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預金1億円・年金暮らしの75歳女性、タワマン売却→高級老人ホーム入居に大満足のはずが…わずか9ヵ月で退去したワケ【FPが解説】

THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年8月15日 11時15分

預金1億円・年金暮らしの75歳女性、タワマン売却→高級老人ホーム入居に大満足のはずが…わずか9ヵ月で退去したワケ【FPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

年を重ね、身体の自由が段々と制限されてくると、“終の棲家”として「老人ホームへの入居」を選択するケースが増えていきます。しかし、老人ホームは入居したら安心というわけではなく、退去を選択するケースも珍しくありません。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが、具体的な事例をもとに、高齢者施設を選ぶ際の注意点について解説します。

「老人ホーム」を終の棲家にする人が増えている 

“終の棲家”として、いわゆる「老人ホーム」を選ぶ高齢者が増えています。

厚生労働省がまとめたデータをみると、2000年に老人ホームで亡くなった方の数は1万7,807人でしたが、2022年には17万2,727人と約20年間で約10倍に増加していることがわかります。

※ 厚生労働省「第1編 人口・世帯 第2章 人口動態」より

また、高齢者の増加によって老人ホームの定員数も増えており、介護老人福祉施設(特養)の定員数は2010年時点で40万3,313人でしたが、2022年には59万2,754人と約1.5倍増加。

有料老人ホームは2010年の19万5,972人から2022年の66万1,490人と、3倍以上に増加しています

※ 厚生労働省「令和6年版高齢社会白書」

ところで、ひと口に「老人ホーム」といっても、介護老人保健施設や特別養護老人ホーム、「サ高住」と呼ばれるサービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類があります。かかる費用は施設によってピンキリですが、いわゆる「高級老人ホーム」と呼ばれる施設では、入居一時金だけで1億円以上かかる施設もあります。

老人ホームに入居する際は、この入居一時金(前払い金)のほか、毎月「月額利用料」を納める必要があります。

月額利用料の主な内訳は、下記のとおりです。

・家賃

・食費

・管理費

・介護サービス費

・上乗せ介護費

・レクリエーション費 など

高級老人ホームの特徴は、なんといっても豪華な設備です。ホテルのように洗練されたエントランスに、遊戯室やジム、シアタールーム、温水プールが設置されている施設もあり、まさに至れり尽くせりです。スタッフも一般的な老人ホームより多めに配置されており、落ち着いた雰囲気のなかで快適に過ごすことができます。

このように、まさに“夢のよう”な高級老人ホームですが、なかにはごく短期間で退去してしまう人も。せっかく高額な入居一時金を支払ったのに、いったいどうしてなのでしょうか。

「高級老人ホーム」への入居を決断した75歳のAさん 

75歳のAさんは、開業医の夫を持つ専業主婦でした。数年前に夫を亡くしてからは、最寄り駅からのアクセスが悪いと、思い切って長年住んでいた広い自宅を売却。子どもたちからの勧めもあり、バリアフリーが整った駅近のタワーマンションに移り住み、快適に過ごしていました。

しかしある日、「災害でタワーマンションのエレベーターが止まった」というニュースをテレビで観てから、引っ越しを検討するようになりました。

息子に相談したところ、「俺たちの家の近くに高級老人ホームがあるんだけど、入居者を募集しているみたいだよ」と教えてくれました。

そこで早速、息子夫婦とともに内見に行くと、入口は天井が高く豪華なシャンデリアが飾られ、まるで高級ホテルのようです。

他にも、ジム、シアタールーム、温水プールが設置されており、設備は申し分ありません。働いているスタッフもみなホスピタリティが高く穏やかで、入居者たちも気品にあふれています。

「私もここに住みたい!」Aさんはタワマンを売却し、高級老人ホームに入ることを決断しました。

入居費用は約5,000万円ですが、タワマンの売却費用で十分賄うことができました。この時点でAさんの預金は約1億円と、金銭的にはなんの問題もありません。

そして、いよいよ憧れの高級老人ホームでの暮らしがスタートし、大満足のAさん。しかし……

転倒し、骨折…退院後、息子夫婦が気づいたAさんの「変化」

ある日、夕食のため食堂へ向かっている最中のことです。Aさんは廊下で転倒し、大腿骨頸部を骨折。病院を受診したところ、入院することになりました。

数日間は寝たきりの状態が続きましたが、無事入院治療を終え、施設に戻ったAさん。面会時、戻ってきたことに安堵した息子夫婦でしたが、Aさんの様子がなんだか以前と違っています。

目が虚ろで、心ここにあらずといったように見えたので、息子は施設のスタッフに次のように伝えました。

「母は大丈夫でしょうか? なんとなく様子がおかしい気がするのですが……」

「そうですね、退院されたばかりですし、少し様子を見ましょう。スタッフ間でも情報を共有し、注意してみておきますね」とスタッフはいい、その日の面会を終えました。

息子の携帯にかかってきた「1本の電話」

それから1週間後、施設のスタッフから息子の携帯に連絡がありました。出てみると、「お伝えしたいことがあるので、1度施設へご来所いただけないでしょうか」と言います。

急いで息子夫婦が駆けつけると、スタッフは浮かない表情で次のように言いました。

A様は認知症のようです。おそらく、施設に入られたことによる環境の変化やストレスに加え、入院で寝たきりの状態が続いておりましたので、症状が進行しているようです。非常に言いづらいのですが、退所をご検討いただけますでしょうか

息子夫婦は、衝撃を隠せません。

「ええと……万が一のときも対応してくれるって言ってましたよね? 母の“終の棲家”としてここを選んだのですが、いったいどういうことでしょうか?」

「当施設では、認知症の方への対応が難しく……誠に申し訳ございません」

「そんな……」

入居してからわずか9ヵ月、Aさんは早くも、高級老人ホームを退去するはめになってしまったのでした。

安易に決断する前に「入居後のリスク」を考慮して

今回のAさんのように、自宅を引き払ってから老人ホームへ入居する場合、入居したあとに予期しない事態が起こったり、本人が「自分には合わない」と思ったりしても、簡単に自宅へ戻ることはできません。

したがって、入居を決断する前に、「入居後に発生しうるリスク」をきちんと確認することが大切です。施設によって、認知症に対応していなかったり、看取りには対応していなかったりと、退去となってしまう条件が存在します。

その際、施設の「看取りの実績」も把握しておくといいでしょう。看取りの実績が乏しい場合、今回のように健康状態が悪くなった場合、継続して住むことが難しい可能性があります。

また、施設を見学する際は、入居者やスタッフの雰囲気、設備なども大切ですが、「入居契約書」や「重要事項説明書」などで、退去しなければならない条件や医療機関との連携状況をしっかりと確認するようにしましょう。なかには、施設見学のみならず、食事の試食会や体験入居ができるところもあります。

あらかじめ認知症になることを想定して行動できる人は決して多くありません。しかし、長寿化にともなって、認知症患者も着実に増えています。決して他人事と思わず、認知症になる可能性を頭に入れて施設を選ぶ必要があるでしょう。

予算と合わせて、入居する本人にとって最期まで快適に過ごせるかどうか、よく考えて入居を決める必要があります。

老人ホームへの入居を検討するタイミングは人それぞれですが、入居時に慌てなくても済むよう、元気なうちから施設見学会などに参加しておくことをおすすめします。

「老人ホーム」と聞くと、大人数が詰め込まれ、暗い雰囲気の施設をイメージする人もいるかもしれませんが、昔とは違い、明るい雰囲気の施設も増えています。ただ、多様化が進んでいることから検討事項も増えているため、ぜひ元気なうちから準備を始め、自分や家族にぴったりの“終の棲家”を探してみてはいかがでしょうか。

武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役

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