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相続財産が少額でも注意…相続争いに発展する「3つの典型トラブル」【弁護士が解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年9月2日 11時45分

相続財産が少額でも注意…相続争いに発展する「3つの典型トラブル」【弁護士が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

相続トラブルはお金持ちの家庭に限られるものと思われがちですが、実際には相続財産が5,000万円以下の家庭で多く発生しています。最高裁判所の調査によると、2015年の遺産分割調停事件のうち、32%が相続財産1,000万円以下、43%が1,000万円超5,000万円以下の事案です。相続争いは、多くの家庭にとって他人事ではないのです。本稿では、Authense法律事務所・大阪オフィスの三津谷周平弁護士監修のもと、相続トラブルの典型的なケースや、未然に防ぐための方法、争いが発生した場合の対処法について解説します。

増え続けている遺産相続争いの原因

相続のトラブル件数は年々増加傾向にあり、特に、遺産相続の争いは遺産総額が5,000万円以下の家庭で最も多く起こっています。

遺産相続のトラブルは、たとえ家族、兄弟、親族の仲が良くても起こりうる問題です。遺産相続で揉める原因は、相続人(故人の財産を引き継ぐ人)、被相続人(財産を家族等に引き継いでもらう人)の双方に存在するものと考えられます。

以下、想定される相続人と被相続人の揉める原因についてそれぞれ解説していきます。

相続人側に原因がある場合

もともと相続人間の仲が悪いもしくはあまり良くないようなケースが挙げられます。被相続人の配偶者と子または子ども達が不仲で、かつ疎遠になっているような場合は、相続人同士で集まったとしても、うまく話合いができずトラブルに発展するおそれがあります。

相続人間で遺産分割協議を行いきちんと分配できたり、被相続人の遺した遺言書に従って遺産の引継ぎが不満なく行われたりすれば揉めることもないでしょう。

しかし、遺産分割協議を行っても相続人間で納得のいく遺産分割が難しい(例:建物・土地等の分けるのが難しい不動産資産がある場合)場合や、遺言書の内容が特定の相続人ばかりを優遇するものだった場合、遺産相続争いに発展する可能性があります。

被相続人側に原因がある場合

被相続人の所有する財産が多数あり、相続人が複数いるにもかかわらず遺言書を作成せず、相続人に遺産分割をすべて任せたり、たとえ遺言書を作成していても、特定の相続人に偏って財産を譲渡するような内容だったりした場合、遺産相続争いに発展するおそれがあります。

また、例えば被相続人に前妻の子がいた場合、前妻の子には相続権があります。他の相続人に前妻の子の存在を隠したまま亡くなってしまい、後日、他の相続人達にその事実が発覚すれば、新たな相続人の登場で話し合いが混乱する事態も招いてしまうでしょう。

仲が良くても起こりうる…遺産相続の3つの典型トラブル

遺産相続争いは、仲の悪い相続人達との間だけで発生するとは限りません。仲の良い兄弟姉妹の場合でも起こり得ます。主にトラブルとなるケースをいくつか解説します。

兄弟姉妹の誰かが寄与分を主張している場合

寄与分とは、相続人が行った被相続人への貢献を遺産分割に反映させる制度のことです。被相続人が遺言書を残していなかった場合、民法で定められた「法定相続分」によって、遺産配分の割合が決められています(民法第900条)。

例えば相続人が子ども(兄A・弟B・妹Cの)3人の場合、それぞれの法定相続分は、1/3:1/3:1/3となります。

ここで例えば、妹Cが長年被相続人である親の介護をしていた場合、介護ヘルパー等に頼めば費用がかかるところを全て自分でやっていたため親の財産の維持に貢献、すなわち寄与したとして、寄与した分だけ遺産を多めに取得したいと主張するというケースもあります。

被相続人の遺言書がなく遺産を誰に渡すか決められていない場合、遺産分割協議を行い、兄A・弟B・妹Cで、妹Cの意見も踏まえ、介護等の事情も考慮して遺産配分の割合を検討することが必要になります。

しかし、万が一、他の兄弟が妹Cの主張に納得をせず、話がまとまらない場合には、家庭裁判所で調停・審判という形で解決が図られることもあり得ます。

親から兄弟姉妹の誰かが生前贈与を受けている場合

兄弟姉妹の誰かが被相続人から多額の生前贈与を受けている場合も、やはりトラブルとなり得るケースといえます。

この場合に、遺産を単純に相続人の人数で分割するとなると、生前贈与を受け取っていない兄弟姉妹からしてみれば、均等な配分ではないとして、不公平感を感じることでしょう。

この場合は生前贈与が「特別受益」として認められるかどうかがポイントです。特別受益とは、相続人の中に被相続人から遺贈や生前贈与という形で特別な利益(例えばマイホームの購入資金を贈与された等)を受けた者がいる場合の、その相続人が受けた利益のことです。

特別受益の存在が認められるならば、相続開始時に実際に残されている相続財産の額と合算した上で、各相続人の相続分を決め、特別受益を受けている相続人についてはその相続分から特別受益分を差し引いた分を最終的な相続分とすることで、各相続人間の公平を図ります。これを「特別受益の持ち戻し」といいます(民法第903条)。

しかし、多額の生前贈与を受けた相続人が、特別受益を受けたことを認めないと、協議がまとまらず、前述した寄与分のケースと同様に家庭裁判所での調停・審判という形で解決が図られることもあり得ます。

遺産を子の誰かが独占したり遺言書が相続人1人に遺産を全て渡す内容だった場合

相続が開始されたとき、兄弟姉妹の誰かが遺産を独占し他の相続人との分割に応じない場合でも、遺産分割協議を行い、他の兄弟姉妹が納得しなければ、遺産の独占は認められません。

一方、遺言書が兄弟姉妹の誰か一人に遺産を全て渡す内容であったとしても、遺産を得られない相続人は「遺留分」を主張することができます。

遺留分とは

遺留分は、一定範囲の法定相続人に最低限認められる遺産取得割合のことです(民法第1042条)。

(1)遺留分が認められる人

被相続人から見た場合、次の人には遺留分が認められます。

・配偶者

・子(子が亡くなっていた場合は孫)

・直系尊属(親・祖父母等)

子である兄弟姉妹には、遺留分が認められます。

(2)認められない人

被相続人から見た場合、次の人には遺留分が認められません。

・被相続人の兄弟姉妹と甥・姪

・相続放棄した人

・相続欠格者・被相続人から廃除された相続人

被相続人の兄弟姉妹は遺留分を主張できません。また、相続放棄をした人は遺留分も失います。

その他、被相続人を殺害しようとした人や遺言書を隠そうとした人(相続欠格者)、被相続人に虐待・重大な侮辱等を行い被相続人から家庭裁判所へ相続人廃除を申し立てられ、相続人資格を奪われた人は、遺留分も認められません。

子である兄弟姉妹が主張できる遺留分の割合について

相続人が子のみの場合、子全体の遺留分の割合は1/2ですが、実際に各々が主張できる個別的な遺留分は、相続する子の数で変わります。例を挙げてその割合を見てみましょう。

(1)兄Aが全財産(1,200万円相当)を遺言で取得、他に弟Bが1人がいる場合

子全体での遺留分割合は全体の1/2:600万円

→個別の遺留分は、全体の遺留分割合に、個々の法定相続分(今回の例では、相続人が子2人なので、弟Bの法定相続分は1/2)を乗じて算出

→弟Bの遺留分は600万×1/2=300万円となり、弟Bは遺留分である300万円を兄Aに請求可能です。

(2)兄Aが全財産(1,200万円相当)を遺言で取得、他に弟B・妹Cの2人がいる場合

子全体での遺留分割合は全体の1/2:600万円

→個別の遺留分は、全体の遺留分割合に、個々の法定相続分(今回の例では、相続人が子3人なので、弟B、妹Cのそれぞれの法定相続分は1/3ずつ)を乗じて算出

→弟B、妹Cの遺留分は600万×1/3=200万円ずつとなり、弟B・妹Cはそれぞれ自己の遺留分である200万円を兄Aに請求可能です。

遺留分侵害額請求について

相続人が複数いる場合、たとえ遺言書の内容が誰か1人だけにしか相続させないというもので、他の相続人の遺留分を侵害する内容だったとしても、それぞれの相続人が持つ遺留分を侵害することはできません。

遺留分を侵害された相続人は、「遺留分侵害額請求」という手続きで、遺留分を取り戻すことが可能です。

この請求は遺留分を侵害された相続人が、相手方に対して、金銭を支払うよう求めるものになります。請求にあたっては、内容証明郵便などを送付することが一般的です。もし当事者間での話し合いが上手くいかなかった場合には、調停や訴訟などで解決を図っていくことになります。

ただし、この請求権は、相続開始及び遺留分を侵害する贈与または遺贈があった事実を知ってから1年が経過、またはその事実を知らなくても相続開始時から10年が経過すれば時効により消滅します。

遺産相続の争いによって生じる多くのデメリット

遺産相続の争いが起きると沢山のデメリットがあります。こちらでは、遺産相続争いにより生じるデメリットを紹介します。

控除が受けられなくなる

相続発生時には、「小規模宅地等の特例」や「家なき子特例」、「配偶者に対する減額軽減」などの相続税を軽減できる制度を受けることができます。

しかし、いずれの制度においても申告期限が規定されています。そのため、遺産相続の争いが発生し、相続が長引いた場合はこれらの控除が受けられなくなる可能性があります。

相続財産が使えなくなる

財産の所有者が亡くなった場合は、資産が凍結されます。もし預金口座が凍結された場合、資産を移動できなくなったり、物件の売却や会社の事業承継ができなくなります。

相続放棄ができなくなる

相続放棄は、相続の開始があったことを知ってから3ヵ月以内に申立てする必要があります。もし、遺産相続の争いにより相続が長引き、やっぱり相続を放棄したいと思っても放棄することはできなくなります。

遺産相続争いは避けたい…未然に防ぐ方法

遺産相続争いが相続人間の話し合いでまとまらないと、家庭裁判所での調停や審判で解決を図ることになります。そのため、予想以上に相続争いが長期化するリスクをはらんでいます。

このような事態にならないよう、普段から兄弟姉妹で相続に関するコミュニケーションをとっておくことが大切です。

例えば被相続人が遺言を残さなかった場合、遺産をどのように分割するか、事前に大まかな対応を話し合っておくことで問題を避けられるでしょう。

また、被相続人はなるべく遺言書を遺すように心がけた上で、子ども同士が揉めないように財産の分配方法を考え、慎重に遺言内容を決めることが重要です。他にも家族信託を利用することで遺産相続のトラブルを避けられる可能性もあります。

家族信託は、不動産や預貯金などの財産を信頼できる家族など特定の人に対して、あらかじめ定めた信託目的に従い、管理、処分する財産管理の方法です。

もし、認知症の不安がある場合には後見制度を利用しましょう。後見制度は、認知症などの判断能力が不十分な人の財産管理や身上監護などを成年後見人が代わりに行ってくれる仕組みです。財産管理を生前時に適切に行っておくことで相続トラブルを防ぐことができます。

遺産相続争いが起きた際、検討したい「対処法」

被相続人が亡くなり、兄弟姉妹間で遺産に関する話し合いをすると、身近な存在であるがゆえに感情を表に出し、不満をぶつけ合ってしまうこともあるかもしれません。争いが起きても、冷静になることが求められます。まずは次の対処法を検討してみましょう。

遺言書を探す

まずは被相続人の遺言書を探しましょう。被相続人が自ら作成した「自筆証書遺言」が自宅に残されている場合もあります。

また、遺言者が公証人へ口頭で遺言の内容を伝え、公証人が文章化するかたちの遺言である、「公正証書遺言」が作成されているかもしれません。こちらの遺言の有無は、遺言者が亡くなった後に、相続人が公証役場に問い合わせることで確認することができます。

遺言書が見つかったら、自筆証書遺言の場合は家庭裁判所の検認を経て、その内容を相続人で確認しましょう。遺言内容が互いに納得できるものであれば、遺言に従い相続手続きを進めます。

財産調査を行う

被相続人が遺言書を残していない場合、相続人が複数いれば、遺産を分けるための話合いが必要となってきます。そこでまずは被相続人にどれくらいの遺産があるのか、調査をする必要があります。

被相続人の預金通帳や固定資産税評価証明書等を収集し、遺産を把握しましょう。調査の過程で、相続人が予期していなかった遺産が発見される可能性もあります。

例えば、被相続人には土地・建物の不動産資産や預金くらいしか財産がないと思っていても、実際には株式や投資信託を保有していて、現金化できる資産が豊富にあるというケースも考えられます。

こうしたケースでは土地・建物は兄が相続し、残りの金融資産は他の兄弟姉妹が引き継ぐという分け方が考えられます。

“遺産相続争いが起こる前に”検討したい弁護士への依頼

相続の話し合いや手続きは円滑に進めたいものです。その際に役立つ法律の専門家が弁護士です。

弁護士に依頼するメリット

例えば、複数の相続人がいる場合、その相続人同士の関係が悪く、遺産に関する話し合いをしたくてもできない場合があります。

そういった場合、弁護士が入ることで円滑に遺産分割の協議が行われ、遺産分割協議書等の書類作成もお願いすることができるため、他の相続人とのコミュニケーションコストが低い状態で相続を進めることができます。

遺産分割に関して相続人間で意見の食い違いがあったとしても、専門的な知見から説明し、相続が円満に終わるように善処してくれます。

万が一、兄弟間で相続争いが起きても、解決策を提案してもらえたり、協議のコツ等を教えてもらえたりします。遺産分割協議で話がまとまらず、家庭裁判所での調停となっても、自身への有益な助言はもちろん、弁護士が代理人として調停への出席等も行ってくれます。

弁護士の選び方

どんな弁護士でも相続の知識、遺産分割に関する経験、相続争いの調整等の実績が豊富なわけではありません。

相続に関する豊富な知識や経験を有しているかどうかは、まず各弁護士事務所のホームページを見て判断しましょう。ホームページ内に、相続関連の紛争事例、調停等の実績が詳しく掲載されているなら、相続の分野を得意とする弁護士であることがわかります。

三津谷 周平

Authense法律事務所 大阪オフィス支店長

弁護士

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