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過去には宗教法人に計7億8,800万円の追徴課税も…税務調査で指摘、住職が隠した「1億5,000万円のお布施」【税理士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月23日 11時45分

過去には宗教法人に計7億8,800万円の追徴課税も…税務調査で指摘、住職が隠した「1億5,000万円のお布施」【税理士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

お寺には税金がかからない、そんなイメージから「坊主丸儲け」という言葉が使われることも。しかし、お寺を始めとした宗教法人にも税務調査はやってきます。本記事では、宗教法人の税務調査について木戸真智子税理士が解説します。

お寺には税金がかからない!?

宗教法人は税金がかからないというお話を聞いたことがある方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。宗教法人は本当に非課税なのでしょうか? 今回はこのテーマについて解説していきます。

確かに、宗教活動については非課税です。しかし、宗教法人ならなんでも非課税かというとそうではありません。当然、収益活動を行うと、課税されます。では、この「収益活動」とはなんでしょうか。それは下記のとおり、34業種列挙されています。

物品販売業、不動産販売業、金銭貸付業、物品貸付業、不動産貸付業、製造業、通信業・放送業、運動業・運送取扱業、倉庫業、請負業、印刷業、写真業、席貸業、旅館業、料理店業その他の飲食業、周旋業、代理業、仲立業、問屋業、鉱業、土石採取業、浴場業、理容業、美容業、興行業、遊技所業、遊覧所業、医療保健業、技芸教授業、駐車場業、信用保証業、無体財産権の提供業、労働者派遣業

これらを継続的に行っている場合が該当します。こちらは内容を見ていただくとおわかりのとおり、民間企業との公平性の観点から課税されることとなっています。

皆様のご近所でも、お寺が駐車場を貸している光景を見かけたことがある人もいるかもしれません。そういった場合には、当然に収益事業として課税されるということになります。

では、そのような宗教法人にも税務調査がやってくることがあるのか? もちろんあります。

過去に、大阪国税局が1,476の宗教法人に税務調査を行ったところ、なんと約6割の925法人に課税漏れがあり、計約7億8,800万円の追徴課税がされていたことがありました。さらに、課税漏れのうち、212法人は重加算税の対象となるような不正も見つかっているのです。

重加算税とは?

重加算税とは、申告の際に意図的に仮装隠ぺい行為をした悪質とみなされる行為に対して課税されるペナルティで、税務調査において課税されるもののうち最も重いペナルティとされています。金額にすると本税に対して、35%~40%とされているので額によってはかなり大きな追徴課税になってしまうことも。

では、過去の例に基づいて、いったいどんなケースでこのような重加算税になってしまうような税務調査に発展するのか、事例をご紹介します。

宗教法人ならではの給料形態

税務調査というのはまずはなんらかの調査対象があったうえで調査に来るものです。そのため、一般的に非課税とされる宗教法人でも課税される税目に対して税務調査に来ることは多いです。ここでいう「課税される税目」とは、源泉所得税のことです。源泉所得税とは、給与などから差し引かれる税金なので、当然、宗教法人で働いている人に対してお給料を支払えば、税金が課税されます。結果として、人件費に対する税務調査が中心となることも多くあります。

お給料に対しての税金であれば、なにも間違いや不正が起きにくいのでは?と思われるかもしれません。しかし、宗教法人にはならではの給料形態があります。

それは、行事の際のお手伝いに対するお給料です。お手伝いだからお礼として〇万円というように渡した場合、源泉所得税が未納になってしまうこともあり得ます。

お給料というと、月額のイメージがありますが、日額での計算もあります。よくある短期バイトも同じですね。日額のお給料の計算方法は月額とは別になっています。

たとえば、行事で1日お手伝いを近所の人にお願いしたとします。そのお手伝いの一日の金額が1万円だった場合、そのまま1万円渡していいかというとそうではありません。ここに対しても27円の源泉所得税を徴収する必要があるのです。

しかし、1万円支払うために27円差し引いて9,973円を支払うのは煩わしいでしょう。きっちりした金額で支払いたい場合には、額面を1万27円にして、1万27円から27円の源泉所得税を差し引く形にすればよいのです。そして、宗教法人の帳簿では1万27円のお給料を支払ったという形で記帳して、源泉所得税を納税するということになります。

これが何人も、何年も徴収が抜けていたとしたら、結構な金額になってしまうことは容易に想像がつくでしょう。そして、このような継続的な取引については、税務調査は通常3年ですが、5年さかのぼることも。そうすると、5年分の追徴課税ということになるのです。このように宗教法人には特有の事情があるのです。

ここで重要となるのが帳簿の存在です。宗教法人は現金の出入りが多くあります。これらを管理するのは、帳簿になります。そのため帳簿をきっちりつける必要があるのですが、杜撰に管理していると税務調査で重加算税となってしまう可能性が高まります。

宗教法人の現金の出入りには、お布施、お車代、御膳料といったものがあります。これらは、住職に直接お渡しするというシチュエーションも多くあるでしょう。そしてこれが税務調査で狙われるのです。

私的流用とみなされた住職

A県にあるお寺の住職は、お布施として受け取った金銭をそのまま自分のものとして、受けとっていました。もちろん、宗教法人が行う宗教活動として受け取るお布施であれば対象になりません。あくまでも私的に流用されたとみなされた場合になります。

実際、この意識が曖昧になってしまったことによる悲劇ですが、帳簿にしっかりつけて管理せず、受け取った金銭をそのまま自分の生活費に使ったり、貯蓄に回したりしていると、それは完全に私的流用となります。これらが常態化した場合、どうなるでしょうか。

住職は年間3,000万円のお布施を受け取っていました。税務調査により、お布施は住職のお給料として扱われました。そのため、源泉所得税の課税漏れとなったのです。結果として5年遡って1億5,000万円の追徴課税に。税額にすると、約4,200万円にものぼります。さらに、冒頭お伝えした重加算税35%~40%がここにのしかかってくるという悲劇に……。宗教法人においては住職も給料として受け取っているはずなので、このお金は隠し給料のような位置づけになってしまいました。

ところで、これらのお布施などは現金でのやり取りです。通帳での取引なら証拠は残りますが、現金の場合、税務署はどのように証拠を掴んでいるのでしょうか? 今回のケースでは、相続税の申告が証拠となりました。

相続税の計算において葬式費用については、控除の対象になりますので、申告の際にはお寺に支払ったお布施などをお寺の名前、住所も合わせて記載して申告しています。

また、宗教法人法においては、年間収入が8,000万円を超えると収支計算書を作成して都道府県等に提出することが義務付けられています。このため、やはり帳簿をしっかり管理することは、とても重要なのです。

木戸 真智子

税理士事務所エールパートナー

税理士/行政書士/ファイナンシャルプランナー

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