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わけがわからなかった…森永卓郎が困惑。「アベノミクス」の成果を台無しにした「消費税増税」決定の裏側

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月12日 11時15分

わけがわからなかった…森永卓郎が困惑。「アベノミクス」の成果を台無しにした「消費税増税」決定の裏側

(※写真はイメージです/PIXTA)

2012年、第二次安倍内閣の目玉となる経済政策として実行された「アベノミクス」。10年あまりが経ち、アベノミクスを批判する専門家も少なくありませんが、いったいなにが問題だったのでしょうか。経済アナリストで多くのメディアでも活躍する森永卓郎氏が、著書『書いてはいけない 日本経済墜落の真相』(三五館シンシャ発行、フォレスト出版発売)より解説します。

開始当初、明確に効果をあげた「アベノミクス」

財政緊縮派の皆さんが、ほぼ例外なく批判するのがアベノミクスだ。そこで、まずアベノミクスとはいったいなんだったのかを説明しておこう。

2012年12月に発足した第二次安倍晋三政権は、アベノミクスを掲げて日本経済のデフレからの脱却を図ろうと、政策の大転換をした。①金融緩和、②財政出動、③成長戦略の3本柱だった。

3番目の「成長戦略」に関しては、たいした中身はなかったし、そもそも成長戦略は民間が作るものなので、政府がやれることは限られている。だからアベノミクスの本質は「金融緩和」と「財政出動」だ。

実際に安倍元総理は約束どおり政策を断行した。財政出動もある程度実施した。

たとえば、GDP統計で見ると、実質公的固定資本形成(公共投資)の前年比伸び率は、2011年度が▲2.2%、2012年度が1.1%だったのに対して、実質的に第二次安倍政権のスタートとなった2013年度は8.5%と、近年ではもっとも高い伸びを実現した。

そして、アベノミクスでとくに注目を集めたのが金融緩和だった。それまで常に緊縮指向だった日銀を改革するため、安倍政権は2013年3月に日銀総裁に黒田東彦氏を就任させ、政策の大転換を図った。いわゆる異次元の金融緩和だ。

長引くデフレから脱却するため、2013年4月からインフレターゲット政策を導入し、2%の物価上昇率目標が達成されるまで、大規模な資金供給拡大を続けることを宣言したのだ。

安倍政権の金融緩和・財政出動政策がどのような効果を発揮したのかは、その後の消費者物価の動きを見れば明らかだ。

図表は、異次元金融緩和が始まった直後の消費者物価指数の前年同月比を月別に見たものだ。

アベノミクスが開始される直前まで、1997年に消費税率を3%から5%に引き上げたのをきっかけに、日本経済は15年間にわたって物価が下がり続けるデフレに苦しんできた。

ところが、2013年4月からアベノミクスが始まると、消費者物価指数はするすると上がり始め、2013年12月には、ほぼ2%という目標物価上昇率に達している。

そして、ほぼ2%の物価上昇率が2014年3月まで継続したのだ。経済政策の結果がここまできれいに現れることはきわめて珍しい。それだけ、金融緩和・財政出動という政策が正しかったということだ。

いったいなぜ…「消費税増税」で経済効果は“破壊”

それはある意味で当然だ。マクロ経済学の教科書には「不況になったら、金融緩和と財政出動をしなさい」と書いてある。つまり、アベノミクスは特殊なことをしたのではなく、まさに教科書どおりの経済政策を採っただけだったのだ。

ところが、2014年4月に消費税率を5%から8%に引き上げた途端、事態は急変する。物価上昇率が、目標物価上昇率の2%から急速に転落して、1年足らずでデフレに舞い戻ってしまったのだ。アベノミクスは、消費税増税によって破壊されたのだ。

私はわけがわからなかった。金融緩和を継続するなかで消費税増税をするということは、アクセルを踏みながらブレーキを踏む運転に等しい。そんなことをしたら、クルマは正常な動きができなくなってしまう。経済学の常識に反する経済政策が採られた理由を、私は理解できないでいた。

しかし、最近になって当時の事情が明らかになってきた。じつは、安倍政権は、日銀総裁を黒田東彦氏に入れ替えただけではなかった。副総裁や審議委員を次々に金融緩和派に入れ替えていった。

なかでも、新任の岩田規久男副総裁は、異次元金融緩和に理論的バックボーンを与える重要な役割を果たしていた。岩田副総裁は、異次元金融緩和を殺してしまう消費税増税に明確に反対して、そのことを黒田東彦総裁にも進言したという。

ところが、黒田東彦総裁は、岩田副総裁の進言をこう斬り捨てたという。2%を実際の上昇率から差し引いている「消費税の引き上げは、景気動向に一切影響を与えない」

黒田総裁は、法学部出身ではあるものの、財務省時代にオックスフォード大学に留学して経済学を学ぶなど、経済の専門家だ。だから、アクセルとブレーキを同時に踏んではいけないことなど常識でわかっているはずだ。

にもかかわらず、消費税増税を簡単に容認してしまった。ここが財政緊縮派、すなわちザイム真理教の恐ろしいところなのだ。経済理論よりも、教団の教義が優先されてしまう。

結局、この消費税増税は経済に致命的な被害を与えた。翌2014年度の実質経済成長率はマイナス0.4%に転落し、その後も低成長が続くことになったからだ。

森永 卓郎

経済アナリスト

獨協大学経済学部 教授

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