実質0.6ポイントの目減りとなっています。そんななか、起きている間はもちろん、寝ている間もクーラーをつけろというのは……酷です。
クーラーをつけずにはとても家にはいられない。でも電気代がこれ以上増えるのは……そんなジレンマを抱えて、どうやってこの酷暑を生きていけというのか。電気代をケチるしかない高齢者が行き着く先のひとつが、大型スーパーの一角にありました。
――クーラーつけっぱなしなんて、年金6万円では無理よ
――ねぇ、24時間つけてたら、逆にお金がなくて死んじゃうわ
都内大型スーパーの地下食品売り場。その一角に設けられた休憩スペースにたむろう、数人の老女。最近は10時の開店と同時に入店し、まずはお茶など、ちょっとしたものを買い、仲間たちと談笑スタート。ランチタイムは持参のお弁当。たまにスーパーで買うこともあるとか。そして夕方まで談笑するとようやく解散となります。そんな高齢者の集まりが3~4つ、みることができ、その一角だけは高齢者サロンといった趣。
――家は蒸し風呂みたい。地獄よ、地獄
――ここは最高。クーラーもきいているし
家にいると電気代がかさむので、涼を求めて出かけるのが習慣。日中は外に出て電気を使わずに過ごし、夜はこの暑さ、クーラーをきちんとつけて寝るといいます。また、友人とたむろできるスーパーがほかにも近所に2軒ほど。あとは区役所や図書館などの公共施設を巡るのだとか。「毎日、同じところに長時間いると注意されちゃうから」というのが理由。
前出のように、自営業や専業主婦だった人がもらえるのは老齢基礎年金だけで、満額でも月6.8万円。プラスαでもらえる老齢厚生受給者の平均年金額は14.5万円。ただしあくまでもこれは平均で、老齢基礎年金の満額程度しかもらえていない厚生年金保険(第1号)の受給権者は全体の5.6%。数にすると90万人近くになります。
厚生労働省『令和5年国民生活基礎調査』によると、26.4%の高齢者世帯が「生活が大変苦しい」と回答。この夏、涼を求めて街をさまよう高齢者が増えそうです。
[参照]
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