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本やスーツに使ったお金が戻ってくる!?…該当する会社員は“超ラッキー”な節税テク「特定支出控除」とは【税理士・公認会計士が伝授】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月13日 11時15分

本やスーツに使ったお金が戻ってくる!?…該当する会社員は“超ラッキー”な節税テク「特定支出控除」とは【税理士・公認会計士が伝授】

(※写真はイメージです/PIXTA)

仕事に必要不可欠なスーツや資格取得のための本が「すべて自腹」であるという現実……どうにか経費にならないか? と考えたことのある人も少なくないでしょう。そこで今回、仕事のために購入したスーツや本を「特定支出」として給与から差し引く「特定支出控除」について、税理士法人グランサーズの共同代表で税理士・公認会計士の黒瀧泰介氏が詳しく解説します。

会社員でも、「本代」や「スーツ代」を経費にできる!?

――会社員のなかには、自己研鑽に励むために本を読んだり、資格取得を積極的に行う人もたくさんいますよね。こうした書籍代や資格取得代って決して少なくないお金だと思うんですが、これを経費にすることはできないんですかね?

黒瀧氏(以下、黒)「そうですね。方法はあります。仕事に関する費用を数十万円単位で負担している場合、『特定支出控除』という形で給与から差し引ける場合があります」

――サラリーマンの節税策って少ないので、ちょっとでも控除できたら嬉しいですよね。

黒「はい。今回はそんな特定支出控除について、適用条件や計算方法についてわかりやすく解説していきます」

「特定支出控除」なら、自腹の支出の一部が経費になる

黒「『特定支出控除』とは簡単にいうと、サラリーマンなどの給与所得者が業務上自腹で払った支出を特定支出として経費扱いにしてくれて、支払った費用の一部について控除を受けられるというものです」

――“一部について”ということは、全額を経費にできるわけではないんですね。

黒「そうなんです。ざっくりいうと、特定支出の合計額のうち、給与所得控除額の2分の1を超える部分の金額に関しては特定支出控除を受けることができます」

――では、具体的にどんなものが特定支出として認められるのでしょうか?

黒「特定支出に該当するものは、以下の6つです」

1.通勤費

2.転居費

3.研修費

4.資格取得費

5.帰宅旅費

6.勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)

――結構あるように見えますが、通勤費とかって会社が負担してくれることが多いですよね。その場合も使えるんですか?

黒「残念ながら、それはできません。通勤費については会社から『非課税の手当』を受け取っていることになるため、特定支出には含まれません。

たとえば、会社に車で通勤していて、ガソリン代を自腹で払っていたとしても、会社から通勤手当として支給されているのであれば、その金額は特定支出控除には含めません」

――なるほど。そうすると特定支出に該当する項目のうち、使いやすいものは限られてきそうですね。

黒「そうなんです。サラリーマンが使いやすいのは、4.資格取得費と、6.勤務必要経費になるでしょう。次でそれぞれ詳しくみていきます」

単身赴任から帰宅する「交通費」も特定支出控除の対象に

1.通勤費

黒「通勤費は、電車やバスなどの公共交通機関や、マイカーでの移動など、通勤のための支出を個人で支払っている場合や、支給される通勤費を超える場合は特定支出にできます」

――たいていの会社は通勤手当がありますが、パートや派遣社員などで、通勤費用を自己負担する場合に使えるかもしれませんね。

2.転居

黒「転居費は、人事異動や転勤にともなう転居のための支出です。これも基本的には会社から支給されるとは思いますが、支給されなかったときは高額になりますから、ぜひ活用したいですね」

3.研修費

黒「研修費は、業務で使う技術・知識の習得を目的として受講する研修費用のことです。こちらも自腹で研修を受けた場合には、特定支出の対象になります。ちなみに、研修を受けるための交通費などもこの費用に含めてOKです」

4.資格取得費

黒「資格取得費は、業務に必要な資格を得るための費用です。従来は自動車免許・英語検定・簿記などが対象でしたが、平成24年度の税制改正で、弁護士・医師・公認会計士資格の取得費用も特定支出に該当することとなりました」

――専門的な資格のスクールは高額ですから、控除ができたらありがたいですよね。これはたとえば、MBA(経営学修士)の取得費用も対象になるんですか?

黒「業務に関わりがあれば、MBAの費用も対象になります。たまに趣味で資格取得にチャレンジされる人もいますが、仕事に活かすことができなければ残念ながら対象外です」

5.帰宅旅費

黒「帰宅旅費とは、単身赴任で、配偶者や生計を一にする家族と離れて暮らしている場合の、帰宅のための旅費のことをいいます」

――帰宅旅費も払ってくれる会社が多いとは思いますが、払ってくれない場合は結構な額になりますもんね。

黒「そうですね。帰宅旅費の注意点としては、交通料金が1万5,000円以上の場合、[図表2]のような証明書の取得が必要になる点です。

『搭乗・乗車・乗船に関する証明書』は、空港では航空会社のカウンター、新幹線の場合列車の車掌さん、降車駅の精算所などでもらい、作成することが可能です。搭乗券とともに証明書を提示して記載してもらう必要があるため、移動時は事前に証明書を用意しておく必要があります」

経費にならない「スーツ代」も特定支出にできる

6.勤務必要経費(図書費・衣服費・交際費)

黒「勤務必要経費も、資格取得費と同様に平成24年度の税制改正で加わったものです。図書費、衣服費、交際費の3つがあり、あわせて65万円が上限になっています。

まず1つ目の図書費ですが、職務と関連する書籍や新聞、雑誌などが対象です」

――電子書籍は図書費の対象になりますか?

黒「はい。電子書籍を購入した場合も図書費用と認められます。ただし、キンドルやタブレットといった電子書籍の閲覧用端末の購入費用は対象外です。

2つ目の衣服費は、勤務場所で着用するスーツや制服、作業服などが対象です」

――オーダースーツとなると高級になりますし、スーツは会社の経費にならないので、個人で特定支出にできるというのは大きなメリットですね。

黒「3つ目の交際費は、得意先・仕入先などの接待や贈答が対象です」

――勤務必要経費って、結構幅広く使えそうですね! これってたとえば、テレワーク環境を整えるために机を買いたいときは、特定支出にできるのでしょうか?

黒「テレワーク環境を整えるためのコンピューターや机、イスなどの費用は、残念ながら特定支出の対象外となっています。そのため、特定支出ではなく会社で経費申請できないか、事前に確認してみるといいと思います」

申請時は、「会社からの証明」が必要

――では、申請方法を教えていただけますか?

黒「特定支出控除を利用するためには、特定支出を証明する明細書や領収書、会社に発行してもらった証明書や源泉徴収票などをそろえて、確定申告する必要があります」

――会社に証明してもらう書類もあるんですか。

黒「そうなんです。特定支出控除を使っている人は少なく、会社も慣れていないため、手続きに時間がかかる可能性もあります。

[図表3]が実際の依頼書ですが、転居費、研修費……と費用の項目ごとに書類が必要ですので、手間はかかります」

――サラリーマンにとっては慣れない確定申告もしないといけないですし、少し大変ですね。

黒「基本的に、会社はあまりこの制度について詳しくない可能性が高いです。

まずは自身で調べたあと、会社になにを書いてもらう必要があるのか、また会社に書いてもらうにあたって根拠資料(請求書、領収書など)を揃えておく必要があります」

――個人で調べないといけないというのは、たしかに少し負担が大きいかもしれませんね。

黒「さらに。使ったお金が戻ってくるわけではありません。あくまでも特定支出控除として申告した結果、すでにとられている所得税が還付されるというしくみです。

書類手続きが手間なわりに、それほど節税効果があるわけではないというのが、この制度がいまいち浸透していない理由かと思います。

ただ、該当しているのに使わないというのはもったいないので、活用も検討してみてはいかがでしょうか」

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士

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