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定年後は社長に…高まる「ミドルシニア起業」への関心、精神的ハードルの低い「新たな選択肢」とは【キャリアコンサルタントが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月24日 7時45分

定年後は社長に…高まる「ミドルシニア起業」への関心、精神的ハードルの低い「新たな選択肢」とは【キャリアコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

健康年齢が徐々に延びるなか、定年後の人生も長くなっています。定年なく働きたいと考えたとき、ほかの会社に勤めて、人からの指示を受けながら、そこで決められた仕事を行うのではなく、自分で起業をして、自分で仕事を決めて働きたい人も少なくありません。そこで本稿では、日本総合研究所創発戦略センタースペシャリストの小島明子氏がミドルシニアにとっての起業について解説します。

ミドルシニアの起業の意欲は高い

セカンドキャリアの選択肢の1つとして挙げられるのが、定年前後の起業です。「2023年度起業と起業意識に関する調査」※1によれば、起業関心層のうち、年齢別にみると、「起業したい」とする割合は、60歳代(63.1%)が最も高いことが明らかになっており、50歳代においても半数(52.7%)を超えています。

フリー株式会社(旧freee株式会社)が実施した調査※2のなかでも、50歳以上のミドルシニア層の28.7%が「起業に関心がある」と回答し、現在起業に関心があるミドルシニア層のうち、32.1%が「3年以内に実現したい」と回答しています。3年以内の起業への関心は、ほかの年代よりも多くなっています。

起業への理由としては、「自由に仕事がしたかった」(43.7%)、「収入を増やしたかった」(28.7%)に続いて、「退職後年金以外の収入も得たいから」(23.7%)が上位になっており、収入以上に自由度の高い働き方を志向していることがわかります。

中小企業庁※3によれば、起業家の起業分野として、60~69歳では農林漁業や学術研究、専門・技術サービス業、50~59歳では運輸業、40~49歳では建設業や教育、26~39歳では情報通信業や生活関連サービス業が比較的多くなっています。イメージとしては、若者世代は、インターネットを活用したサービス等で起業し、高齢世代になると、いままで蓄積した専門技術を活かした起業を行っているのだと想像できます。

起業後の苦難

一方で、東京商工リサーチ※4によれば、2023年に全国で休廃業・解散した企業は、4万9,788件(前年比0.3%増)であり、2000年以降過去最多を更新しています。休廃業企業の代表者の年齢別(判明分)は、70代が最も多く42.9%を占め、80代以上が23.6%、60代が20.3%と続き、60代以上は全体の86.9%を占めています。60代以上の構成比は前年より増加し、過去最高を更新しています。

企業が休廃業・解散する理由としては、経営不振のほかに事業承継といった問題が挙げられます。当然ながら意欲があって新たに起業を行ったとしても、その後にさまざまな問題等に直面する可能性があることは念頭に置いておく必要があるといえます。

労働者協同組合に設立・参画という新たな選択肢

そのような状況下を踏まえ、ミドルシニアにとって、労働者協同組合の設立が起業の選択肢の1つとして挙げられると考えます。

2022年10月1日に労働者協同組合法※5が施行されました。同法は、「協同労働」の理念を持つ団体のうち、同法の要件を満たす団体を「労働者協同組合」として法人格を与えるとともに、その設立、管理等の必要事項を定める法律です。「協同労働」とは、働く人が自ら出資をし、事業の運営に関わりつつ、事業に従事するという働き方を指します。協同労働に関わる人達(組合員)は、組合を組織し、組合の「出資」「経営」「労働」のすべてを担うことになります。

3名集まれば設立することができるため、1人で起業をするよりは、精神的にハードルも低いと考えます。同法の施行を機に、多様な働き方の1つとして、「協同労働」が広まっていくことが期待されています。

法律の施行以降、約2年半で約90の労働者協同組合が設立されています。その多くは、東京圏以外のエリアで設立されており、地方を中心に労働者協同組合設立の動きが出始めています。あくまで一例としてですが、70歳を超えた方が代表を務められ、高齢者の組合員同士で活動をしている労働者協同組合上田では、地域社会に役立つ仕事をする「第二の人生」として、さまざまな仕事に取り組んでいます。

労働者協同組合には定年がありませんし、働き方や仕事内容も働く組合員同士で話し合いながら進めていくことができます。もちろん、リーダーシップのある人が代表をやられているケースもありますが、普段から、皆で合意形成を行いながら事業を進めていくことを基本としているため、年齢を理由に代表が変わっても、継続的に事業を行っていける組織形態だと考えます。

高齢になってもできるだけ長く、いままでの経験やスキルを活かし、事業を立ち上げ、さらにその事業を継続的に続けていけるようにしていきたいという思いがある方にとって、労働者協同組合での活躍という道もあるのではないでしょうか。

やりたいことを活かした起業

定年まで働き続けていれば、誰でも何等かの経験やスキルは保有しています。多様な働き方が増えていくなか、定年後もいま世の中にある一般的な働き方に自分をあわせるのではなく、自分のやりたいことをまず起点として働き方を選んでいける時代に変わってきたと感じます。

会社を立ち上げるというところまで至らなくても、1人ひとりがやりたい仕事を追求すれば、多くの業を起こすことにもつながっていくのではないでしょうか。

参考

※1 2023年度起業と起業意識に関する調査https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kigyouishiki_240118_1.pdf

※2 freee 株式会社

https://corp.freee.co.jp/news/freee-2019-9415.html

※3  中小企業庁

中小企業庁2019年度版「中小企業白書」p.170

※4 東京商工リサーチ

https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20210118_01.html

※5 労働者協同組合

https://www.roukyouhou.mhlw.go.jp/good_cases/koujirei17

小島 明子 日本総合研究所創発戦略センター スペシャリスト

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